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名前を大切にしたい

私は改名経験がある。
名前は1回、苗字は2回変わっている。

どちらもそこに私の意思はなく、そもそも記憶のない幼少期の話だったり、家族間の話し合いの結果気づいたら変わっていたり。


この先、最初に投稿した記事で触れた生い立ちの話に通じる自分語りをします。
長男である兄が亡くなり、入れ替わりで私が生まれたことを前提に書いていきます。


名前が初めて変わった時の話


生まれた時に付けられた名前は、亡くなった兄から一文字を取っていて響きも似ていた。

漢字2文字、読み仮名4文字。
今の名前の漢字をそのまま訓読みにした名前で、今は音読みの名前になっている。

当時の名前の最初の2文字を取って、親戚からは「ヒーロー」と呼ばれていた。

兄が亡くなった後に高齢出産で生まれた境遇も相まって、なんだかよく分からないままやたらととても良い扱いをされて育った。
それこそヒーローのようだと言われ、言葉の意味は理解していなかったけれど、なんとなく特別扱いされていることだけは感じていた。

1歳になる頃に「名前が長くて呼びづらいから」という理由で、同じ漢字で音読みの今の名前に改名された。
兄と同じ響きの名前だったから、呼ぶ度に思うところがあったんだろうなと思う。他の兄弟も4文字だし、長くて呼びづらいことなんてないはずなんだろうけれど。

今でも親戚には「ヒーロー」と呼ばれることが多く、今の名前に慣れている分いつも不思議な気持ちになる。
私は私の家族にとって、ヒーローになれているんだろうか。なれていないな。

苗字が初めて変わった時の話


小学5年生のある日、祖父母と母親に呼ばれた。

「来月から〇〇くんはじいちゃんの子供になるから」
「ママとパパの子供なのは変わらないけど、これからは形としてじいちゃんばあちゃんの子供になるの」

というようなことを突然言われた。
子供の僕はもうパニック。意味が分からなかったし、形としてってなんなんだろうと。

それでも私は当時から家族の為であるならという気持ちが強く、理由は分からないまま特に質問もせず応じることにした。
何が起きているのかは分からないけど、それで物事が上手く進むのであれば別に良かった。

手続きが終わり次第、私はそれまでの苗字ではなく祖父母の苗字、つまりは母親の旧姓を名乗ることになった。
学校の先生にはきっと説明がいっていたのだろう、特になにもなかったが、友人達からはひたすら質問攻めにされた。

「離婚したの?」
「捨てられたの?」
子供は本当に残酷なので平気でこういうことを言ってくる。私も子供だったんだけど。

「違うよ」
「なんでなんだろうね」
自分でもよく分かっていなかったからそう答えるしかなくて、捨てられたわけではないけど聞かれる内に軽んじられているんだろうなって気がしてきていた。

結局理由はなんとなく聞けず。
聞けば説明してくれたのかもしれないが、聞くと親を困らせてしまう気がして聞けずにいた。

卒業アルバムの寄せ書きのページには、友人からのメッセージが変わった後の苗字で書かれていることに違和感があった。

苗字が元に戻った時の話


そのまま小学校を卒業して中学へ。
他県の全寮制の中学に行ったのだが、中学2年生の頃に母親から寮へ電話があった。

「やっぱり〇〇くんは私達の子供だから、じいちゃんの養子から抜けてもらうね」

あ、へぇ 分かった。
なんか適当な返事をして、手続きが終わり次第また両親と同じ苗字に私は戻った。

最初に苗字が変わった時と同様、周りの友人達からはなんでなんでの質問攻めだった。聞かれても私にも分からないし、そんなの私が一番知りたいのに。

夏休みになって地元に帰った際、祖父母と一緒に住んでいた家とは違う家に帰ることになった。

祖父は地元で少し有名な資産家で、遺産が私に相続されるようにと私は祖父の養子に入ることになったのだが、祖父母と両親の間でなにかしらの仲違いがあったようだった。
そもそも遺産の話が絡んでいたことを私はこの日まで知らなかった。それでもまた両親と同じ苗字になった喜びが大きくて、謝る母親に特に怒り等は感じなかった気がする。

それまでに住んでいた大きな家とは違い、小さな古い家になったけれど、祖父母から離れられたことが私にとっては嬉しかった。


結局祖父母が死んだ後の遺産云々の話はよく分からないまま。聞けば教えてくれるだろうが、別に聞きたいとも思わない。

周りの都合でコロコロと名前が変わって、その都度周りからの反応や変化にショックを受けては自分のことを蔑ろにされている気がしていたけれど。
それでも今のこの名前を私は気に入っている。いまだに呼ばれる名前はその人と関わっていた時期によって違う。
まだ私は自分の中で消化しきれていないのもあってふとした時に我に返って複雑な気持ちになるけど、自分の名前を気に入っているという事実、今はそれだけでいい。

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