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キクラデス・レジェンダリーエディションについて(Cyclades Legendary Edition)

2009年に発売されたCycladesの新版であるCyclades Legendary Editionについて、デザイナーの一人であるBruno Cathala氏による解説の翻訳。元の文章はこちら(https://www.brunocathala.com/cyclades-legendary-edition/)。基本的に英文を元に訳していますが一部仏文も参照しています。

先週2月16日に、Open Sesame Gamesが、2023年Q2にKickstarterでCyclades Legendary Editionのキャンペーンを開始することを発表しました。
私とLudovic Maublancはこのニュースを広めましたが、当然のことながら多くの疑問をうみました。そこでこの新たな版に何が含まれていて何が含まれていないのかご説明しようと思います。皆さんの判断の助けとなることを願っています。

そもそも、『Cyclades/キクラデス』とはなんでしょうか?

Cyclades (2009)

『Cyclades/キクラデス』は2009年に出版されたゲームです。多くの方はご存知かもしれませんが、ボードゲームの世界はこの間に格段に大きくなりましたから、どのようなゲームかわからない人も少なくないでしょう。
『Cyclades/キクラデス』は、古代ギリシャの有力都市の間での(最初に2
つのメトロポリスを所有することを競う)争いのゲームです。以下の3つの方法のいずれかによって、メトロポリスを所有することができます。

  • 経済発展(港・要塞・寺院・大学の4種の建物を建設する)

  • 文化発展(4人の哲学者を揃える)

  • 軍事制圧(戦闘によって他のプレイヤーからメトロポリスを奪うことができます)

『Cyclades/キクラデス』のDNAはその優れた競りのシステムにあります。
都市を発展させるために必要なアクションは5柱の神と紐づいていて、それぞれの神には得意な分野があります(ポセイドンは海運を、アレスは軍事を、ゼウスは宗教を、アテナは文化を得意としており、アポロは貧しい者の味方です)。
神の恩恵を賜るには供物を捧げなければなりません。
必要な神の恩恵を確実に賜るためには競りで最高額を提示しなければなりません。しかし手元に金をのこしておけば、神の恩恵によって行うアクションを強化することができます。プレイヤーは常に選択を迫られるのです。
『Cyclades/キクラデス』は、一見すると「古代のリスク」のように見えますが、実際には金を中心的な要素としたマネージメントと開発とコントロールのゲームであり、常に緊張感のあるゲームです。
『Cyclades/キクラデス』は成功し、複数の拡張によってこの世界を広げることができました。

Cyclades HADES (2011)

2011年に出た『Cyclades HADES』にはいくつかのモジュールが含まれています。

  • 自由な初期配置

  • 新たな神ハデス(と死者の軍勢)

  • 伝説の勇者の登場

  • 神の恩寵

Cyclades TITANS (2014)

2014年に出た『Cyclades TITANS』には更にいくつかのモジュールが含まれています。

  • 複数の領地を含む大島のある新たなゲームボード

  • 6人プレイ対応

  • チームプレイモード

  • 新たな神クロノスとそのタイタン(巨人)たち

  • 専門化したメトロポリス

  • 新たな勝利条件をもたらす神のアイテム

Cyclades MONUMENTS (2016)

2016年に出た『Cyclades Monuments』は、3Dミニチュアで造形された神秘のモニュメントを含むミニ拡張です。

2009年から2016年にかけて、Cycladesの世界を築き上げることができました。
私たちはモジュール形式にして、それぞれのグループが遊ぶ度に、好みとその時の気分に合わせて、ハデスと英雄・2人チームの6人プレイ・神のアイテムとモニュメントのように自由に選べるように、つまり多くの可能性のあるように、したかったのです。
時が経つにつれ、Ludoと私はCycladesの新版を作りたいと強く思うようになりました。
それはデザイナーズカットのようなもので、上記のモジュールの中で、私たちが特に好きなものだけを入れたものです。
そして、ダイナミックで緊密なゲーム体験を生み出すべく、検討を重ねた末に、私たちの欲求と様々な変更点を織り込んだ……新たなゲームを生み出しました。新たな『Cyclades/キクラデス』は、私たちの理想に沿ったもので、もちろん元の『Cyclades/キクラデス』のDNAはそのままに残っています。
それが、Cyclades Legendary Editionです。

