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Taylor Hawkins Tribute Concert @Los Angeles(フーファイ編)

■はじめに
9月27日、ロサンゼルスのKiaフォーラムで行われた Taylor Hawkins Tribute Concertへ行ってきました。このコンサートが発表になったとき、いよいよこのときがきたか…と思っていました。3月25日のあまりにも突然の出来事に、誰もが心や気持ちの整理も置きどころもないまま、メンバー、家族、そしてファンもただただ日々を過ごしていたと思います。テイラーを毎日想いながらもやりきれない気持ちもありました。きっと、それはメンバーも同じだったのかもしれません。
どうしたらいいのかの答えは、これしかないのも分かっていたと思います。誰よりも音楽が大好きで、仕事という以上に音楽そのものを愛していたのがテイラー・ホーキンスという人です。公開されることもアナウンスもなかったお別れの日なんかより、彼にはデカい音で音楽が何時間も鳴り響くそんな日のほうが似合うのは彼を知る人なら分かることです。
そのためにアメリカ・イギリスの音楽界を代表するミュージシャンが50組以上名を連ね、全員が忙しい現役ミュージシャンにもかかわらず国をまたいで参加してくれました。「今日はテイラーの音楽面での頭んなかを皆に体験してもらおうと思ってる。恐ろしいことになりそうなんだけど(笑)」とコンサートも冒頭で語ったデイヴやテイラーの奥さんであるアリソンが選んで声をかけていたそうですが、そのメンツといったら全アーティストヘッドライナーで3日間ライヴを見ているような至極濃厚な6時間でした。2万人弱のLA公演の会場は、私が見聞きしただけで、アメリカ各州、カナダ、中南米、オーストラリア、フランス、ドイツ…そしてイギリスと文字通り世界中から集まったファンで埋め尽くされ、終始フーファイファンらしいとても明るく和やかな雰囲気でした。
いろいろ書きたいことはあるのですが、全アーティストを語り尽くしていると1年位かかってしまいそうなので、今回はまず、本家フー・ファイターズのパートをレポしたいと思います。

■テイラーのいないフーファイを見ること

彼らをフー・ファイターズとして見るには何より欠けたものを目の当たりにしなければいけない現実がありました。先に9/3に行われていたロンドン・ウェンブリーでのメンバー5人は正直なところ喪失感と悲しみが目に見えていた状態で、見ているこちらまで胸が痛くなるほど。無我夢中に演奏しながら、「テイラーが喜んでくれるだろうか」と思いながらリハをやっていた、と話しながら涙するデイヴに、どうかこの時間と音楽、そしてテイラーが彼らを救ってくれるようにと切に願ったものです。
そしてその後、半月以上を経たロサンゼルス公演でのメンバーは随分明るくなり、地元公演ということもあってかリラックスしていて、笑顔もしっかり取り戻していました。5人で並んで登場したときにはラミの隣にテイラーの幻覚が見えてしまいそうなほどで、本音を言えばとても寂しかった。どんなにステージを探しても、ひょいひょいとドラムセットに上がっていく姿も見つけられない。今にも出てきそうなのに、ドラムセットに座っているはずなのに、その姿はどこにもありませんでした。
それでも、この日のフー・ファイターズは間違いなく"6人"だったと思います。そこにいる人がみんなテイラーを想い、テイラーのために集まっていた時間。それが会場中を満たしていて、彼のいない寂しさを全部覆ってくれたように感じました。

見る前までは、26年間テイラーのドラムで完全刷り込みで生きてきた私が他のドラマーでフーファイを見られるのか!? とかモヤモヤしたものがなかったわけではないけれど、そんなことを思いながら見るものじゃない! とウェンブリーの配信を見て思ったので、だいぶ心構えもできていました。だって、私にとってはテイラーが一番、テイラーの音が正解、それは揺るがない。彼の26年ですら、同じ曲でも彼なりのベストを見つけるために変わり続けていました。私はそれを見るのが、聴くのが大好きでした。でも、この日叩いてくださった全ドラマーはとにかく誠実に、テイラーのドラムと向き合って叩いてくれていて、それがまた良い意味で驚きや発見にもなりました。テイラーの音と違う(泣)なんて思えるわけがない。ドラマーさんたちのそれぞれの曲解釈、テイラーへの想いも含めて、よくやってくださったと私自身は感謝しています。加えて、おそらくというか間違いなくデイヴがドラマー選抜と曲を割り振ったはずなので、その意図も考えると思うところもたくさんありましたね。

