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人的資本の情報開示とは?


2023年3月期決算以降、有価証券報告書を発行する約4,000社の大手企業を対象に人的資本の情報開示が義務付けられました。

<目次>

  • 人的資本の情報開示とは

  • 人的資本の情報開示が求められる背景

  • 人的資本の情報開示が求められる項目

  • 人的資本の情報開示を行う際のポイント

  • まとめ


人的資本の情報開示とは

人的資本とは、人が持つ能力や資格、経験を「モノ」や「カネ」と同様に資本と捉える考え方のことです。そして、人的資本の情報開示とは、自社の人的資本の情報をステークホルダーに公開することです。

情報開示
情報開示


人的資本の情報開示が求められる背景

人的資本の情報開示が求められる背景として、主に4つの理由が挙げられます。

1. 人的資本の価値・関心の高まり

従来、企業の市場価値は、モノやカネといった有形資産が重視されていました。しかし、近年は技術革新が進み、ロボットやAIがヒトに代わり働くようになり、人的資本や知的財産といった無形資産が企業価値の要素として重要性を高めています。


2. ESG投資への関心の高まり

ESG投資とは、環境問題や社会問題に対する企業の取り組みに着目して投資を行うことです。

ESGとは「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を組み合わせた言葉です。この3つの観点に着目して事業を行うことで、企業が長期的に継続して成長できるという考え方であり、世界的に関心が高まっています。そのため、「Social(社会)」に位置づけられる人的資本について、情報開示が求められています。


3. 欧米の人的資本情報開示の義務化

欧米では、日本よりも早く、人的資本の情報開示が義務化されています。欧州では2014年に「社会・従業員」を含む情報開示を義務化、アメリカでは2020年に上場企業に対して人的資本の情報開示が義務付けられました。


4. ISO30414の公開

ISO30414とは、人的資本の情報開示における国際的なガイドラインのことで、2018年に国際標準化機構(ISO)から発表されました。
ISO30414は、企業の透明性を図ることや、企業の持続的な成長をサポートすることを目的としており、企業が開示すべき人的資本における情報として、コンプライアンスや組織文化、ダイバーシティなど、11領域49項目が定められています。


人的資本の情報開示が求められる項目

2022年に政府が公表した「人的資本可視化指針」では、開示事項として望ましいとされる7分野19項目が示されています。

① 人材育成

人材育成では、「リーダーシップ」、「育成」、「スキル・経験」の項目が挙げられています。
具体的には、研修時間や研修費用、研修参加率、スキル向上プログラムの種類・対象などです。


② 多様性

多様性では、「ダイバーシティ」、「非差別」、「育児休業」の項目が挙げられています。
例えば、性別や人種ごとの従業員比率、産休・育休の取得率、男女間の給与差、また多様なアイデンティティや、異なる背景を持つ人材を受け入れられる体制が整っているかなどです。


③ 健康・安全

健康・安全では、「精神的健康」、「身体的健康」、「安全」の項目が挙げられています。
例えば、労働災害の発生率や従業員の欠勤率など、従業員の心身の健康が守られているかの情報開示が求められています。


④ 労働慣行

労働慣行では、「労働慣行」、「児童労働・強制労働」、「賃金の公平性」、「福利厚生」、「組合との関係」の項目が挙げられています。
賃金の男女比や、福利厚生の種類・内容、労働におけるコンプライアンス違反の有無の情報開示が求められています。


⑤ 従業員エンゲージメント

従業員エンゲージメントでは、「従業員の満足度」の項目が挙げられています。
従業員が労働環境や業務内容、待遇に満足しているか、やりがいを持って働けているかの情報開示が求められています。


⑥ 流動性

流動性では、「採用」、「維持」、「サクセッション(後継者の育成)」の項目が挙げられています。
適切な人材の確保や人材の定着ができているか、また採用コストや離職率などを示す項目で


⑦ コンプライアンス

コンプライアンスは、「法令遵守」を意味します。
法律を遵守し、社会的な規範や倫理に基づいて、企業活動を行えているかの情報開示が求められています。


人的資本の情報開示を行う際のポイント

人的資本の情報開示をする上で注意すべきポイントを紹介します。

・ストーリー性を意識する

開示する情報にストーリー性を持たせることがポイントです。
どのような施策を行い、どのような結果に繋がったのかなど、人的資本に関する自社の課題に対して、実施策を結びつけ、筋道を立てて具体的に説明する必要があります。


・開示情報を数字化する

行った施策の現状や結果を数値化して開示することで、開示する人的資本の情報に具体性を持たせることができ、説得力が増します。
また、数値化した情報を分析することで、現状と目標のギャップも明確になります。


・戦略的に情報開示する

ステークホルダーが求めている情報を分析し、ニーズに応えられるような情報を開示することも重要です。


まとめ

今後、企業を持続的に発展させ、企業価値を高めていくためには、人的資本への投資、そしてその情報開示がますます重要となっていくことでしょう。

人的資本
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