東アジアの日本書紀―歴史書の誕生

東アジアの日本書紀―歴史書の誕生(歴史文化ライブラリー 2012/7/1
遠藤慶太 著)

古代国家が歴史を書き始めるとき、最初をどこから始めるかは大きな問題だった事でしょう。日本古代史の根本資料である日本書紀は、生まれた背景は既に切り離され、テキストとして独り立ちしています。本書は、日本書紀を歴史書が誕生した時代に置きなおし、東アジアとの関わりを軸に、書物として成り立つ過程を辿ったものです。東アジア、特に百済史書との切り離しがたい関係は興味深いもの。異文化が混じりあい、列島の自国史になるまでの展開を面白く読みました。


古代中国の天文学・暦学において木星(歳星)の対称に存在すると考えられた架空の天体を大歳と言います。約12年で天球を一周する木星の鏡像として大歳が考えだされ、この大歳の所在によってその年の干支が決まるのだそう。日本書紀における最初の大歳表示は、神武天皇即位前紀にあらわれます。神武紀元のもとになるこの記事は、日本書紀において神話の世界と歴史の世界をつなぐ結び目として存在します。ここから天皇の時間が刻み始められたからです。九州のイワレヒコ(神武)がヤマトへの東征を始めた甲寅(こういん)の年は紀元前667年。ヤマトに入って即位した辛酉(しんゆう)の年は紀元前660年に該当。もちろん現在では神武即位を歴史的事実と認める研究者はいません。

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