という毎回恒例の長い前置きを経て、Foo Fighters @Taylor Hawkins Tribute ConcertのLA公演セットリスト順、11曲をテイラーファンがどう見たか、書いていきたいと思います。
尚、見る専門さらにフーファイは全曲シンガロングでまったく動画等がないために行ったのにYouTubeから動画を拾ってくるスタイルになっています。それ行かなくても書けるじゃん…と言われそうな…。


☆Intro Movie

テイラーがフーファイの曲で一番好きな曲と挙げていた「Aurora」で作られた、彼のフー・ファイターズでの姿を切り取った映像。加入当時のどうしようもないくらいヤンチャな彼と若かりしメンバーの姿はまだノリでバンドをやっているような楽しさがあって、そこから映像が切り替わるごとにみるみるスタジアムクラスのロックバンドのドラマーになっていく彼は、私が26年間見てきたそのものでした。歳を重ねて、名実ともにビッグバンドになり環境が変わっても、フーファイでいるときのテイラーはいつも楽しそうに笑っていて、くだらないことを言って爆笑してて、ずっと変わらない人だったな…と思いながら見ていました。このフーファイ前の映像が好きなんだけど、YouTubeから拾えず…。リードシンバリストのくだりが入ってたのは笑いました。わかる。これめちゃくちゃテイラーが笑ってたもんねえ。


①All My Life with Josh Freese

ウェンブリー公演での涙の「Times Like These」始まりからセトリを大きく変えたこの日、1曲目は長くためた後に華々しくデイヴの「ワギャー!!!!」とともに幕開けしました。この曲はMVをこのフォーラムで撮影したライヴ1曲目のド定番看板曲。客席の熱の上がり方がすごかった! これぞフーファイ!! という物凄い熱量で一気に攻めて、いろんな気持ちも寂しさも見事にぶっ飛ばしていきました。お客さんも応えるように盛大なシンガロングが始まります。私もコロナですっかり忘れていた感覚が反射的に戻ってきて、喉が切れそうになるくらい歌いました。
そんな派手なオープニングをしっかり引っ張ったのが、この曲のドラムを担当したジョシュ・フリーズ。オルタナ界のスーパーセッションドラマーです。どんな曲でも見事にバンドの色に合わせて叩ける敏腕ドラマーですが、今回の演奏もかなりテイラーに寄せていて、とてもパワフルながら安定感抜群。メンバーも完全に背中を任せている感じでしたね。この曲にジョシュを当てたのは大正解。少し跳ねた叩き方も良く似てました。最初に誰がどんなふうに叩くのかと少し構えていた部分もあったので、彼のおかげでとても安心しました。しかしこれだけ叩き方が違うのにここまで寄せられるもんだね…。
ジョシュとテイラーは、テイラーが彼の叩くドラムが好きで、特にクリス・コーネルのアルバムでの彼のドラムが大好きすぎて、ジョシュが呆れるくらい会うたびに「あれマジで最高だよ!!!」と熱弁していたそう。彼はウェンブリー公演の後に、インスタでテイラーのドラムセットを掲載して「テイラーのセッティングから変えるな」と指示をしたうえで叩いていたとコメントしていました。LA公演は他のドラマーのセッティング上、テイラーのドラムは使えませんでしたが、この日もテイラーと同じヴァン・ヘイレン短パンにテイラーのスティックを使用。最後までテイラーの音で叩きたいという意志が一番強かったのがジョシュでした。

因みにジョシュのインタビューは音楽ライター・鈴木さんのこちらの記事で読むことができます。彼の人柄が出ているとても良い内容ですのでおすすめです!

ところでラミがスタイリッシュ登場してたのは出遅れたの…?(珍しい)

②The Pretender with Jon Theodore(Dr.)&P!NK(Vo.)

