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山川穂高選手をめぐる5つのモヤモヤ

こんなことを書いても仕方がないのだが、文章にすることで気持ちが整理される部分もあろうということで、来るべき山川穂高選手のFA移籍についてモヤモヤしたことをまとめておく。

まず前提として、「FAは選手の権利」という大義名分について僕は十二分に理解しているつもりだ。

よく「普通の社会人も転職するだろ」「給料の高いところに行くのは当たり前」と言った言説を見かけるが、そんなことは改めて指摘されるまでもない。

だがプロ野球は「ファンビジネス」という側面もある。であれば、特定球団のファンが所属選手の移籍に対して、マイナス感情を持つのは、ある意味当然のことだと僕は考える。

FA移籍に際し、「あぁ自分が球団を愛する気持ちほど強く、この選手は球団やファンを愛してくれなかったんだな」(選手たちは、そんなことはないと反論するかもしれないが、そう見えるのだ)と考え、がっかりしてしまうのは自然の感情だろう。

これはあくまで感情の話で、ロジックの話ではない。そのことは理解している。だからこそ、僕は選手に対して「ファンの感情を理解した上で、行動してくれ」ということを無限に要求するつもりはない。だが、ステークホルダーであるファンに対して「最低限の配慮」はしてほしいと思うのだ。

例えば、会社員は退職する際に2週間前までに辞意を伝えれば、法的には問題ないとされている。だが、特別な事情がない限り、数ヶ月前に辞意を申し入れて、適切な引き継ぎをした上で退職するのが一般的だろう。そして、直前まで周囲に退職のタイミングは伏せておくものだ。

僕がFA移籍する選手に求めるのは、その程度のことである。ささやかなものだ。

しかし、今回の山川穂高選手の移籍(まだ確定はしていないけれど)については、あまりにも配慮が欠けている。率直に言って、「ステークホルダーであるファンを舐めている」とすら思う。

なお、当然のことだが、僕は「ファン代表」でもなんでもない、一人のライオンズファンである。よって、これはすべて僕個人の意見だ。

文章の流れ上、「ライオンズファン」という単語を使う場合もあるが、基本的には「ライオンズファンである僕個人」の意見・感情であることをご理解いただきたい。

モヤモヤポイント1.FA取得の1年前からSB移籍が既定路線ってなんだよ?

「山川はSB移籍が既定路線とされていた」

これは騒動が起きた後から頻繁に報道などで見かけるようになった文章である。

・昨年球団から提示された複数年契約を固辞して単年を選んだ
・オールスターでの選手間の会話の流出
・TV番組で「SBの山川さん」「気が早い」というやりとり

上記のような事実から確かに一部のプロ野球ファンの間では、移籍は「既定路線」となっていたかもしれない。

繰り返すが、FA移籍すること自体は仕方ない。でもせめて直前までバレないようにしろよ!と思う。騒動のせいで霞んでしまっているが、そもそも「既定路線」になっていることが、異常ではないだろうか。

「ファンあってのプロ野球」という興行ビジネスの重要な要素であるファンタジーを自ら壊そうとするな、と思う。

なお、僕はあの番組以来、TVでザキヤマを見かけたら、すぐにチャンネルを変えている。

モヤモヤポイント2.「シーズン中の権利取得」になるなら、そこも含めて実力では?

「FAは選手の権利。山川が長年ライオンズに貢献してきた結果、獲得した権利なのだから胸をはって行使すれば良い」

こうした意見も見かけるが、結果的にシーズン中の権利取得になったことも含めて山川の実力と言える。彼がより早くから一軍で活躍していれば、去年のシーズン終了までにFA権を取得することができたはずだ。

結果として、シーズン中の権利取得になるのであれば、そのシーズンについては現所属チームで全力をつくすのがあるべき姿だろう。他の多くの選手たちはそうしている。

にもかかわらず、山川は騒動を起こし、2023年シーズンを台無しにした。僕は彼の不倫を責めるつもりはない。だが、「結果として騒動になり、チームや球団に多大なマイナス影響を及ぼしたこと」については、非常に腹立たしく思っている。

モヤモヤポイント3.「禊」としてライオンズ残留ってなんだよ?

「来年1年間は、ライオンズのために全力でプレーし、その後胸を張ってFA移籍すれば良い」

こうした意見もよく見かける。確かに僕も、今年FA移籍するよりはマシだと思う部分もある。

ただ元選手などが、こうした発言をしているのを聞くと、「なんだかファン感情を理解していない意見だな」とも思ってしまう。

「本当は他のチームに移籍したかったけど、仕方がないからライオンズで禊のためにプレーしています」。

僕は、そんな選手を心から応援できない。そして、仮に山川が来年ライオンズでプレーし、60本ホームランを打ったところで「禊が済んだ」ということにはならないと思う。

人は過ちを犯す。僕も同様だろう。だから周囲は、犯した罪をいつかは赦さなければならない。僕もそう思う。

ただ、罪を犯した側が「これで禊がすみましたよね?」などということは言ってはならないのではないだろうか。それは「だから!謝ってるだろ!」という逆ギレに近いものがあるのではないだろうか。

