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風。、

風、それはここちよい。

空をどこまでも駆け抜けるし、水面すれすれをよこぎって海や川のキラキラを独り占めできるんだ。

どこへでも行けるし、きみのご自慢の髪の毛にも簡単にさわれる。お気に入りのスカートだってめくれるよ。3つ目の角のおいしいパン屋さんの看板を目立つ様に揺らしてるのだって、あの軍人さんたちがいる基地の旗を格好良くはためかせてるのだって僕さ。

ほら、思い出して。この間あの公園のブランコを揺らしたのだって僕さ、おばけなんかじゃないよ、すごいでしょ。僕って力持ちなんだ。そうそう、鳥たちだって僕のおかげで飛べるしね。

みんなみんな、全部。みんな。

僕、それはすばらしい。
風、それはうつくしい。

風、それはこの世界中のやさしさみたいな存在。それは大胆に、さり気なく。当たり前のように。

ほら、今あなたの頬をつたう涙を拭ったのも彼ですよ。

風は心地好くあなたを包み込む。涙は乾いたのではなく、彼が拭ってくれたのです。

あなたは独りぼっちなんかじゃありません。

いいですか、寂しくなったら風を感じてみてごらんなさい。そして、そっとふれてごらん。

僕も独りじゃないんだと、風も喜ぶことでしょう。

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