こちらもライヴ定番の序盤曲。で、驚いたことにPink姐さんが登場…! 前日物販を買いに来たときに丁度この曲のリハが聞こえて、誰かコーラスを入れているなあ…と思ったんだけど、まさかPinkだったとは。テイスト的にはまったく問題ないんだけど、世界的にコンサートランキングで上位に入るくらいの彼女を贅沢に使ってたこの日。個人的にも大好きなので嬉しかったのですが、まさかフーファイの曲までやってくれるとは…気前の良さもさすが姐さん。実はこの曲はテイラーがいつもコーラスを取っていた曲で、誰しもそれで耳に染み付いているのではないかと思うほど。ウェンブリーではそれがないのがとても寂しくて、幻聴が聞こえそうなほどだったから、デイヴもそうだったのかな…と。
この曲のドラムを担当したのはジョン・セオドア。Mars Volta、One Day as a Lionなどをはじめ、現在はQueens of the Stone Ageをメインとして、直近はBright Eyesのツアーでも叩いている重低音ドラマーです。その体格から繰り出される音は最初のスネアとキックだけで、腹に刺さる凄い音圧…! え、さっきまでジョシュが叩いてたドラムと同じだよね!? と疑いたくなるほど、ドスドスくるPretenderの重さよ…。一打必殺な重さながら、正確なテンポキープとシンバルもビシバシ叩く華やかさ。間奏で1個早く入ってしまったのはご愛嬌ですぐにうまく修正する機転もさすがでした。特に序盤、そして終盤の流れでデイヴのドラムとも共通するところがある重低音ドラムだからこそ、Pretenderにセオドア指名したのも納得でした。

③Walk with Travis Barker

このドラマー人選はかなり意外だったと思います。すでにWalkのイントロが流れるなか、ドラムセットに上がった彼に会場でも私も含めて、どよめきが起こったほどでした。ドラムを担当したのはblink-182のトラヴィス・バーカー。00年代の代表的なドラマーの一人です。パンキッシュで派手なドラミングのイメージだったので、ウェンブリーで任された「Monkey Wrench」は大納得しました。なのに、このLA公演ではフーファイ屈指のミドルテンポなこの曲に抜擢されたのが意外すぎた。そして、ドラムにあがった彼はとても集中しているように見えて、客席というより自分の中にいるテイラーを見ているようで…。トラヴィス曰く、「自分はテイラーに見つけてもらったようなもの。駆け出しの頃にライヴを見てくれて"お前はスターになるよ"と言ってくれたんだ」と話していました。あのことがなければ自分はここにはいない、と。デイヴはおそらくこのエピソードや、トラヴィスの人生(飛行機事故や今年も緊急入院をしていたそう)、そしてもしかしてもしかして最近発表になった来年のblink-182の始動まで見据えて選んだのかな…と今になって思います。このときのトラヴィスはとにかく曲に誠実に向き合っていました。歌詞の意味を噛み締めながら叩いているようにも見え、派手さはあるもののタイトに真っ直ぐに叩いていて胸を打たれるものがありましたね。
この曲を3曲目にもってきたフーファイ自身にも少し驚きました。この曲の歌詞をデイヴが歌えるのか心配になったほどです。それくらいかなり今の彼らにはエモーショナルな歌詞でもあるのですが、デイヴはしっかりと歌いきってくれました。この曲があったことで、私も含めてファンも今のフーファイに少し安心できたんじゃないかなと思います。

