唐川恵美子(エミリー)|ほっちのロッヂ

福井県三国町育ち。じゃがいもが好きという理由でドイツ語を専攻し、学生時代はウィーンに留…

唐川恵美子(エミリー)|ほっちのロッヂ

福井県三国町育ち。じゃがいもが好きという理由でドイツ語を専攻し、学生時代はウィーンに留学。2016年に福井へUターン、坂井市・竹田地区で地域づくりの仕事に携わる。地域の中でアートが根づく「アーティスト・イン・ばあちゃんち」を主宰。ほっちのロッヂ・アートコーディネータ。

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医療 × アートの無限大の可能性を思い出そう

「なんで医療とアートが連携する必要があるんですか?」 私は2020年4月から、長野県軽井沢町にある「ほっちのロッヂ」というところで、在宅医療を中心としたケアの現場と隣り合いながら文化的な催しやプロジェクトを企画運営する、いわゆるアートマネージャーのようなことを仕事にしている。 見学に訪れる方や、学会などで出会う方によく聞かれるのが、冒頭に掲げた素朴な質問だ。 「えっ、むしろなんで一緒にやらないんですか?」 と、逆質問したくなる気持ちをぐっとおさえて、いつもしどろもどろ

    • ヒロシマ・ナガサキの経験から、実行力のある平和文化を考えるために

      前回の記事では「戦争を直接経験した人々がいなくなっても、その経験を受け継ぐことができるのだろうか」という疑問について、考えてみました。 今回の記事では、平和と文化について考えてみたいと思います。 * 私が平和と文化について真剣に考え始めたのは、学生の頃、被爆者の語り部活動をお手伝いしていた時でした。その活動の拠点はまちの学童や図書館が併設された公民館にあって、夏休みや節目の時期になると、語り部さんが読み聞かせや自身の体験を語るイベントを開いていました。 イベント後、小

      • 近代戦争は100年ごとに起こる?高校の先生が放った予言と記憶研究との出会い

        私の通っていた高校で、世界史の先生がある時言い放った自説。その先生によれば、17世紀の三十年戦争から数え、18世紀から19世紀のナポレオンの台頭とウィーン会議に終わる第二次百年戦争、言わずもがな20世紀の第一次・第二次世界大戦と、100年のスパンで戦争が引き起こされているという。 近代戦争の特徴をどう定義するか、その先生の視点がややヨーロッパ中心になっていることなどを脇に置いておくと、「なぜ100年か?」という疑問が、当時からずっと心に残っているのです。 * 私はこの1

        • 実はもともと歴史学者を目指していました。序。

          実はもともと歴史学者を目指していました。いや、80歳になったらまた研究を再開するつもりでいるので、正確には歴史学者を目指しています。ということを、最近知り合った人に話していませんでしたので、改めてまとめておこうと思います。 * 歴史学といっても、私の専門としていたのは「文化史」と呼ばれるジャンルで、一次史料をもとに新しく見つけた歴史的事実を記述する仕事というよりは、歴史をもとにした映画や文学、まちの景観や建築物、歴史証言などから、歴史のイメージを読み解く解釈側の仕事を志し

        医療 × アートの無限大の可能性を思い出そう

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        • 今月見た映画
          20本
        • 今月行きたい北陸のイベント・催し情報
          6本
        • 変わる時代のコンサートホール
          3本
        • アーティスト・イン・ばあちゃんち
          6本

        記事

          ゲシュタルト崩壊から論理的思考へ

          (執筆:2017年1月頃) センター試験の日はいつも雪が降りますね。でも今年はちょっと尋常じゃない気が。どうかみんな無事に1日目を迎えられますように。 高校時代は音大に入りたくて、学校の課題はすべて授業中と休み時間に終わらせ、帰宅後は5~6時間を練習に充てていた私。さすがに激務すぎて体を壊し、高3のGW明けから一般受験に切り替えたわけですが、勉強はその場しのぎでこなしてきた私ですから、問題文がゆらゆら揺れる、一文読むにも一苦労、マークシートにじんましん、など非常に苦しい受

