「普通の人」はキャリアについて考えない

以前の職場にはいわゆる「お局」という存在がいたのだが、ベンチャー企業ばかり渡り歩いてきていたためか、それまでそういった人にお目にかかった経験がなく「本当にこういう人がドラマや漫画でなく存在していたのか…」と驚いた。
性格も容姿も典型的な「お局」感丸出しだったので、まるで作られたキャラクターのようだと思わず感心したのだったが。

普段は明るく、なかなかユニークで人当たりも良いのだが、ひとたび気に入らない事があればあからさまに無視したりいびったりする(主に女性社員に向けて)ので、内心あまり良くない人だな…と思っていたのだが、やはり他の人からも目に付くものらしく、一見うまくやっているように見えて、ほとんど全ての男性社員から「悪い人ではないが困った人」という扱いになっていた。

ほんの数年前まではほぼ「紅一点」だったようで、社内の花という扱いのようだったのだが、3~4年ほど前から女性社員が増え始め、20代の女性がぞろぞろ入社するようになってからは加速度的に立場が悪くなっていったらしい。
この人とは、職場を辞める際に食事をする機会があったのだが、やはり職場に対する不満は相当なようで「スキルのある人は、年食ってもどこへでも行けていいですね」という内容の事を言われたのだった。
この人は、例のアッパー系コミュ障からは大変高く評価されていたのだが、長く勤めながらも社内におけるアドバンテージを失い、出世も望めず、どこへも行けなくなった40代女性の末路…としか言いようのない姿がそこにはあった。

しかし、このような状況になる事はもっと早い段階で予想出来ていたはずであり、女性が少ないという利点は環境依存でしかなく自分自身の能力に応じたものではない事、また、環境が変化した場合でも自分の状況が悪くならないように能力を伸ばす努力を怠った事、そしてどのみち出世という面で不利な社風であったというのは明白だったと思う。

男女問わず、最近は中年にがっかりさせられる事がままあるのだが、ほとんどが「数年先の未来を考えず惰性のまま生き、取り返しのつかない状況になってから盛大に文句を言う」ので、何故わかりきっていたはずなのに動けなかったのかと問い返したい気分になる。
だが、大半がこういう人で占められているのだろう。

先日もある人から「世の中、お前のように努力している人間ばかりじゃない」などと言われていたのだが、努力していた事などほとんどないので「???」という気分になった。
多分、就活の事を指しているのだと思うが、それは単なる「己自身のより良い生存」のためのアクションに過ぎない。しかしそれですら心理的負担を嫌って行動出来ない人がほとんどらしい。

正直なところ、私自身のスキルというのは業界では「並やや下」になると思うのだが、単純に収入に関しては(業界水準で)ぼちぼち悪くない範疇に入るため、しょうもない環境を嘆き続けるよりはアクションした方がずっと楽になるのではないかと思うのだが。

ただ、世の中あまりそういう事が知られておらず、だからこそ私のようにたいして持たない者がなんとか生きていけるようになっている。


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