④Low with Matt Cameron

この曲選の時点で度肝抜かれたんですが、さらにドラマー人選が斜め上のマット・キャメロンという!! Low自体、デイヴも言っていますがフーファイのライヴでもあまりやっていない曲でした。演奏したのは4枚目のOne by Oneが出た当時のツアーくらいで、おそらくその当時もレギュラーではなかったはず。しかもこのトリビュートにこんなヘヴィなマイナー曲を持ってきたのもびっくり! 私たちファンは大歓喜でしたけど。テイラーがたしかに好きな曲で挙げていたのを見たことはあるけれど、エンドレスで同じリフだからこそ、テイラーはこの手のテンポキープが苦手だった故にライヴであまりやらないと話していた記憶があります。そこに白羽の矢が立ったのがテイラーがとにかく天才的だと表現していたマットさん。彼は90年代を代表する2大バンド、Soundgardenと現Pearl Jamのドラマーで、デイヴとテイラーの中でしょっちゅう話題になる存在だったとデイヴが話しています。正直、トラヴィスが叩くんじゃないかというファン予想だったので、これまた会場はどよめき…。でも叩き始めて瞬時に、鬼のエンドレス同じリフでこのテンポキープはマットさんだからこそできるんだ!! と気づきました。しかもめちゃくちゃソリッドでタイト。Lowの理想的なサウンドを見事に表現したマットさん。コンパクトなドラミングで恐ろしいほど正確に叩くので鳥肌が立ちました。エンディングのパートなんてもう完璧すぎるくらい。これがテイラーが大好きな天才マット・キャメロンのドラミングか…。デイヴが「これはマットからテイラーへの曲」と話していたけど、きっとテイラーは目の前でこれを見たかっただろうなと、そんでヤベエヤベエ! ってめちゃくちゃ喜んだろうなあと思ってました。このデイヴの人選も超納得です。きっとデイヴもマットさんに叩いてほしかったんだと思うなあ。
テイラーからマットさんへの愛情はかなり大きめで、テイラーが自分で叩いたSoundgardenの動画をマットさんに送るというまあまあ愛情過多なこともやっており(笑)、でもマットさんはそれをとても喜んでくれていて良き関係でした。それが功を奏して、遂には2人でユニット曲を作ったりしていましたね。


⑤This Is A Call with Brad Wilk

ここからは古き良き同級会ムードです。ドラマーに選ばれたのはRage Against the Machineのブラッド! このセトリの中ではそうだよね!の人選でした。RATMとニルヴァーナ、そしてフーファイは特に90年代の同じ時期を駆け抜けた仲間でもあるので、演奏中のお互いの笑顔が物語る関係性だと思います。そして初期曲であるこの曲をブラッドに当てたのも正解かと。どう叩くかな、と思って見ていましたが、とても忠実に叩いてくれたブラッド。力強いドラミングで、フーファイの背中を安定感バッチリで支えてくれました。特に最後にメンバー全員がブラッドの方を向いて演奏していたのは、拍数を見ていたんだと思うけど、ぐっとくるものがありましたね。
ブラッドとフーファイはSoundCityのドキュメンタリーで曲に参加してくれたり、テイラーとはアラニスのバックだった時代にフェスで知り合ったんだそう。似たような音楽が好きだったり同じドラマーということもあり、レッチリのチャドと3人でよく会っていたりしていたようでした。仲が良くて、一緒の写真もたくさん見かけたなあ。2015年にはフーファイのライヴに飛び入りしてくれて、ちょうどその動画が残っていました。テイラーのRATMを見たときの衝撃を存分に語っています。


⑥Sky Is A Neighborhood with Patrick Wilson

この曲を演奏するのは「Walk」同様にかなりエモーショナルな部分がありました。もともと9枚目の「Concrete and Gold」のレコーディングの際、ほぼ終わっていたにもかかわらず師として悪友として親しい存在だったMotorheadのレミーが亡くなったことで作られ、デイヴが急遽追加した曲です。歌詞を聞くと、その意味がとても良くわかると思います。このアルバムリリース後の日本公演がなかったため私も初聴きでしたが、テイラーもこの歌詞のビッグバンドに仲間入りしてしまったというそれがとても寂しかった。これを音源と全く違うアレンジで叩きながらコーラスするテイラーが大好きだったので、この日一番泣きながら歌いました。
この曲をたたいてくれたのはWeezerのパトリック。デイヴも話してますが、フーファイとデビューが完全同期組のWeezerは昔からとても仲良しで、しょっちゅうツアーやらフェスやらで一緒になる仲です。ほっこりする同期で、テイストは違うけれどフーファイの海外ツアーにも一緒に連れて行っちゃう仲良しぶり。ライヴのそのときはこの曲に思い入れがありすぎてしまって、パトリックのドラムをしっかり捉えていなかったのですが、あとから見返すとめっちゃパトリック向けの曲だわ…。というこの曲がめっちゃWeezer風味になっている(笑)デイヴの人選が的確すぎてます。このリズムをパトリックに叩かせたら一番、とこれ聞いたら絶対に納得するやつでした。

