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国際金融制度改革の必要性11 ー 新しい国際政治経済モデル

国際政治経済モデルの限界

一方で、安全保障や政治が関わった国際的な話になると、モデルとしての限界が露呈している。破壊、復興による第二次世界大戦型の経済成長モデルは、すでに述べたとおり金融の発展によって限界に突き当たっており、別のモデルが必要とされている。戦争でなくても、自然災害は継続的にどこかで起こっており、別に人為的に破壊活動を行うという無駄なことをする必要もない。復興モデルは人為的破壊がなくても成り立つもので、為替取引を実需に限ることによって、破壊による生産力縮小、輸入需要の拡大からの通貨安、割安な投資先としての投資拡大という流れができそう。このあたり、経済学においては短期的な均衡モデルであるマンデル・フレミング・モデルに基づいて考えられる為に、復興の為の支出拡大がクラウディングアウトを通じて金利高をもたらし、それが更に為替水準に影響するという素早い調整作用の為に、復興の利益が金融に吸い上げられる一方で、コストが現地に残されるという非常に不均衡な仕組となっている。資本移動の自由によって、長期的成長の利益が全て短期的資本の移動による利益確定によって吸収され、現地の発展を大きく阻害することになっているのだ。つまり、中長期的な直接投資を含む国際金融モデルは現状存在せず、そのことが途上国の中長期的発展政策を打ち立てるのに大きな障害となっていると言える。そして、マンデル・フレミング・モデルでは資本移動の自由がその有効性に大きく作用すると言うことで、このモデルありきでIMFの構造改革路線が進められたという事がある。モデルを成り立たせる為の資本移動の自由というのは本当に必要なのか、という視点が求められるだろう。

資本移動の自由とは

それにはまず、資本移動の自由とは一体何を意味するのか、ということをしっかりと定義する必要が出てくる。実需に基づいた自由な取引にともなう資本移動は当然確保されるべきだろう。そこで実需とは一体何なのか、と言うことになる。実物商品の取引、つまりモノの輸出入は法人を含めて問題ないとして、金融商品についてはその性質ごとに取引対象を定める必要が出てきそう。まず、他国の銀行に預金口座を作ることをどう考えるか、ということだが、銀行口座は現地取引に不可欠であり法人も開設可能だが、一方で株式については個人のみが保有可能とすべきなので子会社というものの存在が認められず、当然銀行口座も外国法人そのものの口座となる。これによる本支店間の資金移動というのが、取引を伴わない為替の大きな物となりそう。この扱いについては、個人に於ける実需の扱いとともに後ほど考えたい。

債券について

金融商品としての債券については、現状、株式と社債の性格というのが余り区別されていないので、株式は個人、社債はある程度専門知識を蓄えた監督下にある法人が取引するという形で、個人が株式の信用力を判断する為の材料とするというやり方はありそう。総会1期は保有しなければならないと定める株式に比べて随時取引可能な債券は流動性が高く、銀行融資の金利の参考指標となるべきものともなる。個人がスポット的な個々の株式会社の信用・リスク情報についてそれぞれ追いかけるのはコストがかかりすぎるので、それは専門家による指標市場に任せ、個人はそれを参考に株式市場への投資判断の材料とする方が合理的なように感じる。公債についても、専門知識を持った人が市場形成をリードする方が市場の信頼性を高めると考えられるので、個人も購入可能であるが、金利の調整メカニズムを働かせる為にも、専門能力を基準に取引業者の監督条件をきちんと定めた上で、基本的には法人による取引とするべきかも知れない。しかしながら、それらをもとにした金融派生商品、つまりデリバティブについては認められるべきではないし、それを認めないことの方が国民経済的にははるかにメリットが大きいことはすでに述べたとおり。

実需としての法人貿易取引

法人が絡む部分としての貿易取引に関しては、取引成立時点で輸出側は自国通貨でその代金を確保でき、輸入側も相当のレートで自国通貨で支払いを行う、つまり外貨取引なしにお互い自国通貨のみで貿易ができる仕組にすれば、為替を絡めた債権債務というものが発生しなくなる。輸出決済証を銀行に持ち込んで換金するという形ならば、外貨残高に関係なく貿易取引も自国内で消化され、その量は物価水準と為替レートによって調整されると言うことになるだろう。問題はどの時点で取引が成立したとするのか、ということだが、それはレートの確定とは別の話なので、取引条件に応じた商品引き渡しが成立するまでは代金引き出しはできない、と言うことになれば良いのだろう。つまり、典型的には通関の処理が終わったという公式な連絡が入るまでは代金引き出しはできない、という第三者保証的な仕組があれば、貿易を妨げることもないだろう。実需のトレース方式についてはフィンテックが参入する余地が大きいだろう。つまり、取引成立をどの時点とするか、そして運賃や保険を含めた費用負担をどうするか、という事については様々な条件が考えられるので、中間業者を含めた責任分担・加重費用などによって仕組を整理してシステム化することに、技術の入り込む余地は大きくあると考えられるのだ。自由化が技術革新を主導すると考えられているが、実際には特に複雑な関係性においては縛りが多い方が技術的工夫の余地が広がり、技術の進歩につながると考えられる。このあたり、利益主導型の技術革新とは違った方向で金融の一般的利便性向上を図る技術革新を促進する仕組とすべきだろう。マネーロンダリングで闇に消える金が現実社会で環流するようになるだけでもその貢献度は計り知れない。

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