反復着床不全の定義と推奨される検査

今回は、ご質問の多い「反復着床不全に対する検査と治療」に関するESHREガイドラインをレビューしていきたいと思います。

「良好胚を2回移植しても、擦りもしません。何か検査をした方が良いですか?」

「万全の状態で移植に望みたいですが、何の検査をすれば良いですか?」

このようなご質問は、本当に(本当に)多いです。

「反復着床不全」と言うと難しく聞こえるかもしれないですが、要は「移植してもなぜか妊娠しない」という意味で、それは何故?どうしたら良いのか?と誰もが疑問に思うのも無理はないでしょう。

このガイドラインが全て正しいわけではありませんが、ESHREガイドラインはヨーロッパのいくつかの国が共同で作成している分、信頼性は高いかと思います。

最初に答えを言っておくと、おそらくこれを読んでも明確な回答は得られないと思います。

つまり、「これを調べて対策すれば、妊娠できる」というものは書かれていません。

それだけ、反復着床不全はまだまだブラックボックスという事ですね。

前置きが長くなりましたが、今回は「推奨」としている項目だけをレビューし、その後、順に別記事にまとめていきたいと思います。

引用: Recurrent Implantation Failure

○ 反復着床不全の定義

まず、何回胚移植で不成功ならば、反復着床不全と定義されるかについて見ていきます。
定義の仕方ですが、累積妊娠率が60%を越えるのに、一度も妊娠しない回数からRIFと定義しているようです。

下記の表をご参照ください。

・ 移植胚が正常胚か不明の場合

35歳未満→3回胚移植
35-39歳→4回胚移植
40歳以上→6回胚移植

・ 移植胚が正常胚の場合

35歳未満→2回胚移植
35-40歳→2回胚移植
41歳以上→2回胚移植

年齢の区分が微妙に変化していますが、ESHREガイドラインとして反復着床不全の原因は、胚側の要因がかなり大きいと考えている事がわかります。

○ 反復着床不全が疑われた時に、実施すべき検査

下記図をご参照ください。
これは、反復着床不全が疑われた時に調べる項目の推奨度を表した図になります。

Recommended : 推奨
Can be cosidered : 考慮できる
Not recommended : 推奨しない

の3種類に分類されています。

Recommended : 推奨

・生活習慣要因の再評価
・子宮内膜厚の再評価
・APAとAPS(抗リン脂質抗体)の評価

Can be cosidered : 実施を考慮

・夫婦染色体構造異常検査
・3Dエコー/子宮鏡検査
・子宮内膜機能テスト
・慢性子宮内膜炎の検査
・甲状腺機能の評価
・プロゲステロンレベル(卵胞期後期/黄体期中期)

Not recommended : 推奨しない

・ビタミンDのテスト
・細菌叢プロファイリング
・末梢血NK細胞検査
・子宮NK細胞検査
・子宮Tリンパ球の評価
・血液中サイトカインレベルの評価
・HLA-C適合性評価
・ミトコンドリアDNA量の評価
・精子DNA断片化/FISH検査

推奨はわずか3項目。

そして、推奨しないに見慣れた検査がたくさん。。。笑

あくまでも「反復着床不全に対するアプローチとして」推奨しないというだけであって、検査そのものを完全否定しているわけではないかと思います。

それらの項目については、後日レビューする予定です。(たぶん)

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