そういや以前、彼らがツアーを一緒に回ったときにテイラーがWeezerを叩くとなんか違う感がすごいあったやつあったなと思ったので、探してきました。

だいたいフーファイが同年代の仲間の曲をやるとこれじゃない感がすごい(笑) 同期なWeezer Peopleとの仲良しネタ大好きです。

⑦Run with Omar Hakim

この曲は後期のテイラーのリズムパターンで代表曲といえる1曲でもあります。デイヴが選曲する気持ちはとても分かる。ここでオマー・ハキムというレジェンドドラマーをロンドン、そしてLA公演にも出演してもらったのは、デイヴなりに広い視野を持ったクッション材みたいな意味もあるのかなと思っています。オマー自体は正直フーファイみたいなゴリゴリなロックを叩いていた印象はなく、どちらかといえばジャズ・フュージョンのイメージ。今回のなかでも一番自己解釈のなかで叩いていたのがオマーでした。唯一自分のドラムセットを持ち込んでいたのも彼だけ。ただ、とにかくずば抜けたドラマーさんなので、あのRunを流れるように叩く衝撃といったらなかった。合わないといえばもしかしたら合わないのだけど、新解釈といったらまさにその通り。実はこれ、フーファイの前作「Medicine at Midnight」でも起こっていたことで、オマーがパーカッションとしてクレジットされており、彼ら本来のゴリゴリのサウンドやリズムワークの中に、彼がしっかりスパイス的に味を加えていたゆえのあのアルバムの出来でもあったのです。なので、私としては、オマーの解釈自体はそこまでの違和感はなく、何なら手数の多さがちょっとテイラーに近いところもあるのでニンマリしながら見てました。オマー本人も原曲の決めるところはしっかり押さえて、とても楽しそうに歌いながら叩いていましたね。
ネイトも久しぶりにノリノリがんがん弾きしていてとても嬉しかったなあ。この日は本来のフーファイのステージ上に近い姿があった気がします。

⑧Best Of You with Rufus Taylor

ウェンブリー公演に引き続き、テイラーの息子以外で唯一同じ曲を叩いたのがルーファス・テイラーでした。言わずもがなQUEENのロジャー・テイラーの息子で、The Darknessのドラマーでもあります。多くのフーファイファンに言われていましたが、見た目から叩き方、肩のホークタトゥー(これはテイラーが亡くなった後に入れたもの)までテイラーの瓜二つのようなルーファス。彼にとって、テイラーはとても大きな存在だったといいます。QUEENが死ぬほど大好きなテイラーにとってルーファスの父であるロジャーは神様のような存在でした。そんなロジャーに公私共に家族ぐるみでとても可愛がってもらっていて、今一番注目しているドラマーでも「彼のように叩けるドラマーはそうはいない」と名前をあげてもらっていたほど。そんなテイラーが可愛がっていたのが幼いルーファスでした。ファンの勝手な憶測ですが、ロジャーの息子でありドラマーを目指していたルーファスの立場をおそらくテイラーは気にかけていたのでは、と思います。立場は違えど、偉大なドラマーのすぐそばで叩くことがどれほどのことかテイラーはよく知っていたからね…。ルーファスはテイラーが兄のようであり自分のメンターであったこと、6歳のときに出会い自分が今ここにいる理由であり、最も尊敬する人と話していました。
この日のルーファスはウェンブリー公演から更に鍛錬したように感じられました。フーファイの前に登場したQUEENでも、父のロジャーが歌う曲でドラムを叩いていたのですが、力強さと覇気がものすごくて父ロジャーも驚いたような顔をした一瞬があったほど。実際にフーファイのステージでドラムセットに上がったルーファスは緊張よりも、テイラーに捧げたいという強い想いを感じました。ウェンブリー公演でも息子に続いてテイラーにそっくりだと評判になったこともあり、デイヴもおそらく、この日のルーファスに大きな期待を寄せていたと思います。このアレンジをあえてやらせたのもデイヴでしょう。でも、ルーファスはそもそもめちゃくちゃできるドラマーなので、軽々と超えてきた感すらありました。私が聞いても、ほぼ完コピに近いドラミングで、音の鳴り方、ため方もライヴバージョンのテイラーの叩き方そのもの。ルーファスからテイラーへの想いも強く感じられるものでした。しかも他のドラマーにはさせなかった、完全ライヴバージョンのアレンジで、それすら淀みなくテイラーのリフとまったく同じ流れで見ていて涙が出るくらい。これはデイヴがルーファスの想いを汲んで、あえて入れたことなのかなと…感極まってドラムに突っ伏してしまうルーファスを見ながら思っていました。会場中からも文句なしの大喝采。よくここまで仕上げてやってくれた、と心底思います。
ルーファスは以前QUEENのツアーを回っていたこともあり、メンバーを失ったバンドや残されたメンバーの姿をそばで見ていた人です。だからこそ、自分はどう叩くべきか…の答えを持っていたのかもしれません。敬意をもってあそこまで自分の中に取り込んで叩いてくれて…よくやってくれたよ、ルーファス。ありがとうね。
そして、このトリビュート・コンサート中、ルーファスはテイラーの息子シェーンの側にいる姿を多く見かけました。幼いテイラーの末娘の手を引いているときもあって、ルーファスにとって今度は自分がテイラーの子どもたちを見守る番と思っているのかな…と。
彼自身、父親の存在以上にしっかりと実力があることが世の中にもっと知られても良いドラマーなので、これを機にもっと羽ばたいてくれると良いな。

