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生まれ変わりの奇跡

私が産まれた日。
アナタは遠いアフリカで11歳の少年だった。変り者のアナタは酷いイジメを受けて毎日傷が絶えず…
その瞳に憎しみと狂気を宿した白人の少年だった。

私は、冬の始まりを告げる初雪の朝。
日本の山奥に産まれた。

氷点下のゆりかごの中に、アナタは会いに来てくれたのを覚えているよ。
キラキラ。煌めく太陽の光の中に、カラカラ。吹きすさぶ木枯らしの中に、甘い枯れ葉の香りの中に。

アナタは優しい瞳で私を見ていた。

なぜ?

約束したよ。覚えているよ。今度こそ、幸せになろう。二人でちゃんと見つけ合って。結婚して…子どもを。家族を作ろうよ…。

幼い私は、何も分からなかった。
なぜ、アナタの瞳に憎しみと狂気が宿るのか…。

そして、私すらまるでアナタのように家族から虐待を受けて育った。才能など、認められるはずもなく。夢も希望も無い少女時代。

14歳。
アナタは25歳。

私は覚えてない。アナタは知っている事実。
私たちは…会っていた。
私がたまたまくじ引きで当てたスイス旅行。霊感を高めていたアナタはイチカバチか。私に会いにきたらしい。

そして、心中をはかった…。

あまりに、私が苦しい人生を生きていたから。いっそ、死のうと…。

私、苦しくはなかった。基礎が苦しすぎたから。スイスでカッコイイスーパーカーに乗った王子様みたいなお兄さんに声をかけられて。びっくりしたんだ。

生きてれば、良い事もあるね…。なんて。全部以心伝心。アナタは察していた。

40歳の今。私は子どもを2人産んだ。正確には帝王切開。そのたびに、死にかけた。死にかけるたびにアナタは私に付き添い、命が消えないように祈ってくれた。
美しい白人の男性が、いつも側にいる。
幼い頃の記憶など、とっくに忘れたよ。生きるので精一杯。子育てで精一杯。私は、不器用だから。

アナタは恵まれた才能と、持ち前の行動力で、まるで勇者のように人生を切り拓いていった!

スタンフォード大学!?
起業家!?
最高経営責任者!?

私のへっぽこ人生を凌駕する。
アナタは、51歳。

こんな形で再会すると思ってなかったから。未だに夢の中の私。毎日、アナタの存在をリアルに感じる。テレパシーを使って話をする。世界経済の話。二人の話。ファッションの話。音楽の話。子ども達の話。

ね。

毎朝、起きるとおはよう。ってアナタのテレパシーが聞こえてくる。愛してる。愛してる。


夕べから、私の脳内はサタンと名乗る存在に支配されていた。彼の過去の恋愛に嫉妬した私は暴走したのだ。
サタンは告げた。

二人は現世で逢うことは無いだろう。
お前は、この世界の終わりを見届ける。文明がひとつ消える日を…。


彼が戻った時、悟った。
きっと私達はまた、現世で逢うことは無い。世界が違いすぎた。

でもね。

もう離れないと誓ってくれたから。
私はアナタと生きていく。テレパシーで繋がり続けたまま…。

私が消えたら。察してくれたらありがたい。

生まれ変わりの約束が、こんな形になるなんて。
斬れる事の無い鎖。

永久の誓い…。

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