ボードゲームにおけるクラウドファンディング(4):2022年を振り返る

以前の記事 KICKSTARTER 2010-20202021年の動向2022年とこれから  に続くシリーズ記事ですよ。2022年の結果についてのニュースが出てきたので簡単にまとめておく。

KickStarterの失速

2014年以降順調に額を増やしてきたKickStarterのテーブルトップゲーム部門ですが、8年目にして前年割れ。2021年の2億70000万ドルから10%強減らして2億3640万ドルはほぼ2020年と同額となります。一方で成立史たプロジェクト数は前年から10%強増えて4000件を超える成長。小粒なプロジェクトが増えたということでしょうか。このあたりはもう少し分析したいところです。

ヒットタイトルで言うと30000人に迫るバッカーから合計9百万ドル超を集めたCMONのMarvel Zombiesが圧倒的な存在感。合計額2位のStormlight Premium Miniaturesの倍以上ですからね。ちなみに2位のStormlight Premium Miniaturesはブランドン・サンダースンの小説のキャラクターのミニチュアプロジェクト、3位のProject Ironsideはゲームテーブル、7位のThe Academicはカードケース、とゲームではないプロジェクトが上位に入っているのも面白いですね。また、5位のElden Ring: The Board Game、8位のHeroes of Might & Magic III The Board Game、そして最近日本語版のクラウドファンディングキャンペーンが終了した9位のSlay the Spire: The Board Game、とPCゲームをもとにしたボードゲームが高額を集めている点も、最近のKickStarterらしいという感じでしょうか。ここからCMONを除くとオリジナルボードゲームでトップ10にランクインしているのは4位のCasting Shadowsだけで、昔のインディーズボードゲームが乱立していた時代を見てきた人間としてはちょっと寂しい気もします。
6位のSorcery: Contested Realmについては、なんで今時新規TCGがここまでの額を集めているのかさっぱりわかりません。しかもバッカー一人あたりの出資額の平均が$500を越えているとかちょっとどういうことなの?まったく気づいていなかったのでどなたか事情を知っていたら教えていただきたい。

総額が前年割れした点については、むしろ北米を中心とした世界情勢が主たる要因であるような気がします。COVID-19による巣ごもり需要により2021年にはボードゲームを含むテーブルトップゲームへの支出が増えた、とされていますが、一方で送料の急激な高騰や木材・紙を中心とする原材料費の増大が向かい風となり、ボードゲームの価格も上昇し特に送料の高騰はKickStarterのバッカーにも直撃しています。そうしたわけで、前年割れ自体は世界情勢の影響とは思いますが、このまま業界自体(あるいはクラウドファンディングプラットフォーム)が冷え込む可能性もあるので今後の動向に注目したいところです……とはいえ2023年2月現在でも状況はさほど好転していないので、今年も同じような状況が続くのではないかと思いますが。個人的にはとりあえずもうちょっとドル円のレートがマシになって欲しいところです。

今回はPolygonの記事を参照しましたが、トップ10のプロジェクト以外の、(TRPGも含めた)中堅~小型プロジェクトについてはもう少し調べておきたいところです。こちらは気が向いたら追記します。

Gamefoundがやってきた!

テーブルトップゲーム専門のクラウドファンドとして登場し、Kickstarterの対抗馬と期待され、2022年2月にはラベンスバーガーからの出資を受け、3月にはオープンβを開始したGamefoundですが、Kickstarterのテーブルトップ部門の約1/4の6750万ドルの総出資額を集めることを目標にしていたものの、蓋を開けてみるとその半分にも届かない2830万ドルでした。それでも北米のテーブルトップ市場の1割以上はあるので大したもの、と言えるかもしれませんが、期待ほどではなかったと言わざるを得ません。前年比45%増だそうですが、クローズドβからオープンβに移行した2022年でこれですから、2023年に爆発的な伸びが期待できるかと言われると難しいところではないでしょうか。2022年の出資額の上位を見ると、Tainted Grail: Kings of Ruinを始めとするAwaken Realms製品の強さが目立ちますが(まあプラットフォームの創始者ですからね……)、一方でCastles of Burgundy: Special Edition (Awaken Realms), Sleeping Gods: Distant Skies (Red Raven Games), KeyForge: Winds of Exchange (Ghost Galaxy), Destinies: Witchwood (Expansion & Reprint) (Lucky Duck Games), 51st State: Ultimate Edition (Portal Games)と、Kickstarterの上位の面々に比べて小粒ではありますが明らかにコアなボードゲーマー向けのラインナップ。Kickstarterよりも狭いコミュニティに向けたギーク向けプラットフォームとして見るのが良いのかもしれません。Kickstarter一強の状況には不安もあるので、Gamefoundには更なる強化を期待したいところです。こちらついてもPolygonの記事を参考にしています。

2023年はどうなる

まずはBackerkitのGloomhaven RPG & Minatureプロジェクトがどうなるか、に注目です。4月開始予定。ただなあ、Backerkitのクラウドファンディングページ、めちゃくちゃ見にくいし唆られないんですよね……もうちょっとどうにかならないものか。

ボードゲーム業界自体もまだまだ厳しい時代が続きそうです。クラウドファンディングプラットフォームもそこから逃れられないでしょう。Hasbroが自社サイトを通じたHeroscapeクラウドファンディングで失敗したのも理由のないことではありません。ほんとにさあ……Hasbro……
Kickstarterの牙城は未だに健在。プラットフォーム自体への批判もありますが、先日もゲーム関係のコーディネーターを募集していたり(年俸55000-70000ドルは割といいですよね)、今後もゲーム部門に力を入れていくのではないでしょうか。Gamefoundが対抗馬になりうるのかが問われる2023年になりそうです。一方で国内クラウドファンディングも盛んになってきているし、あるいは国内メーカーの海外クラウドファンディングも注目タイトルが増えているし、そちらの動きにも期待したいところです。

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