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おかえり、さよなら

8月8日は、母さんが亡くなって50日の日だった。


うだる暑さの中、実家に母の魂を閉じ込めるお祭りが行われた。
この祭事を終えると母さんは神さまになって、僕たちを見守る存在になるらしい。

どこか悲しい気持ちだった。
これから自分を見守ってくれる存在は、母さんではなく神さまなのだと感じた。
この世にもういない以上は仕方のないことだけれど。



祭事の最中、蝉の声があまりにもうるさかった。
宮司さんの祝詞は何も聞こえなかった。



この感覚を知っている。
5月30日、もうひとつのさよならの日。
夢の国のそばで聞いた、さよならの音。

金属を殴るような音、ペストマスクのフード。
銀テープとピアノの音。真っ白な衣装。
蝉の声は、さよならの合図だった。


母さんの魂は実家に戻ってきた。
母さんはとうとう神さまになった。



僕の大嫌いな夏の、唯一大好きな夏のもの。
入道雲がとてもきれいだった。
空を見上げた僕のそばには、季節外れの薔薇が咲いていた。

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