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日本語で読めるARG入門

『Project:;COLD』や『人の財布』などの登場で、日本でもARG(代替現実ゲーム)がある程度知られるようになってきましたが、このジャンルについて調べようとすると日本語の情報は少なく、その壁の高さに驚くことがあります。
そこで今回はARGについて日本語だけで学ぶのに向いていると石川が思う入門情報源や記事をまとめたいと思います。

※【2024/04/09】書籍に『デジタルゲームの教科書』を追加しました



最初に読むには

まずは「体験型エンタメ情報局」の2つの記事がおすすめです。

■体験型エンタメ情報局: ARG(代替現実ゲーム)とは?

■体験型エンタメ情報局: ARG の魅力

ちなみに、知らない情報についてWikipediaを見る方も多いと思いますが、日本版Wikipediaの「代替現実ゲーム」の項は2024年4月7日時点では内容に古い部分や偏りが多く、基本情報としてはあまりおすすめできません。
英語版のWikipediaはさすがARGの本場だけあってカバーしている情報の範囲も広く問題ないのですが、「日本語で読める」という今回の趣旨に反しますので、こちらもお勧めは保留しておきます。

やっぱり『Project:;COLD』関連から

『Project:;COLD』がきっかけでARGを知った方は、同プロジェクトに関連する解説やインタビューを読むのが近道でしょう。

■CEDEC講演─未成熟ジャンル(ARG:代替現実ゲーム)への挑戦『Project:;COLD』における事例

ゲーム開発者向けのカンファレンス「CEDEC2022」で行われた総監督・藤澤 仁氏の公演動画をありがたいことにすべて公開してくれています。
『Project:;COLD』の事例だけでなく、ARG全体についても解説してくれているので『Project:;COLD』に参加した方は理解しやすいと思います。

■『Project:;COLD』総監督を直撃ーー反響を呼ぶ“SNSミステリー”はどのように作られ、どこへ向かうのか

■デスゲーム形式の『ALTÆR CARNIVAL』は必然だった 『Project:;COLD』藤澤仁に聞く“リアルを巻き込むARG”の現在地

『Project:;COLD 1.0』および『2.0』終了後のインタビューです。順に読むと『Project:;COLD』がどのように変遷したかも分かって興味深いと思います。

深掘りしたくなったら

ARGについてさらに深く知りたい場合は、以下の3つをお勧めします。

■事例紹介 映画「ダークナイト」ARG『Why So Serious?』 

世界最大規模だったバットマンのARG『Why So Serious?』の詳細な事例紹介です。2009年のカンヌ国際広告祭サイバー部門でグランプリを受賞しただけあって、当時のARGの頂点とも言える様々な仕掛けで楽しませてくれます。

■映画『ザ・インスティチュート /The Institute』

『ザ・インスティチュート』は2008年から2011年にかけてサンフランシスコで行われたARG『The Jejune Institute』のドキュメンタリー風映画です。この映画を見れば、ARGがどのように始まって、どんなミッションを繰り返しながらエンディングに向かっていくかの全体像を理解しやすくなると思います。
ちなみに「ドキュメンタリー風」と書いたのは、一部の映像が当時のライブ映像でなく再現映像で作られており、一部から映画の信憑性を疑問視する声が上がっているためです。そういう意味ではドキュメント映画ですらARGっぽいなと思っています。

■5人の識者が語るARGの進化史と、ポスト真実の時代における“ゲームと物語のあり方”

オンラインメディア「リアルサウンドテック」でARGをテーマに、古くから日本のARGに関わってきたメンバーで行われた対談です。(石川も参加しています)
取材・編集を徳岡正肇さん、高橋ミレイさんという、ARGを「分かっている」方にやって頂いたおかげで、ARGの歴史から可能性、問題点、展望まで幅広くまとまっていると思います。

書籍で読む

海外ではARGだけをテーマに書かれた書籍がある程度存在しますが、日本では残念ながらまだそのような書籍は登場していません。ただ、いくつかの書籍でARGについて取り上げているので、ここではそういった書籍を紹介したいと思います。

