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妖精トムの詩

妖精トムは目を閉じた。

外は雨混じりの風が吹きすさび、風の子たちが大喜び。

妖精トムのおうちはどくだみの葉っぱを縫い合わせて作った草の家。

強い風が吹くと、空を飛んでいるみたいに揺れる揺れる。

あぁあ早くお日様が戻らないかな。

日なたぼっこしながら、得意の草笛を吹きたいな。

僕の草笛で蝶たちが踊るのさ。

あのきれいな羽根をひらひらさせて、しあわせの粉を振りまくよ。

なんて素敵な踊り子たち、なんて綺麗な魔法の粉。

僕の草笛はしあわせな音色。

るーらーるー。るーらーるー。


歌いはじめた妖精トム。

その歌声を聞きつけて、風の子たちが仲間入り。

ひゅーひゅーひゅー!僕らも音楽大好きさ!

きれいな音色は僕たちと

どこまでも一緒に連れていくよ!

すべて音でできてるのさ、

ひゅーらーるー ひゅーらーるー!


葉っぱの屋根のすき間から、

風の子たちの歌声を聞いた妖精トムは嬉しくなって、顔を出した。

ひゅーらーるー、るーらーるー!

君たち素敵な唄歌い!

お日様もきっとびっくりして、

いつもよりすこし暑くなるよ!

君たち風の子、ひゅるひゅる吹いて

みんなに歌声届けておくれ!

ひゅーらーるー、るーらーるー。


風の子たちは笑い出す。ますます強く吹いていく。

妖精トムさん、妖精トムさん、

僕らの素敵な草笛使い!

君がそんなに言うのなら、

願いを叶えてあげましょう!

ひゅーらーるー、ららひゅーらーるー!


風の子たちが舞い降りて、妖精トムの手を取った。

あっ!

と言う間に連れ出され、

妖精トムは空を飛ぶ。

これは大変、風の子さん!

僕は素敵なおうちにいたいんだ!

あったかあまーいはちみつを

一杯やってるとこだから、

どうかおうちに帰してよ!

風の子たちが笑い出す。

これは失礼、トムさんや!

僕たち同じ場所にはいられない!

きっと次にたどり着くその先で

新しいおうちが見つかるよ!

ひゅーらーるー、ひゅーらーるー!

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