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Phase 4 深く(不覚)…深い、。空と海の境界線にて。

2018年、6月。

『 本機 …は、…     …へ、着陸を試みましたが、…悪天候のため…  へ、引き返します。』

__私の目の前に座る夫婦らしき二人のうち、男性(旦那)の方が “チッ…” と舌打ちをした。

不安定に揺れる機内は、機長のアナウンスと同時に、ざわつくため息に包まれた。

久し振りのフライトで具合が悪くなっていた私は、そんなざわめきを閉じ込めた、機内のマイテリトリーにある小さな窓から、ぶ厚く地上を覆う雲を怨めしく睨みつけていた。




その日、夜。

私は、とある港の船着き場にいた。深夜出港する船に乗って帰るルートに変更したのだ。(というより、余儀なくされたという方が正しい。)

この大型客船(フェリー)は、午前0時をまわる手前に出港し、各所に寄港しながら、朝8時ごろには私の地元へ着く。

“ とにかく、船に乗り込んだらじっくり休もう…疲れた ”




その日、巻き戻す。

まさかまたここに戻ってくるとはね…

船着き場へと辿り着く数時間前、私はもと来た道を引き返すが如く、再び出発地へと降り立っていた。四の五の言う間も惜しみ、飛行機の払い戻しを済ませた私は、次に向かう途中の商業施設内で軽い食事を摂った。それからフェリー発券が開始される迄の余白を埋めるように、プラプラとそこで時間を潰し、ようやっと船着き場へと辿り着いたのだ。

いくらバックパッカーひとつの身軽さとはいえ、港へつく頃には流石に…長時間の移動に疲れ切っていた。

船着き場の発券所には、もう数名の客が列んでいた。“ この人たちも引き返し組なのだろうか ”頭の中で、そんな事を考えながら私も列に並んだ。


_久し振りの、潮の匂い、振動、重油の匂い。

船は、ボーーーーー…と、合図し、“ いってらっしゃい ”と目配せをする灯台の横を、ゆったりと進みはじめたのだった。___





___ぼんやりした眼で、何処までも続く、色の凝縮された空と海の境界線を…煌めく波や星々の瞬きにより、辛うじて感じていた。

こころはざわついている筈なのに、疲れからか…気づけば、眠りについていた___


___深く(不覚)… 深く。



Next Phase…




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