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旧約聖書物語 15

預言者エゼキエルの幻視
民を根絶やしにする神
そしてやがて無数の骨を蘇らせ
命を与える神。
捕囚となって連れて行かれた
バビロンの地で
頭角を現す賢者ダニエル。

谷口江里也 構成訳
ギュスターヴ・ドレ 画
©️Elia Taniguchi

目次
1 預言者エゼキエルの召命 (エゼキエル書)
2 エゼキエルへの神の啓示 (エゼキエル書)
3 エゼキエルへの神の啓示 その2 (エゼキエル書)
4 復活する骨 (エゼキエル書)
5 バビロン王の夢を解くダニエル (ダニエル書1~2)
6 バビロン王の夢を解くダニエル その2 (ダニエル書1~2)
7 火の中を歩く三人 (ダニエル書3)
8 スザンナと二人の長老 (ダニエル書補遺)
9 スザンナと二人の長老 その2 (ダニエル書補遺)
10 ダニエルが夢に見た幻 (ダニエル書7)


1 預言者エゼキエルの召命 

  (エゼキエル書)

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エレミアがエルサレムに在って
神の言葉を預言していた丁度その頃
バビロンのケバル河のほとりの
ユダ人居留地に捕囚となっていた祭司
ブジの子エゼキエルにも神が臨りた。
神はエゼキエルの前に、北から
火を内に抱いた厚い雲と竜巻を伴い
その火の内で琥珀色に
光輝きながらやってきた。
よく見ればその火の中には四体の
動物とも人ともつかぬものがいて
それぞれ4つの顔
4つの翼を持っていた。
脚は人のようにまっすぐで
子牛の蹄のような足が
磨き上げた青銅のような光を放ち
翼の下にはそれぞれ人の手があった。
顔の一つは人のよう、あとはそれぞれ
獅子、牛、鷲のようだった。
翼の一対は上に挙げられ
そして後の一対は
下で自らの体を覆っていた。
4体の生き物の側には
海のような色の車輪があり
車輪の中にもう一つ
車輪があるような形をしていた。
外側にはぐるりと沢山の眼がついていて
車輪は動くとき、向きを変える事なく
どの方向にも進むことが出来た。
それらは生き物と共に進み
そして止まった。
生き物の頭上には
水晶の空のようなものが広がっており
生き物が動く時の滝のような音は
いと高き神の雷鳴のように
大軍の進軍の響きのようにも聞こえた。
生き物の頭上の空には
サファイア色の玉座のようなものがあり
その上に、人のような姿が在った。
腰から上は琥珀のように火のように
また腰から下は
燃え広がる火災のように見え
あたかも雲間にかかる
雨後の虹のようでもあった。

旧約聖書の預言書の中でも、イザヤ書とならんで最も幻想的なエゼキエル書の登場です。この時ヤコブ・イスラエルの民の国、イスラエル国もユダ国も滅ぼされて既に無く、民の多くは捕囚として異教の地へと奴隷として連れて行かれ、またある者は占領者の統治下のエルサレムなどのユダヤ人居住区で被占領民としての日々を送るようになっていました。エゼキエルはバビロンに連れて行かれた民の中から登場した預言者です。苦境の中でエゼキエルは民に向かってというより、自らが神と対話をするかのように語ります。


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