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【脳波解析】ウェーブレット変換

 本ページでは「Analyzing Neural Time Series Data Theory and Practice」(Mike X. Cohen and Jordan Grafman)のChapter12をベースに、ウェーブレット変換について説明します。
前回のノートはこちら↓

ウェーブレット変換の基礎的理解

 スケール (幅) やシフト (山の数) の違う複数のウェーブレットと元信号を掛け合わせることで周波数情報の時間変化を求めます。ウェーブレット変換は、Sin波とガウス曲線のかけ合わせで求めることができます。使うカーネルの形はこんな感じです。

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ウェーブレット変換のメリット

 フーリエ変換は定常性を仮定してるためエッジアーチファクトが発生する、というデメリットがありました。それに対し、ウェーブレット変換では、定常性が仮定されるのはサイクルの部分のみです。また、カーネルの端の値が0であるため、エッジアーチファクトが発生しません。さらに、カーネルを変形することで周波数の操作が可能となります。

ウェーブレット変換のデメリット

 ウェーブレット変換は、フーリエ変換のデメリットをカバーしているので、ウェーブレットすごい!ってなるかもしれませんが、デメリットもあります。
1) 時間窓の長さより長い周期を持つ周波数は見れない
→例えば、1秒の長さのデータからは、1Hz以下の周波数は見れません。
2) 周波数の近いカーネルと信号の掛け合わせ結果ではあまり差異が出ない
→例えば、15/14.9Hzのカーネルではほぼ同じ結果になります。
→そのため、3~60Hzのカーネルを15~30個用いるのが一般的です。
3) ウェーブレット畳み込み積分をしたデータは、時間周波数解析が難しくなる
→これは、位相とパワーの情報が損なわれるためです。
→複素ウェーブレットでは、これらの情報が保存されます。複素ウェーブレットについては、次の記事で説明します。
4) 信号とカーネルの位相差によっては信号が打ち消される
→位相が一致している場合は、内積>0 となります。
→位相がπずれている場合は、内積<0 となります。これは、共通部分の正負が逆であるためです。
→位相が1/2πずれている場合 は、内積 =0 となります。その結果、信号が打ち消されます。

ウェーブレット変換におけるコンボリューション

 ウェーブレットでのコンボリューションは、バンドパスフィルタとして機能します。というのも、フーリエ変換したウェーブレットとEEGデータを掛け合わせたものを、高速フーリエ逆変換 (IFFT) にかけると、EEGデータはそのウェーブレットが持つ周波数でフィルタリングされたものになるからです(内積は、共通している特徴量を抽出する、というイメージです)。



最後に、このノートにスキを押してくれると、とても嬉しい&更新のモチベが爆上がりします!ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
<謝辞>
このnoteを書く上で、弊ラボの原あゆみさんにご協力いただきました。ありがとうございます。

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