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旧約聖書物語 10

ダビデがイスラエル王国の王となり
着実にダビデ体制を確立する
その後の王国の堕落とアブサロムの反逆
年老いたダビデの死
そしてソロモンに受け継がれた
イスラエル王国の絶頂期


谷口江里也 構成訳
ギュスターヴ・ドレ 画
©️Elia Taniguchi

目次
1 ダビデ、ユダ国の王となる (サムエル記下1-2)
2 ユダとイスラエルの抗争 (サムエル記下2-3)
3 全イスラエルの王ダビデ (サムエル記下3-12)
4 全イスラエルの王ダビデ その2 (サムエル記下3-12)
5 ダビデ体制の確立 (サムエル記下8-9)
6 ウリヤの妻、バト・シェバとナタンの叱責
  (サムエル記下11-12)
7 タマルとアムノン (サムエル記下13)
8 アブサロムの反逆 (サムエル記下13-19)
9 アブサロムの反逆 その2 (サムエル記下13-19)
10 アブサロムの反逆 その3 (サムエル記下13-19)
11     サウルの子孫の処刑 (サムエル記下21)
12  ダビデ王国、最後の仕上げ (サムエル記下21-23)
13  ダビデの死と、後継者ソロモンによる統一国家の完成 (列王記1-2)
14 神から知恵を授かるソロモン (列王記上3)
15 神殿の建設 (列王記上4-9)
16 ソロモンとシェバの女王 (列王記上6-10)
17 ソロモンの栄華と背信 (列王記上10-11)

1 ダビデ、ユダ国の王となる 

  (サムエル記下1-2)

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ペリシテ軍はサウルの鎧冑を奪い
首を落とした。
使者がペリシテ全土に送られ
それぞれ彼らの神ダゴンの偶像に
サウルの死と勝利を伝えた。
サウルの首と、生前サウルを護って
幾多の戦火をくぐった彼の武具は
ペリシテの神々を奉る
アシュトレトの神殿に運ばれ
遺体は彼の息子達の遺体と共に
イスラエル人に対するみせしめのため
ベト・シャンの城壁に曝された。
ペリシテ軍のサウルに対する
仕打ちを知ったギレアドの
ヤベシュの人々は闇に紛れて
彼らの遺体を城壁から下ろし
ヤベシュに運んで火葬に対し
遺骨をヤベシュの樫の木の下に葬り
七日間、断食して
かつての王と王子を弔った。

ダビデは、アマレクを討った後
ツィグラグに帰り、その三日後
サウルの死を知った。
ダビデは親友であったヨナタン、そして
サウルとイスラエルを悼んで泣き
断食し、嗚呼、勇士たちは倒れた
ギルボアの山々よ生け贄を求めた地よ
一滴の雨も一雫の露さえも
汝の上に降るなかれ。
そこには勇者達の盾が、サウルの盾が
それと知られるすべもなく
唯打ち捨てられている。
と哀悼の歌を謳った。
王を無くしたイスラエルの人々
とりわけユダ族を中心とする陣営は
ヘブロンにダビデを迎え
油を注いでダビデを王とした。
ダビデは民を率い
当時エブスと呼ばれていた街
エルサレムを陥とし
そこに自らの砦を築いた。
一方、サウル軍の指令官であった
アブネルは、サウルの子
イシュ・ボシュトを擁立しマナハイムで
彼を全イスラエルの王とした。

かつてダビデの命を狙い、何としても殺そうとしたサウルの死を知ったダビデは、兵士たちの目の前で衣を裂いて嘆き、報告をもたらした使者を、王を見殺しにしたものとして処刑しています。領土獲得戦を戦ったサウルは、武勇に優れた王でしたが、ダビデはそれに加えて知力や戦略性に長けた王であり、多くの詩篇を残していることでもわかるように優れた表現力も兼ね備えた文武両道の王です。現在のイスラエルの国旗には、正三角形が二つ組み合わされた印、通称ダビデの星が白地に青く染め上げられていますが、ダビデはヤコブ・イスラエルの歴史の中で最も重要視されている王です。ダビデはこれから全イスラエルの王としての地位を、細心の注意を払って入念に確立していくことになります。
なおダビデは、旧約聖書物語8に登場するルツを母とする息子のオベド、その息子エッサイの息子です。そしてそのダビデの血を受け継ぐものとして、遥かな時を経てやがてイエスが生まれることになります。旧約聖書の記述、とりわけダビデの物語は、その極めて重要な伏線となっています。


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