帰るところ。
土曜日、朝。
遅く起きてリビングに下りると、部屋中明るい光に包まれていた。
長男は、自らトーストしたパンにハムを広げている。
え、チーズもいっしょにのせるとか、バターぬるとかしないの……ロースハム薄切り4枚入りをただのせて食べるのがいいらしい。
とりあえずお湯を沸かしてコーヒーをいれ、クッキーを齧りながら「777」をいっきに読み終えた。
あー、面白かった!
伊坂幸太郎ならではのスカッとした結末!
登場人物たちのキャラクターが、やっぱり愛おしい。(みんな殺し屋だけど)
日曜日、朝。
まだ夜の続き。
5時のタイマーで炊き上がったごはんで、朝と昼のおにぎりを作る。
長男は青菜ふりかけと、おかか。
次男は海苔巻き塩むすびと、鮭。
今日も暖かい予報だし、先週の寒さを乗り越えたから、余裕でしょ、とかまえていたら…外は凍っていて慌てて厚着にする。(下に仕込むので、やりなおし…)
でも、日が昇るとぐんぐん気温は上がって、汗ばむ陽気に。
そういえば、庭に植えたチューリップとムスカリ、ひとつずつ芽が出てしまっているのを見つけた。どうしよう。
今日も朝早くから半日以上を外で立って過ごして、疲れているかといえば、もちろんそう。
でも身体の疲れ以上に、どうにもならないようなあれやこれ、理不尽に思えること、嫉妬や不安、そんな感情を持ち帰ってきて、いつものごとく気持ちが疲れている。
慣れた、と言ってしまいたいけれど、その小さな火種が家の中での不機嫌につながってしまうから、よくないよくない。
自覚しているから、外に出る。
夕方、買い物袋に返却する図書館の本を入れて家を出る。
期限の切れそうな図書カードを更新し、何も借りずに図書館をあとにする。
今日は身軽なまま、スーパーへと歩いていくのだ。
途中、まだ大好きなパン屋さんがあいていたので寄ってみる。シュトーレンあったら買おうかな、と突然思い立ったから。
すぐにショーケースの上に見つけたけれど、値段を見て今日はあきらめ、代わりにカヌレをふたつと、ひとつだけ残っていたさつまいもとクリームチーズのベーグルを買う。
カヌレはひとつずつ素朴にラッピングされていて、ベーグルは持つとずっしりと重くて、うれしくなる。
カヌレは、明日会う友人へのプレゼントに。(うれしい明日。)
スーパーを出て、道を引き返す。
もう走る車にはライトがつき、パン屋さんの店頭には、あたたかなオレンジ色のライトと、ささやかなクリスマスの電飾が灯っていた。
空は雲ひとつなく、淡くグレーがかったパステルカラー。
そこに、燃えるようなオレンジ色の尾を引いて飛んでいく飛行機を見るのが好き。
あっちに、こっちに、飛んでいく、彗星みたい。
子どもたちが小さいころ、隕石だー!とよく言っていたっけ。
同じ方角に向けて飛んでいくのは、鳥の群れ。
あぁ、みんなどこか目的地に向かって飛んでいっているんだなぁ、とぼんやり思う。
だんだんと薄暗くなっていくパステルカラーの中、ぽつぽつと家に向かって歩く。
私の帰るところ、と思いながら歩く。
ごはんだよ!
と明るく言えたから、今日も自分に合格点。
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