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「顧客愛」ってなんだ?

こんにちは、アカウントエンゲージメントチームの佐野と申します。
アカウントエンゲージメントチームは、いわゆる「営業」の役割を持っているチームですが、広くお客様の課題をお聞きして一緒に課題に向き合い続けることでお客様との関係性を紡ぐ役割に重点をおいていくため、「お客様=アカウント」と「関係性・絆=エンゲージメント」を創るという意味合いで、アカウントエンゲージメントチームと名付けています。

さて、本日はCXM(顧客体験マネジメント)やEXM(従業員体験マネジメント)を進める上で、非常に参考になる本のご紹介をさせてください。詳細はぜひ本でお読みいただければと思いますので、あくまで触りだけのご紹介で恐縮ですが、ご参考になれば幸いです。

『「顧客愛」というパーパス NPS3.0』

ベイン・アンド・カンパニー フェローのフレッド・ライクヘルド氏を中心に書かれた本書は、前著『ネット・プロモーター経営』以後のNPS®(以下、NPS)のアップデートがまとめられた最新刊です。

ちなみに、NPS(Net Promoter Score ネット・プロモーター・スコア)とは「あなたはこの商品やサービスを親しい友人や知人にどの程度おすすめしたいと思いますか。」という質問に対して回答者が「0~10」の11段階でスコアを付け、9,10点をつけた人は「推奨者(promoter、プロモーター)、7,8点をつけた人は「中立者(passive、パッシブ)、0~6をつけた人は「批判者(distracter、デトラクター)という3つのグループに分けて、9,10点をつけた推奨者の割合から0~6点を付けた批判者の割合を引いて算出するスコアのことで、ロイヤルティ指標と呼ばれています。

ライクヘルド氏の初期の著書『究極の質問』で解説されている、NPS(ネット・プロモーター・スコア)を計測することをNPS1.0とすると、『ネット・プロモーター経営』ではスコアを計測するだけではなく企業・サービス・商品のプロモーター(推奨者)を作り出す仕組みそのものをNPS(ネット・プロモーター・システム)と定義し、NPS2.0としました。そして今回のNPS3.0では、仕組みから生まれたプロモーターによって得られた収益と繋げて考えるプロモーター獲得成長率(Earned Gross Rate)が提唱されています。

また本書では、多くの人々が共有していると思われること・目標として「意義と目的に導かれた毎日を送りたいということーこの世界をより良き場所にしたいという願い」に言及して、この目標への最も確実な道は、「自分に関わる人々の生活を豊かにすること」だとしています。

一般的には、この目標は漠然として、緊急でもなく、測定が困難です。
しかしながら、企業組織としてNPSを活用し、従業員一人ひとりが人生を豊かにした総和(推奨者の数)から悪化させた総和(批判者の数)を差し引くという評価を厳格に行えば実現できる。顧客の生活をより良くする、そのために従業員は一生懸命に取り組みを行うことで、正しい生活を送ることができるようになる、と解説しています。
NPSを正しく設計して導入すれば、NPSは組織のネット・パーパス・スコアになり、パーパスの達成に向けた進捗度合いを測れると言及しているのは、大変興味深いです。

「己の如く、汝の隣人を愛せよ」という黄金律

本書は、企業の第一の存在意義(パーパス)は「顧客の生活を豊かにすること」と「大胆な主張」をしています。魅力的に見える様々なパーパスがあるが、企業が常に勝利するための目的は1つしかないと言い切っています。

多くの企業は顧客中心に変わろうとしていますが、とはいえ企業の第一のパーパスを利益としている企業はまだまだ多い状態です。それは、財務情報が監査に耐えうる最も信頼性の高い情報を提供するからで、組織、統制システム、ガバナンス・プロセスはすべて利益中心という前提に組み立てられてきているからです。

しかし、今日の成功企業(アップル、アマゾン、T-モバイルなど)は、顧客中心の考え方を事業運営にうまく組み入れて来ています。各社のリーダーたちは、すべてのステークホルダーの利益よりも、顧客の利益を第一に考えるように従業員たちを刺激してきたと言われています。

NPSを活用することで、企業は顧客のパーパスに対する達成度合いを測定できる。NPSは顧客が正しい企業を選ぶだけでなく、求職者が自分に最適な職場を見つけるためにも役に立つ。NPSの重要な役割は、リーダーが顧客中心の文化をつくり育てられるように、顧客の生活を豊かにするという企業の第一のパーパスの進捗度を評価するフレームワークを提供すること。