■あなたも脱出できる 脱出ゲームのすべて

タイトルだけ見ると脱出ゲームについて書かれた本のように見えますが、前半は広く体験型エンターテインメントの歴史をカバーしており、その意味でもお勧めの1冊。
ARGについては「第8章 1990年代~2000年代:ドットコム時代とその先」で、登場する背景も含め解説しています。今回紹介する本の中で1冊だけ選ぶなら、この本をおすすめします。
著者のL・E・ホールさんは古くからの体験型エンタメの研究者・制作者です。ARG『Perplex City』に残された謎を14年ぶりに解決した人としても有名です。

■コンバージェンス・カルチャー

複数のメディアを横断して物語を伝える「トランスメディアストーリーテリング」を提唱したヘンリー・ジェンキンスの名著。
原版が2006年出版とやや古いため最近の事例が反映されてない欠点があるのと、ARGについては『The Beast』がコラム的に紹介されている部分がほとんどで、さほど記述は多くはありません。
ただ、本書かカバーするトランスメディアと参加するファンの関係性についての視点はARGを考える上でも一読の価値があります。

■のめりこませる技術 ー誰が物語を操るのか

デジタル時代におけるストーリーテリングの方法をテーマに書かれた本です。
第1章「字が読めない語り部」では、ARGを中心としたストーリーテリングについて解説しています。
特に初期のARGである『The beast』や『I Love Bees』がどのような経緯で実現に至ったかの説明は、おそらく日本語で読める本の中では一番詳しいのではないかと思います。

■デジタルゲームの教科書 知っておくべきゲーム業界最新トレンド(2024/04/09追加)

「日本語でARGについて書かれた本ならこれも重要では」と指摘を受けて、確かに!と思いましたので追加します。第20章でまるまる1章ARGについて説明しています。
2010年初版のため事例などはかなり古いですが、今以上にARGが一般的でない時代に書かれたため、ARGの説明や要素、構造などを丁寧に説明しているのと、他の本と違って日本人が書いた文章のため、今読んでもとても分かりやすい内容となっています。
また、電子書籍版もあるので今でも入手しやすいのも良い点です。

とにかく体験するなら『かがみの特殊少年更生施設(気づいてA君)』

ごちゃごちゃ文字で読むんじゃなくて、とにかく何か日本のARGを体験した方が理解早いのでは?という方もいるかもしれません。
ただ今までは日本でのARGが限られていた上に、多くがリアルタイムで進むので紹介しても途中からだったり、もう終わっていたりで汎用的にお勧めするのがなかなか難しかったのです。

しかし、2024年4月1日にそれらを吹き飛ばすARGが登場しました。
それが『かがみの特殊少年更生施設(気づいてA君)』です。
このARGの特長は

  • いつでもプレイできる

  • 1人~少人数向け

  • 無料!

ということで、興味をもったらすぐにでも遊ぶことができます。
ARGのメインとなる情報源は以下の2つになります。

■愛宝学園かがみの特殊少年更生施設 ホームページ

■Twitter(X)アカウント 気づいて(@about_A_message)さん

(ちなみに、このARGが「気づいてA君」とも呼ばれる理由はこのTwitter(X)アカウントを4月1日以前に発見した有志が情報共有のためにハッシュタグ #気づいてA君 を使い、それを公式も採用してくれたことに由来します)

ただ、ARG初心者の方は、まずこの動画を見ることをお勧めします。

■かがみの特殊少年更生施設 #気づいてA君 (YouTube)

ARGのお約束的な怪しい情報の見つけ方を説明しつつ、序盤の進め方を解説してくれる、分かりやすい公式動画です。

また、1人で解くにはけっこう難易度が高いと思いますので、もし解き方のヒントが必要な場合は、有志の方が作ってくれた以下のサイトも参照するとよいでしょう。

■気づいてA君 手引書

※【2024/04/09追記】9ページ目のDiscordサーバーへのリンクは期限が切れているようです。下の「気づいてA君攻略」のトップページからもDiscordサーバーに飛べますので必要な方はそちらからどうぞ。

■気づいてA君攻略

いかがだったでしょうか。この記事を通じて日本でもARGの魅力が広がり、参加者やクリエイターが増えるといいなと思います。

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