フーファイとルーファスの過去の共演といえば、これかな。気が付いたら凄い再生数ですね。二日酔い&完全観客モードだったルーファスをリアルアンダープレッシャーに陥れるデイヴ&テイラー(悪ノリ)


⑨My Hero

⑩I’ll Stick Around with Shane Hawkins

このトリビュートで豪華アーティストが並ぶなか、ウェンブリー公演ですべての話題を掻っ攫ったテイラーの長男であるシェーン・ホーキンス。この日も大歓声のなか満を持しての登場!!! 期待度とともに会場全体で彼を包み込むような優しさもありました。現在16歳のシェーンは、テイラーにとって一番目の子供であり、唯一の男の子。物心付いたときからテイラーの側で見様見真似でドラムを叩いていました。勿論テイラーはとても喜んで、子供用のミニドラムセットを与えて見守っていたようです。家族でツアーについて回ることも多く、テイラーが叩く側で小さなシェーンが椅子を叩いている動画も話題になったことがあります。あれだけやんちゃで、どうしようもない自分を変えてくれたのが子どもたちと家族、と話していたテイラー。ツアーばかりの生活のなかよく面倒を見て、できるだけの時間を割いてサーフィンや学校の送り迎えなど一緒に過ごしていたそうです。「息子がドラムをやっているんだ。彼から今どきの音楽を教えてもらうことがあるんだよ」といつも嬉しそうに話していたテイラーは、シェーンの成長とともに自身のサイドプロジェクトなどのステージにあがるように促すことも増えてきました。これはドラマーはライヴをたくさんやってナンボという自身の経験があるからこそですが、いつもドラムセットの下にはいるものの、とーちゃんの緊張しぃな部分をしっかり受け継いでしまった息子は、いつもテイラーの影に隠れてなかなか出てくることができず。ようやくそれが果たせたのが去年2021年のサイドプロジェクトNHCでのライヴでした。緊張で顔がこわばっているけれどそれでもしっかりとしたドラミングで感心したものです。
それから9ヶ月後、まさか彼が父親のいないフー・ファイターズのステージに立つことになるとは、誰も思わなかったことでしょう。それでもシェーンは父親譲りの本番強さを開花させ、見事すぎる堂々としたドラミングで見る人の目と心を掴んでいきました。父親であるテイラーがそうであったように、見る人が強く惹きつけられるその姿に泣くなというのが無理。いろんな想いがこみ上げて止まらなかったです。ドラミングがテイラー譲りなのは親子ですから、当然と言えばその通り。このデカいステージに技術的にもまったく問題ないレベル。でも、何より今ドラムを叩きたい、デカい音で強く鳴らしたい! という気持ちは登場した全ドラマー以上だと感じるほどにホンッッッッッッッとに強かった。ファンもステージに居るメンバーも、家族も、シェーン本人も失ったものはあまりにも大きいものです。それでも、ステージに居るシェーン自身が私たちにとっても大きな強い光だと感じました。次世代に繋がる光を、テイラーはちゃんと残してくれた。
デイヴはそれをしっかりと受け止めて、案の定1曲追加してきました。ルーファスも含めて、デキる奴にはハードルを上げていくタイプなので、きっとそうするだろうと思ったよ…。
”俺はロックスターなんかじゃない、ただのミュージシャンだよ。ドラムが好きなだけなんだ”…と事あるごとに話していたテイラーそのものであるような「My Hero」を叩くシェーンに会場中がこの日一番のシンガロングで応えるなか、まさかの「I'll stick around」に繋がり会場は大興奮&絶叫でした。まだ16歳の無限のパワーを出すには最適の曲といえばそう。しかも驚くくらいしっかり仕上げてる。父親と遜色のない爆発的なドラミングで、会場をエモーショナルな空気から一気にすさまじい熱量のある音圧でぶっ飛ばしていきます。まだ16歳、この規模のライヴはまだ2回目。学校の延長線でしかライヴをやっていなかった子が、ここまで成し遂げるのは本当に立派でした。さすがテイラーの息子…という以上に、何より本人の素質と才能、そして強い気持ちがあってこそだと思います。
そして、シェーンがここまで心置きなく叩くことができたのは、演奏中にずっと笑顔で”ミニ・テイラー”を見守り続けたメンバーたちがいてこそでしょう。特にこの動画にあるネイト&パットの笑顔がすべてを物語っていると思います。メンバーもきっと、シェーンのこの演奏にたくさん救われていたんじゃないかなと思います。
シェーンは父のようなドラマーになりたいと話していた、とウェンブリー公演でエピソードがありました。いつ頃のことなのか、本人はとても照れくさそうにしていましたが、あのドラミングを見る限りおそらくそれは変わっていないと思います。実際に演奏を見て、父を継ぐ想いは彼にはしっかりあるんじゃないかととても感じました。フーファイで叩いてほしいとか、そういうものではなく、彼自身のこれから先の長い道のりに沢山の経験を積んで、自分が思い描く未来にしっかりと生きてほしいです。いつかミュージシャンという道を選んで、ステージにあがってくれることがあれば、そのときは必ず応援するよ…!