          ゲシュタルト崩壊から論理的思考へ

          勝とうとするな。負けんぞと思え、という教え

          (執筆:2017年1月頃。当時執筆者は福井におりました) 福井にUターンしてきてから、何かと移住者コミュニティと新しく知り合う機会が多い。移住者のみなさんはきっと知らないであろう、「マイナーな分野で実は日本一」ブランドを誇る福井が、百人一首競技かるたというまたもマイナーな分野で「かるた王国」の二つ名を馳せていることを(ただし『ちはやふる』愛読者を除く)。 そんな王国にはかつて、さかんなところだと公民館ごとにかるた教室があった。私は小学校3年生で福井に転校して、学校でもらっ

          勝とうとするな。負けんぞと思え、という教え

          オリジナルであるために心がけている10のこと

          1、手足を動かすこととにかく現場の感覚を知る。足を動かし、一緒に作業し、世界の内部で共有されている不文律を体験してみる。これをサボったばかりに、うまくいかなかったことの方が多い。 2、「誰か1人」の話を聞くことすべての人がユニークで個別的な物語を生きている。その中で感じている幸せのあり方、工夫、課題と解決法を学び取る。その人のためになることを全力で考える。 3、情報を入れすぎないこと事前の準備として、似た業界の取り組み、すでに展開されているサービス、流行、業界の「あたりま

          オリジナルであるために心がけている10のこと

          8月はアジア・太平洋戦争の終結した季節。あなたは誰の目から戦争を見る?【ドキュメンタリー編】

          8月6日は広島、9日は長崎に原爆が落とされた日。8月15日は終戦記念日、多くのアジア諸国にとっては植民地解放と新たな戦争が始まった日。人間が最も残酷にならざるを得ない「戦争」という非日常空間を二度と経験しないために、あなたは誰の目から、どんな戦争を見る? 『ひろしま』(監督:関川秀雄、1953年) 原爆が落とされた日からたった8年でも、その時の記憶は風化する。広島の教職員たちがあの日を次世代に伝えるため、8万8500人のエキストラ、市民の協力のもと作られたフィクション映画

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          実際に弾いている!演奏シーンがとにかくすごい。必見・必聴の音楽映画6選

          『戦場のピアニスト』(監督:ロマン・ポランスキー、2002年) 中学生の時に映画館で観て、色々な意味で衝撃を受けた名作。ポーランドを代表する作曲家であり、生涯亡命を余儀なくされたショパンの美しいピアノ音楽が、ポーランドのユダヤ人が置かれた境遇と重なり、映画全体を印象づける。 物語のクライマックスで弾かれる命を懸けたバラード第1番はもちろん(モデルとなったピアニストのシュピルマンは、実際には「遺作」のプレリュードを弾いたらしい)、エンディングに流れるアンダンテ・スピアナート

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          ものは言いよう

          八方美人、一視同仁。 器用貧乏、多芸多才。 頑迷固陋、確乎不抜。 慇懃無礼、侃々諤々。 漱石枕流、朝過夕改。 安歩当車、日進月歩。 臥薪嘗胆、春宵一刻。 四角四面、知崇礼卑。 大器小用、大器晩成。 火中取栗、多情仏心。一飯之恩。陰徳恩賜。 愛別離苦、一樹之陰。 雲外蒼天、万目荒涼。 自由奔放、孤影悄然。 大胆不敵、豪放磊落、壊れた民主主義、 苛政猛虎。弱肉強食。新たな夜明け。 巧言令色、 ものは言いよう。 (詩作)2019.9.26 (参考

          3月8日は《国際女性デー》:今日のわたしたちをつくった先輩たちに感謝をささげる、たたかう女たちの映画8選②1960年代~現代まで

          3月8日は「国際女性デー」。女性の権利を獲得するための闘いの歴史をたたえ、今日もまだ絶えない性差別被害に思いを馳せる日です。いまも昔も、世界のどこかでたたかっている女性たちと時代を共にしながら、私たちも力をもらう、そんな機会にしてみては。 トップ画像:映画『ドリーム』より (C)2016 Twentieth Century Fox 『ドリーム』(監督:セオドア・メルフィ、2016年)黒人の公民権運動が盛り上がる1960年代、米国。高度な知識とひらめきをもつ有能な3人の黒人