Cyclades Legendary Edition (Coming to Kickstarter in 2023)

まず、変わらないものは何でしょうか?
もちろん、以前のCycladesのDNAはすべて残っています。神々を巡る競りのシステムと、勝利のために必要なアクションをするための金を確保するための争いも。
イラストはすべてMiguel Coimbraの筆によって描き直されました。これもCycladesの素晴らしいアイデンティティを保つ助けとなっています。
しかしそれ以外には多くの点が変更/進歩しています。

モジュラーボード
ゲームボードはタイルの組み合わせによって構成され、自由な組み合わせと配置によって大小様々の島からなる領域を作り出します。ゲームを遊ぶ度に、盤面の地勢をどのように活かすかを考える必要があるでしょう。
つまり「リプレイアビリティを高め」「セットアップが簡単に」なっているのです。

神々の調整
ゲーム開始直後から、それぞれの神は“自動で無料の特典”と“追加での支払いを必要とする特典”をもたらします。
『Cyclades/キクラデス』の初版では、メトロポリスを得るための建物を建設するためには追加での支払いが必要でした。
実際にはプレイヤーが誰も建物を建設しない展開になることもありました。誰かがメトロポリスを生み出すのを金を貯めながら待ち、一度の軍事侵攻で他のプレイヤーのメトロポリスを奪って1ターンで勝利することを狙っているのです。
こうした戦略はまったく正当なものでしたが、その結果として最後まで誰も建物を建設せずにゲーム時間が数時間になることも十分起こり得たのです。
これを踏まえて、Cyclades Legendary Editionでは、神のもたらす自動で無料の特典として建物を建設できるようになりました。結果としてメトロポリスは以前よりも格段に早く設立されることになり、ゲームもよりダイナミックになりました。
しかしCyclades Legendary Editionでは、勝つために3つのメトロポリスを所有しなければなりません!

メトロポリスからの収入
プレイヤーが設立したメトロポリスからはちょっとしたボーナス(巫女・兵士・船・金など)。これによりメトロポリスを設立する利点が増えます。
さらに、他のプレイヤーにメトロポリスが奪われた場合にも最後に“持ち去る”ことができます。つまり奪われる直前にボーナスをもう一度得ることができるのです。

新たな神ヘラ
神々と、その登場を管理する方法を整理しました。
詳細は省きますが、2~6人のどの人数で遊んでも神々の特典が同じように機能するように調整しました。
できる限りシンプルにすること、が大事です!
もちろん、ポセイドン、アレス、ゼウス、アテナ、アポロの5柱はそのままに、新たな神ヘラを加えました。
ヘラはハデスとクロノスの代わりになるものです。
元々のアイデアは、アレスの助力を賜れない時にも軍を動かせる可能性を提供することでした。ゲームをダイナミックにするために。
ハデスの軍勢は、一時的なアンデットではありますがこれを可能にするものでした。しかしサイコロの目によって3~5ターンに一回だけでした。面白いものではありますがランダムです。
クロノスはタイタンを戦わせることができ、特に一つの島に複数の領地がある時に良いものでした。
ヘラの恩恵によって「傭兵を雇うことができる(アンデッドのようなものですがターン終了時に消えることはありません)」「英雄を雇うことができる」ようになります。英雄は毎ターン兵士を率いて戦闘することができます(アポロの恩恵を受けている場合は除く)。

英雄の調整
当然のことながら、初版の『Cyclades/キクラデス』よりも多くの英雄が登場します。しかし、英雄の効果については調整しました。上記の通り、英雄はクリーチャーの山札に混ぜられてランダムに登場するわけではありません。英雄を使うにはヘラの恩恵と4金が必要なのです。
その代わりに「手番ごとに兵士を率いて戦闘を行うことができ、また英雄ごとに特殊な軍事ボーナスをもたらす」「英雄ごとに特別な条件があり、それを満たすことでメトロポリスを得る」ことができるようになります。
つまり、英雄はメトロポリスを得るための4番目の方法であり、つまり新たな勝利方法でもあります!

