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タロット 大アルカナ - 2番 THE HIGH PRIESTESS -

THE HIGH PRIESTESS(ザ・ハイ・プリステス)/ 高等女司祭(こうとうおんなしさい)

このカードの向かって左側に『 B 』と刻まれた黒い柱が、右側に『 J 』と刻まれた灰色の柱があります。この柱は古代エルサレムでソロモン王が建立した神殿 ─ エルサレム神殿 またはソロモン神殿 (第一神殿) とも言われる ─ の入り口に立っていた、青銅の円柱『Boaz / ボアズ』と『Jachin / ヤキン』を表しているようです。

エルサレムとは、現イスラエルとパレスチナ地方にまたがる世界最古の都市のひとつで、1981年「エルサレム旧市街とその城壁群」として世界遺産に登録されました。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教それぞれの聖地であり、その始まりは紀元前4000年頃に築かれたと言われます。

紀元前1000年頃、ヘブライ王国2代目ダビデ王により古代ユダヤ帝国の聖都となり、3代目ソロモン王によってこの神殿が建てられました。その後イエスの処刑と復活の地としてキリスト教の聖地となり、さらにその後イスラム教の聖地となります。

ところでヘブライ語聖書=ユダヤ教の聖書正典(キリスト教側からいう旧約聖書)によると、この神殿の中には "契約の箱" が収められていたとか。

「エルサレム旧市街とその城壁群」が世界遺産に登録された同年の1981年には、アメリカの冒険映画インディ・ジョーンズシリーズ『レイダース / 失われたアーク≪聖櫃≫』が大ヒットしています。「失われたアーク≪聖櫃≫」とはモーセの十戒の書かれた石板を納めた「聖櫃・契約の箱」のことです。(余談ですが、こちらも機会があればまとめたいと思います。)

タロットカードに話を戻し、次はこのボアズとヤキンの柱の間に吊るされた垂れ幕のような布を見ていきます。この布には、黄色い皮に包まれた柘榴が描かれています。柘榴(ざくろ)は他のカードにも度々でてくるシンボルですが、カードの特性によって繁栄の象徴、また女性の象徴としてギリシャ神話の中で、地上と死者の国を行き来する女神ペルセポネとその母、女神デメテルと関連付けられているようです。

デメテルは豊穣の女神です。ペルセポネ-(コレ-)はデーメーテールの娘ですが、野原で花を摘んでいるとき大地が避け、そこから現れた黒い馬に乗った冥府の王ハデスに冥界へと連れ去られてしまいます。ペルセポネーが冥界のザクロの実を食べてしまったことから、冥府の王ハデスの妻となり冥府の王妃になるというこの神話はよく知られているかもしれません。

そしてカード中央に座す女司祭は水色の衣をまとい、衣服のその裾は白い飛沫を立てて流れる水のように床へ流れ落ちて細長い三日月を絡めとっています。女司祭のカードは月と関係があるので、これは月の引力に影響を受ける潮の満ち引きを表していると考えられます。柘榴の垂れ幕のむこうの景色は、女司祭の装束と同じ水色の空と静かな水面が広がっています。このカードの良い意味としては『冷静さ、叡智、神秘性』を、他方の意味では『行動する必要性があり、その叡智を他者に惜しみなく与える』という状態を表します。もっとも良くない場合では『冷静では無い状態、感情が揺れ動く、ヒステリー』というような状態を表します。

女司祭の胸には、四つの線の長さが等しい十字架が、冠はエジプト神話を彷彿とさせます。十字架は正教会(ギリシャ正教とも言われる。初代協会、初期のキリスト教を表す)を、冠はエジプト神話の女神イシスや女神ハトホルが被っているような、牝牛の角の間に太陽の円盤をのせた冠に似ています。

女神イシス(Isis)は、玉座の守護者、魔術の女神という面を持っており、中世ヨーロッパでは魔女の祖とされることがあったそうです。一方ハトホル(Hathor)は美と豊穣の女神でギリシア神話のアプロディーテ-に相当するとかんがえられますが、デーメーテール、ペルセポネー、アプロディーテなどの女神たちが持つ特性や名は、時代や地域によって様々のようです。

最後に女司祭の懐に「TORA…?」と書かれくるくると巻かれた紙が抱かれていることについてですが、これはユダヤ教の聖書『 Torah 』(トーラー)のように見えますが、最後のひと文字はベールで隠れています。

タロットにはこのように、ユダヤ教、キリスト教、ギリシャ神話、エジプト神話など様々な象徴が組み合わされています。
しかしこのことは、西欧やその周辺の大陸では国や地域を超えて宗教や文化が行き来し、互いに影響を与え合って来たという歴史的事実を思えば、あまり不思議なことでは無いのかもしれません。

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