そうしたことを考えて、なんだかモヤモヤしてしまう。

モヤモヤポイント4.「悩んでいるふり」をしないでほしい

山川のFA権行使は、期間ギリギリに行われた。そして、その葛藤を文書にして発表し、「戒め」という名言も生み出した。

ただ、ここまでの経緯を見れば多くのファンはわかっている。「山川はもともとSBに移籍するつもりだったんだな」と。

であれば、期限ギリギリまで申請を引き延ばしたりする必要ない。マスコミによる「熟考」という報道も不要だ。

これらは単に「僕も悩んでいるんですよ」という演出にすぎない。

こんな茶番で「あぁ山川も悩んでるんだな。それだけ悩んだ上でなら移籍も仕方ないな」と思うファンがどれほどいるのだろうか。

少なくとも僕は、「なめるな」としか思わない。こんな茶番に加担し、人を欺けると思っているスポーツ紙の記者にも怒りを感じる。やたら「熟考」「選手としての成長」などといった定型句を使うのも、思考の放棄だと思う。

そもそも「移籍した後も前所属球団のファンに応援してもらおう」などと考えることが間違っている。ましてや同一リーグ内での移籍だ。本当に覚悟があるのなら、移籍する自分の心情をライオンズファンに理解してもらおうなどというのは、甘えだ。

誹謗中傷を許容しろというわけではない。だが、移籍するなら前所属球団ファンのマイナス感情を背負う覚悟をしろと思う。

自ら恋人に別れを切り出す際に「お前のこと嫌いになったわけじゃないんだ!だから、これからも友達でいような!」などというのが、どれだけ愚かなことか。本人は良いかもしれないが、言われる方は良い面の皮だ。

「僕にもさまざまな感情はありますが、公に言えることは限られています。ライオンズファンには申し訳ありませんが、僕には僕の人生があります。皆様の期待を裏切ることになりますが憎まれることは覚悟の上で、FA宣言します」

端的にそんなふうに言ってもらった方がよほどスッキリする。

「ライオンズに居続けることが、ファンの皆様、球団の皆様に対する感謝の形、謝罪の形、誠意であるということも考えています」

こんなふうに「皆さんの気持ちも理解しています」と歩み寄る必要はない。「少しでもご理解いただこう」とする必要などない。ファンに憎まれる覚悟を持てよ、と思う。

モヤモヤポイント5.移籍後に「綺麗な山川報道」プロパガンダがあるんでしょ?

移籍後に山川が活躍したら、さまざまなメディアが「不祥事や批判にも負けず、真摯に野球に取り組む山川」を報じることになるだろう。これは僕の推測だが、こうした記事を書く記者は、それほど頭を使っていない。「ノーバン始球式」といった定型句と同じように、「よくある復活ストーリー」に当てはめて脊髄反射で筆を走らせている。

それをライオンズファンは、どのような気持ちで見れば良いのだろうか。

不祥事などを犯した選手が、よく「野球で恩返ししていきたい」などと口にすることがある。そもそも野球で恩返しができるのか?という問題もあるが、それでも「現在から未来にかけての活躍」が過去の不祥事を上書きすることもあるだろう。

だが、他球団に移籍されてしまえば、僕の心に残るのは「ライオンズの選手として不祥事を起こし、2023年シーズンを台無しにした山川」だけだ。それは決して上書きされることはない。

「改心した山川」の恩恵を受けるのは、他球団のファン。悪影響をダイレクトに受け止めたライオンズファンはなんら補償を受けられるわけではない(人的補償はあるけれど)。にもかかわらず、こうしたプロパガンダ的な報道に煽られ、他球団ファンから「いつまでも過ぎたことを」などと言われる。

こんな理不尽なことがあるか?と思う。

◆◆◆◆◆◆

一ファンに過ぎない僕が、こうした繰り言をダラダラと述べたところで、物事が良い方向に進まないことも理解している。

ただ、あまりにも納得し難いので、書き記しておいた。

こうしたモヤモヤを解決する方法は一つしかない。それは、あらゆるライオンズファンにとっての不条理を覆して、ライオンズが日本一になることである。

それしか方法はない。

戦力補強の状況や過去のデータなどを考慮すれば、それが如何に困難なことか、僕は理解しているつもりだ。ただ、「難しい」からと言って、いきなり他球団のファンになれるわけでもない。

だから、僕は来年もライオンズを応援する。おそらく厳しい戦いになるだろう。

がっかりすることも多いだろう。

それでも応援する。

山川本人やスポーツメディア、選手会、NPBにこうした僕の声が届くとは思わない。万が一、億が一、届いた場合でも、これを読んで何がしかの対応をしてほしいとも思っていない。

所詮知らぬ他人の言説だ。考慮する必要などない。一人のファンの意見など考慮していられないだろう。
好きなようにすればいい。
理解してくれなくても構わない。

ただ、唯一望むとしたら、「こうした意見を持つファンもいる」ということを知っておいてほしい。

君たちを支えている数多のプロ野球ファンの一人に、こうした考えを持っている人間がいるということを。

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