⑪Everlong with Chad Smith

約6時間に渡るトリビュート・コンサートの最後を締めくくったのは、フーファイのライヴにおいて最後に演奏されてきたこの曲でした。デイヴは「ここにいる沢山の人が、一人の人間で繋がってここに集まっているんだ。ここにいる皆がテイラーへの愛を共有してる。とても美しいエナジーだよ。参加してくれて本当にありがとう」と話し、そして、”テイラーに捧げる曲”と語ったこの曲のドラマーは、デイヴもMCで言うようにテイラーの一番の親友ともいえるRed Hot Chili Peppersのチャド・スミス。本当に長い間、テイラーと事あるごとに一緒にいて、ジャムをして話をする親友でした。始まりはテイラーが加入して、リリースされた3rdアルバム「There is Nothing Left to Lose」のツアーでレッチリの前座についたこと。悪ノリフーファイはレッチリのライヴ中にピンポン玉やらスパゲティを頭上から落としたり、ネタも尽きない仲良しな両バンドでしたが、まだ方向性も関係性も定まらないフーファイが、自分たちの今のスタイル=アリーナロックの立ち位置を見出したターニングポイントにもなったのがこのツアーでした。レッチリはフーファイが今年キャンセルしたニューオリンズ・ジャズ・フェスティバルで代打を受けてくれて、そこにメンバーとテイラーの家族を招待してくれた情の深い仲間です。ノリがどこかしら似ているチャドとテイラーはなんだか兄弟みたいで、いつも微笑ましかったな。チャドはテイラーのサイドプロジェクトのライヴや、さまざまなフーファイのプロジェクトにもよく参加してくれて、テイラーが亡くなってからも何度も多方面で彼への愛を話してくれていました。
この曲のイントロを聴くと、「ああ終わってしまう…」と寂しさが必ず沸き上がるのですが、この日はテイラーが加入してから見続けてきたフーファイ、そしてテイラーの姿が一気に蘇ってきて仕方なく、チャドが叩くEverlongもとても真っ直ぐで、ひとつひとつ気持ちのこもったものでした。スネアが似てると思ったら、この動画の角度から見るにテイラーのスネアを使っているんじゃないかな…。抜群の安定感で、手数も落とすこと無く、ぶれることなく完璧に叩いていたチャド。同じ時代を生きてきた戦友でもある関係性は、しっかり背中を任せているフーファイメンバーからも感じ取れるものでした。演奏後、感極まったように俯いてドラムセットを降りたチャドの背中越しに、デイヴがか細い声で言った「I love you, Taylor」の言葉。これはライヴのときメンバー紹介で必ずといっていいほど、デイヴがテイラーに言う言葉でした。ガチトーンで言うデイヴにテイラーはちょっと照れたように笑いながら、「I love you, David」と返すのが日常。ファンが囃し立てるとデイヴがドヤ顔で「悪いね、女子たち。テイラーは俺のなんだ(ドヤァ」と言うこともありました。相思相愛以上にお互いが絶対的存在だったデイヴとテイラー。そんな日常がもう戻らない寂しさはありましたが、デイヴはフーファイを始めたときのようにもうひとりではないのです。しっかりと肩を組み合った5人は表情も穏やかで、お互いを支え合いながらまっすぐに前を見ていました。
その後、カーテンコールで続々とステージに上った参加アーティストたちが、フーファイのメンバーに労うように声をかけていたのが印象的でした。この場にいる誰もが悲しみや寂しさ以上に、明るく照らされた光が最後まで強く輝く空間だったと思います。これまでテイラーと共に生きてきた時間は消えることはなく、ずっと彼らとともにあり続けてほしいし、これからもどのような形であれそれぞれに音楽という道が続いてほしいと願います。

