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粒子系の測定

 この記事は堀田量子の第 8 章の 8.7 節の内容を詳しく書き直したものです。関連する演習問題の式変形も本文中に入れて解説しています。文体は「EMANらしく」常体にしてあります。

 第 8 章の一部として書かれていますが、ここだけ独立した章にしても良かったのではないかと思えるほど深い内容となっています。この話を飛ばしても次の章に進むことができるので、派生的な話題という扱いで第 8 章に入れてあるのかもしれません。しかしこの教科書の重要なテーマの一つである気がします。

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理想測定は無理そうだが問題は無い

 位置や運動量の理想測定は無理な話である。有限準位の理論では$${ N }$$個の準位のうちのどの準位にあるかを知るのが測定であった。ところが位置や運動量というのは連続量であって連続無限個の準位があるのだから、「無限の解像度」でその中のどれであるかを特定するのは無理だし、その上、調べなければならない範囲も無限大である。無限大のサイズの測定器が要る。

 これを完璧に解決する必要はない。近似的にどこまでも理想測定に近付けることができることが示せれば実用上の問題はないだろう。現実の測定で無限の解像度などは必要ないのだから、デジタル的に位置や運動量を特定できれば良いのである。測定範囲の問題については後で現実的な手段を考えよう。

 まずは運動量の測定に絞って話を始めよう。位置の測定も運動量の測定も理論上はほとんど同じなのだが、この後の章では運動量の測定の話が出てくるので、どちらかといえば運動量の話をじっくりしておきたいという理由である。

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