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つぶやけ!第一回寝言選手権!





「もう食べられないよムニャムニャ」って寝言で呟きてェ〜





という願望を持ちはじめてからもうすぐ三度目の春を迎えてしまう。私が寝言で「もう食べられないよムニャムニャ」と言えずダラダラと日々を垂れ流している間にたくさんのいのちが芽生え、やがて絶えていってしまった。外はもうまったく知らない世界だ。ありとあらゆるものの細胞は全て生まれ変わり、そこにあるものは単なる私の記憶でしかない。

季節が変わるたびにそんな鳴かず飛ばずの不甲斐ない自分自身に辟易している。どこまでも続くような快晴の空の下を歩いても三度目の春をもうすぐ迎えてしまうことへの焦燥が太陽の光が体内まで差し込むことを遮ってしまう。故に心まで晴れないでいるのだ。

そんな時、友人のSNSを見て私は稲妻に打たれたようにその場で動けなくなってしまった。動画が載せられなかったので私のツイッターの裏アカウントに掲載することにする。










な に こ れ


これ寝言?寝ているの?人って寝たままこんなに喋れるの?という疑問が頭の中で 湧いてくる。私が今まで耳にした他人の寝言は、父と一緒に寝ていたころに父が発した「ウゥワァァァ〜〜〜〜〜〜〜ン!!!という奇声のみであったのでここまでハッキリとした寝言を聞いたことがなかった。(実の父の叫び声ってかなり心にくるものがあるしプチトラウマになりました)

この寝言に私は希望をみた。曇っていた私の心に一筋の光が差した。

この人なら寝言でお腹いっぱいの旨を伝えてくれるはずだ



私はすぐさまその友人・中田に連絡を取り、その友人が属する5人のグループで収集をかけた。

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流石は青春の日々を共にした同志、瞬時に意図を理解している。1分以内に理解しすでに戦闘体制に入っている者もいる。これは期待できる。ここで中田を参加させることによって「もう食べられないよムニャムニャ」への夢を叶えてくれるかもしれない。ついでに競争心が私を駆り立てて、私自身の口から出るかもしれない。私はその日大満足で

寝言をいうためにワクワクして寝るという奇行

に胸を膨らませながら1日を終えたのだった。








しかし結果から言うと、誰一人言えなかった。

私たちは毎日毎日寝言をいうために汗水流して働き汗水流して寝た。その努力が功を奏し、



中田マジすごい



という結論に至る。正直、嘘やヤラセだと思われるかもしれない。しかしながら大学四年間を共に過ごした仲として中田はこのような形でウケをとるために嘘をつくような人間ではないと確信している。それに彼女は以前から寝言を録音しているので信憑性がある。録音機能には録音の時間帯が表示されるためそれを一つの判断材料にしていただくとありがたい。まぁそもそもネタとして見ていただきたいのですが。

今回はこちらのアプリを使用した。寝ている間に物音をキャッチするとそれを自動で録音してくれる超スゲーアプリである。




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私は駄目だった。寝言が全く言えない。録音されたものは寝返りのズザザッという音のみであった。ハァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜寝てる間に面白いことの一つや二つも言えないのだ。次第に何の為に私は寝ているのだろうという自己嫌悪に苛まれていた。中田に慰めの言葉が一番つらい。

結局中田以外の他の三人もまた戦意を喪失してしまい。自己嫌悪に陥ってしまった。




容量足りなくなるほどのいびきが記録されていた者もいた。

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5時53分から呼吸してなくない?


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目を凝らしてご覧いただきたいのだが、5時53分からの6分間、彼は唸り続けている。何だこのグラフ怖すぎるだろ。普通はところどころ息を「吸う時間」があるはずだ。彼には「吐く時間」のみが存在している。しかも振り幅が最大である。つまり音がクソでかい。つまり

クソでかい咆哮

が延々と続いているのである。


工事現場?

そんな彼の実際のいびきである。お分りいただけるだろうか。どうか最後まで動画をご覧いただきながら目を瞑ったまま想像してみてほしい、これは「昼間の駅前、ビル工事中の音」である。営業で外回りをする方ならよく耳にするのではないだろうか。あのポカポカした平和な昼下がりを貫くように響く職人たちの魂の音である。






中田に負けじと嘘の寝言を録音した者もいた。



いるけどそういう奴


いや、いるけどそういう昼休みとかに男女合同サッカーの時に女子にやたらパスして「下手だなぁ笑」っていう奴

いるけど何年根に持ってんだよ。今更言わないだろ。嘘でもここまでのリアルさのある寝言は正直何もできなかった私より全然良いが。そもそも嘘はいけない。思い返してみれば一番はじめに

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嘘寝言選手権?と発言しているのが彼である。嘘つく気満々だったのだ。

そんな中で圧倒的な力の差を見せつけた中田の寝言がこちらである。

どういう状況?

女子の世界は怖いとは往往にして聞く言葉であるが、やはり我々にはわからない本音と建前の世界があるのだろうか。

褒められたら褒めかえす。「可愛い〜」と言われたら「いや〇〇ちゃんの方が可愛いよ〜」と倍にして返しているのか。

いずれにせよ長年の戦によって培ってきた彼女の経験によって搾り出された寝言であることは間違いない。

かわいい(相手への褒)かわいい(相手への褒)かわいい(相手への褒)センキュ(相手への感謝)かわいいよ〜(最後に相手への褒)


他にも


具体的すぎ

いくら何でも具体的すぎやしないだろうか。かわいい菓子パンってなんだ?なにが?

意識がない状態で運転見合わせって言える?時間帯も深夜帯でかなり信憑性が高く、もはやお手上げ状態だった。いや〜マジですごい。





そうして激動の寝言選手権が幕を閉じた。寝言をいう為に寝るという生活が終わり今はホッと一息つけている。


結局、私はまた「もう食べられないよムニャムニャ」ということができなかった。でもいつか言うから。信じてほしい。どうか見放さないでほしい。そして全て私に投資してほしい。その時まで、いつまでも待っててほしい。

すると、どこからか聞こえてくる










寝言は寝て言え。と








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