■あとがき

レポというより、テイラーの思い出話が濃くなってしまいましたが、それぞれのドラマーさんたちの真摯な向き合い方があってこそのこの選曲、11曲だったと思います。デイヴの割当が的確で、仲のいい人たちだからか、的外れにまったくなっていないのがさすがでした。もし、各バンド、ドラマーファンの皆さんのお気を悪くしてしまう記載があったら申し訳ないです。でも、テイラーファンとして、参加してくださったドラマー各位にはとても感謝しています。
そして、出ずっぱりに近い形で6時間ステージに誰かしらいたフーファイメンバーの実力も改めて感じました。フーファイ時にもゲストとセッションすることは日常茶飯事でしたが、特にデイヴ以外の4人はマルチにどのアーティストにも馴染んで演奏するスキルがめちゃくちゃ高い。あのバンドにいると対応力が異常になるのかな…。もともと俺が俺がのメンバーたちではないこともあり、各アーティストをしっかり立てる形での演奏に、彼らの音楽センスとスキルを再確認したりしました。そして、フーファイ曲も毎曲変わるドラマーというかつてない状況にも、いつも通り(でもしっかりドラマーさんたちに合わせながら)演奏していたフーファイ。いくら各ドラマーさんがドラミングを寄せても、26年間のテイラーのクセは山のようにあったわけで、それにもかかわらずまったくブレない姿はめちゃくちゃかっこよかったよ!

※フルセット音源のみはこちらから(フーファイから開始時間を設定してあります。最初まで戻れば全アーティスト聴くことができます)


テイラーが亡くなってからこのトリビュート・コンサートの日まで、私自身も色々な感情を抱えながら過ごしてきました。正直なところ今も、ずっと一番に大好きなミュージシャンでありドラマーがこの世に存在しないということを信じることも、受け入れることもできていません。多分、このまましないのかもしれません。ただ、何をどうしたってドラムを叩いている大好きな彼の姿を見ることはもうできないのですから、考えてしまえばどうしようもない寂しさは勿論あります。でも、このトリビュート・コンサートでこんなにもたくさんの人に愛されている、そしてこれからも愛され続けるだろう彼を見ることができて、私は私の中で生き続けるテイラーと一緒に歩いていけると思えました。私の中に彼を見てきた長い時間があって、それが本当に膨大な量の音楽と記憶を残してくれていて、トリビュートを見ながら、このレポを書きながら止めどなく溢れてくるのです。彼のいる未来はなくても、彼が生きた時間をこれだけ長く見ることができたのは本当に幸せだと思います。これからも、事あるごとにこういう論文みたいな自己満足の長文を書きながら、私自身も、そしてたまたま読んでくださった方が彼がいた時間を思い出すきっかけになってもらえたらな、と思います。

唯一撮った演奏後のカーテンコール