クリーチャーの調整
英雄と同様に、クリーチャーもCycladesのDNAと呼べるもので、新たなクリーチャーも登場します。そして、美しいクリチャーのミニチュアは、盤面により長い間影響を及ぼせるようになります。
以前は、クリーチャーは短期間で去ってしまいました。
新版では、巫女を生贄にすることであなたの好きな(そしてあなたの戦略にとって重要な)クリーチャーをより長い間維持することができます。

チームモード
4人で遊ぶ場合は4人での対戦か、2人でチームを組んでの対戦かを選ぶことができます。
6人で遊ぶ場合は2人でチームを組んでの対戦となります。
チームは隣合わせに座り、1つのスクリーンの裏で金を共有します。
巫女、哲学者、英雄、クリーチャーはプレイヤーごとに管理します。
しかし金は共有財産となり、どのように使うかはチームメイト間での合意が必要です。
建物も共有で、一人が港と要塞を建設し、もう一人が残りの建物を建設した場合にはメトロポリスを設立できます。
ゲームはチーム内では協力、チーム間では競争となります。私たちはとても気に入っています。

2人プレイモードの刷新
『Cyclades/キクラデス』初版の2人プレイルールは少し不遇な存在でした。
遊べないわけではありませんが、最後まで遊ぶよりもどちらかが有利になった時点で投了する方が良いケースが多かったのです。勝敗は疑いないのに、そこから30分ゲームを続ける必要があったのです。
新たな2人プレイルールはチーム戦のようにプレイします。
各プレイヤーはそれぞれ2つの都市を担当し、2つの都市の金を同時に管理します。
それぞれの都市/色は独立して巫女、哲学者、英雄、クリーチャーを管理しますが、金は共通となります。
2人プレイモードは以前よりも明らかにテクニカルですが、このゲームのターゲット層には適していると言えるでしょう。なにより新しい2人プレイはより緊迫していて逆転が起こりやすいのです。

さて、これでCyclades Legendary Editionがどのようなものかよくわかったのではないでしょうか。それではいくつかの質問に答えることにしましょう。

『Cyclades/キクラデス』初版からのアップグレードパックはありますか?
・ありません。

おわかりの通り、変更点は多岐に渡りシステムに深く関わったものです。急版との互換性はありません。

Kickstarterのキャンペーンはいつ始まるのですか?
最新の情報では、2023年第2四半期に始まり、2024年に届く予定です。

小売店での販売もありますか?
・はい。

小売版はKSキャンペーンでアンロックされたすべてのゲーム要素を含むものになる予定です。
誰もが同じゲーム要素を購入できることは、私たちにとって必要不可欠なことなのです。
つまり、“KS独占”である要素は、ゲームルールに関係のある部分ではなく「コンポーネントの質的な向上」に限られるということです。
しかしながら、小売版については、
・確定してはいませんが、市場の価格帯と合わせるために基本ゲームと拡張とで分けて販売されることになるかもしれません。
・小売版はKickstarterのバッカーの元にゲームが届いた後に販売開始となります。個人的に『Cleopatra and the society of architects』のキャンペーン時にバッカーの元に届くよりも前に小売が始まってしまった苦い経験があります。同じようなことは二度と起こってほしくありません。私たちを支援してプロジェクトを現実のものにするために援助してくれたことを優先する義務があるのです。

ソロプレイヤーモードはありますか?
・ありません
これは明らかに私個人の希望なのです。とはいえ、私はソロプレイヤーモードに対して敵意を抱いているわけではありません。しかし、私のゲームに関して言えば、ソロモードを採用するには3つの条件があるのです。
・ゲームを「もし……ならば……あるいは……ならば……などなど」のツリー構造による複雑な処理にしないこと
・元のゲームと一貫した/類似の/近似的な体験を提供すること
・ゲームに負ける可能性があること(私はハイスコアチャレンジのためだけのソロモードが嫌いなのです。勝つか負けるかという感触がなければならないのです)
既に書いたように、Cycladesは第一に競りのゲームなのです。その感覚を抜きにすればソロモードをデザインすることはできるかもしれませんが、それでは駄目なのです。ですから、ソロモードデザインの専門家が協力してくれると言ってくれたとしても、私は悔やむことなく断るでしょう。それによってバッカーの数が減るとわかっていたとしても。

結論
このような大きなプロジェクトでは、すべては選択の問題になります。私たちの選択についてはご説明しました。これを元に、このゲームがみなさんの求めるものかどうか、期待に答えるものかどうかを考えてください。
いずれにせよ、私たちはこのプロジェクトをとても楽しみにしています。お見せできるものがあれば、またすぐにお見せしたいと思っています。

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