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位置の固有状態

 この記事は堀田量子の第 8 章の 8.5 節の内容を補足しながら、さらに独自の改変を加えたものです。元々の教科書の内容よりも分量がかなり増えていますので他の記事とは分けて独立させることになりました。文体は「EMANらしく」常体にしてあります。

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その成分は具体的に書ける

 位置の固有状態$${ \ket{x} }$$については、従来の量子力学の教科書では「抽象的な、ベクトルのようなもの」だという表現をされることが多かったのだが、この章のように$${ \ket{n} }$$という具体的な成分を持つベクトルを起点にして話を始めたおかげで、$${ \ket{x} }$$を具体的に表すことが可能になっている。これからその考え方について説明していこう。

 何らかの状態$${ \ket{\psi} }$$を波動関数で表すには$${ \psi(x) = \braket{x|\psi} }$$という形にすればいいのだということを既に説明した。というより、これは波動関数の定義なのであった。よって$${ \ket{n} }$$という状態についても$${ \braket{x|n} }$$というものを作ってやれば何らかの関数$${ \psi_n(x) }$$として表せるはずである。

$$
\psi_n(x) \ =\ \braket{x|n} \tag{1}
$$

 まずはこの関数$${ \psi_n(x) }$$の具体的な形が必要になるので、そこから話を始めることにする。

 ところで、今回の話では$${ \ket{n} }$$と$${ \ket{x} }$$が同時に出てくるのでちょっと混乱が生じる可能性がある。このように表記している間は問題ないのだが、$${ \ket{0} }$$、$${ \ket{1} }$$などと書くとどちらのことだか分からなくなる。幸いにして、今回の記事ではそのように書いた場合には$${ \ket{n} }$$の$${ n }$$が 0 だとか 1 だとかいう意味であると考えてもらえば問題ないようになっているので、面倒な書き分けを工夫しなくても済んでいる。どうか、そのように解釈しながら読んでいただきたい。

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