          3月8日は《国際女性デー》:今日のわたしたちをつくった先輩たちに感謝をささげる、たたかう女たちの映画8選②1960年代~現代まで

          3月8日は《国際女性デー》:今日のわたしたちをつくった先輩たちに感謝をささげる、たたかう女たちの映画7選①19世紀~1950年代まで

          3月8日は「国際女性デー」。女性の権利を獲得するための闘いの歴史をたたえ、今日もまだ絶えない性差別被害に思いを馳せる日です。最近は、女性にサービスをする「レディス・デー」と混同されがちになっていますが、権利の平等、機会の平等、セクシュアル・ハラスメント、性暴力に立ち向かってきた女たちの影の歴史を、あらためてひも解く機会にしてみては。 タイトル画像は、女性初の米国最高裁判事に選ばれる際の公聴会でスピーチをするルース・B・ギンズバーグ(撮影:R. Michael Jenkins

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          芋のような人でありたい宣言

          私は物心ついたときから、じゃがいもが大好きだ。小、中学生の頃は、母にじゃがいもを箱買いしてもらって、学校から帰ったら、レンジでチンしてマーガリンをたっぷり落としたじゃがバターを3つ食べるのが習慣だった。大人になった今でも、ここ一番に頑張った時は、フライドポテトを食べるようにしている。 そんな私の2022年の目標は「芋のような人である」ということだ。 まず、じゃがいものここがすごい。①個性豊か。 じゃがいもは、どう料理しても美味しいのだ。しかも料理法によって、さまざまな個

          ❝アートは役に立つ❞ へのささやかな反抗と、❝役に立たないアート❞ へのささやかな擁護

          1、アートは役に立つ論が独り歩きすることへの違和感と、ちょっとした苛立ちデザイン思考などと並べて論じられるアート思考とは「ゴールを設定せず、プロセスを重視する」点で他と区別されます。課題発見から解決策までを視野に入れるデザイン思考とは違い、アートには特に「当たり前とされていることに問いを投げかける」という役割を期待されている節があります。 この役割は、まぎれもなくアート活動が生み出すインパクトの一側面であるし、アーティストの視点が創作活動以外にも応用できることを強調すること

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          1月27日は《ホロコースト犠牲者を想起する国際デー》:過去の過ちから何を学び、今にどう生かすかを考える映画7選

          1月27日は、国連が定める国際記念日「ホロコースト犠牲者を想起する国際デー」ということで、今回はナチスドイツ時代を取り扱った映画をご紹介。実在した人物をもとにした映画から、自分とは関係ないと思っている過去に何を学ぶかを教えてくれる映画まで、厳選してみました。 『アイヒマンを追え!ナチスが最も畏れた男』 (監督:ラース・クラウメ、2015年)アウシュヴィッツ強制収容所をはじめとする迫害施設に、ユダヤ人移送を指揮したアドルフ・アイヒマンを執念で追い続けた検察官、フリッツ・バウア

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          年末年始、みんなで観たい《美味しい映画》まとめ

          家で過ごす時間もたっぷり取れる年末年始、家族や友人同士、もちろん1人でも観て楽しく、お腹が減っちゃう映画5選。くれぐれも深夜に観ないよう、ご注意を。 『レミーのおいしいレストラン』 (監督:ブラッド・バード、2007年)一流シェフを夢見るネズミ・レミーが、ドジな見習いのリングイニと共に厨房をのし上がる物語。忙しい厨房の様子も楽しいし、原題のラタトゥイユが出てくる場面では、野菜をじっくりコトコト煮込みたくなる気分に。 親子で楽しい度:★★★★★ 吹き替え版もあり! おなかが

          年末年始、みんなで観たい《美味しい映画》まとめ