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もしもコンサートホールが100人の村だったら~SDGs達成のためにコンサートホールができること

以前、悲しいコンサートをなくすためにという文章を書きました。

何かに感動する本能は誰にでも備わっていて、その感動の表現の仕方は人それぞれでいいはずなのに、そうじゃない現実があって、私はコンサートホールの職員という仕事でそういう現実を変えたいと思っています。


いろいろな背景をもった人が来て、誰もが心地よく過ごせるように、場所を提供する側としてできること。

英国ではすでに多くの劇場で定着している「リラックスパフォーマンス」という考え方、文化×福祉の実践における福井での先輩方をはじめ、医療介護や教育分野で日々現場に向き合う友人、この企画を通して新しく出会った仲間にも助言を頂きながら、模索と実験を重ねる日々です。

SDGsのタイムリミットが迫るいま、あちこちで思い出したように「多様な社会」というスローガンが掲げられていますが、体感としてそういう社会はどういうものなんだろう、と考えてみました。

ちょっとナンセンスなようにも思いましたが、大事なことなので、私の住んでいるまちの「多様性」が反映されると職場のホールの座席がどんな感じになるのか、「世界がもし100人の村だったら」風に計算してみました。
※数学が苦手。データは原則として2018年度の坂井市統計を使用。


みくに未来ホール 全席359席(車いす席6席)

「未就学」であることを理由に、多くのコンサートへの入場が限られる人たち・・・4%

この人たちは、約14席にお父さんやお母さんと座っている。でも、中にはお父さんだけと来ている人、お母さんだけと来ている人、育ててくれている人と来ている人もいる。

65歳以上の人・・・26.1%

高齢者とされる人たちは、約94席に座っている。この数は4年前のものだから、今はもっと増えるかもしれない。そのうちひとりで暮らしている人は、9席に座っている。

身体に障がいがある人たち・・・4%

この人たちは、約14席に座っている。そのうち視聴覚・言語障害のある人は2席、肢体に障害のある人は8席、内臓など身体の内部に障害のある人は4席。年齢は子どもからお年寄りまでいる。

知的サポート、療育を必要とする人たち・・・0.8%

知的障がいや、発達障害によりサポートを必要とする人たちは、約3席に座っている。年齢は子どもからお年寄りまで。でも、これは「障害者手帳」や「療育手帳」の発給を受けている人たちだけなので、比較的障がいが軽いと見なされるが、実はサポートを必要とする人はもっといるはず。

生活保護を受けている人たち・・・0.02%

この人たちは、たった1席にだけ、もし気持ちや時間に余裕があれば座っているかもしれない。でも、もし4年前の「相対的貧困率」を考えるなら、憲法で保障されている「健康で文化的な最低限度の生活」を送るのがたいへんな人たちのための席は、一気に56席になる。

外国にルーツをもつ人たち・・・1.5%

日本で生まれたけれど、外国にルーツを持つ人。外国から日本に働きに来ている人。そうした人のための席は、約6席。

2席ずつ、中国、韓国・朝鮮、ベトナムにルーツをもつ人たちが座る。韓国・朝鮮にルーツのある人たちの中には、祖父母世代に福井に来て、福井で生まれ育った人たちもいる。ベトナムの人たちは5年前、5回のコンサートで1回だけ1席に座るくらいだった。

それ以外の人・・・約64%

残りの227席も、まったく同じ状況の人たちであるはずはない。いくつかの状況を抱えながら、1席に座る人もいるかもしれないし、統計が取れていない状況にいる人たちだっているかもしれない。


それなのに、普段のイベントでこれだけの肌感覚で「多様性」を感じることはできているでしょうか?

こういう風に集客数値目標を立て、広報アプローチしていく方法は、多様な社会を実現するためにけっこう有効なのではと思っています。

広報アプローチでの工夫の仕方についてはまた次回。

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