本書では、NPSは単純にスコアを測定して終わりの指標ではなく、顧客も従業員も豊かになるための指標として活用するものであると、改めて定義しています。

上記のような定義の前提となっているのが、「己の如く、汝の隣人を愛せよ」という黄金律です。ここでいう愛とは、「ある人のことを心から大切に思うあまり、その人を心身ともにより幸福にできることが、自分自身の幸せな気持ちにつながる状態」と定義されています。

この愛を、顧客にも従業員にも感じてもらえているかどうかを数値化するのがNPSスコアであり、相手が「本当に自分のことを思って行動してくれている」と心から思ってもらえるように組織として取り組むことがNPSシステムであり、取り組みを通じて顧客も従業員も正しい生活が送ることができ、パーパス達成に近づくと考えられているのです。

黄金律はあくまでも宗教的な考えであって、ビジネスと関係ないと思う方も多いかもしれませんが、本書で紹介されるNPSリーダー企業は黄金律の模範であり、成功も収めていると例示されています。
そして、NPS3.0では概念的な解説だけでなく、財務諸表とも連動して考えられるプロモーター獲得成長率の発見に言及されていることが、前著までとの違いです。

プロモーター獲得成長率(Earned Growth Rate:EGR)とは

プロモーター獲得成長率は、既存顧客が再び来店したり、友人を連れて来たりして発生する収益の伸びを測定するものです。企業の成長は、2つの異なる売上の合計で表されます。1つは既存顧客からの継続的な売上と既存顧客からの紹介や推奨などによる新規顧客の売上。もう一つは広告宣伝や販促などマーケティング活動による新規顧客の売上です。この2つの売上を分けて成長を見るために、EGRでは2つの要素に分けています。

1つ目の要素は「売上継続率(Net Revenue Retention :NRR)で、既存顧客の売上を前年費で維持できているかを計る指標です。NRRは、既存顧客の売上増加と売上減少・既存顧客数の減少が含まれています。SaaS(サービス型ソフトウェア)業界を筆頭に実際に使われている指標で、130%を超える上場企業は110%を下回る企業の倍以上の評価がされることがある数値です。

2つ目の要素は「プロモーター獲得型新規顧客売上(Earned New Customer Revenue:ENCR)で、既存顧客の紹介や推奨などによって獲得した新規顧客の売上のことです。新規顧客全体のうち、広告宣伝や販促などのマーケティング活動で獲得した顧客と分けて算出します。

上記を踏まえ、EGRは「EGR=NRR+ENCR-100%」で算出されます。すべての割合は期初の売上高を基準に算出されるもので、NPSの取り組みで生み出した推奨者による事業貢献を財務諸表の数値と紐づけて考える方法として今回提唱されています。

事業によっては、すべての要素を算出するのが難しい場合もあるかもしれませんが、NRRに関しては、既存顧客からの今期の売上高を、前期の売上高合計、つまり全顧客からの売上高で割るというシンプルな方法で算出できるので、NPS向上によるビジネス成長へのインパクトを見る1つの方法として注目して良いのではないでしょうか。

溢れる顧客愛をどうする?

本書の中でライクヘルド氏は「顧客を愛してくれる企業と付き合うと、人生はそれまでよりもずっと楽しくなる。」と語っています。

今回気付かされたのは、ロイヤルティ指標であるNPSは、顧客の企業への愛着を測っているようで、実は企業の顧客への愛を測っているのだということです。

各企業で溢れている顧客愛が余さずに顧客に届き、どのように評価されているのかを可視化しているのがNPSです。企業から顧客へ向けた愛のリアクションとしてのスコア、顧客への愛が届いた結果としての評価としてNPSスコアをみてみると、もっとできることがあるかもしれないと前向きに捉えていただけるのではないでしょうか。
顧客や従業員をもっと愛していい。しかめ面を笑顔に変える取り組みが増えるように尽力していければと思います。

一貫して、顧客愛について書かれている本書は、文字通り「愛」に溢れた内容になっています。弊社も本書に学びを得て、顧客愛の深い取り組みを皆さまと一緒に進めていければと考えております。

そして、顧客愛の数値化やビジネスとの繋がりを徹底的に科学したい方、顧客愛や従業員愛に溢れるクライアントと一緒に仕事をしたい方、ぜひぜひカジュアルにお話できれば幸いです。

ネット・プロモーター® 、ネット・プロモーター・システム® 、ネット・プロモーター・スコア®及び、NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。
eNPS℠はベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの役務商標です。


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