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ヴァニタス「人生の空しさの寓意」

中川つよし先生の講座の後半は、
ヴァニタスに出てくる楽器の解説でした。


ヴァニタスとは、
「人生の空しさの寓意」を表す静物画であり、豊かさなどを意味するさまざまな静物の中に、人間の死すべき定めの隠喩である頭蓋骨や、あるいは時計やパイプや腐ってゆく果物などを置き、観る者に対して虚栄のはかなさを喚起する意図をもっていた。(Wikipediaより)


頭蓋骨=死の象徴
時計、蝋燭=時間の経過
空のコップ、貝殻=虚ろさ
宝石、硬貨=現世の権力、財力
剣=武力、本=教養(武力も教養も死の前では無意味)
楽器(音がすぐ消える)=すぐ消えるものの象徴


死の前には、
財力も、知力も、権力も役に立たないよ、

死後の世界、永遠の命に目を向けようよ、

というテーマをもったヴァニタス画は、
静物画に見えて、実は宗教画なのだそうです。
(プロテスタントは偶像崇拝禁止なので、
プロテスタントの国では宗教画が描けなくて、
画家達が静物画に見せかけて描いた絵画がヴァニタス画なのだそう)


個人的に
これらの解説を聞きながら思い出していたのが、
老子の「無用の用」のくだりでした。

三十本の(車輪の)矢は一つの轂(こしき)を共有している。轂の中の空洞があることによって、車としての働きがある。

粘土をこねて器を作る。器の中の空洞があることによって、器としての働きがある。

戸口や窓とする穴をあけて部屋を作る。部屋の中の空間があるからこそ、部屋としての働きがある。

それゆえに形あるものが役に立つのは、何もない無の部分が役割を果たすからである。


「空のコップ=虚ろ」と感じる西洋と、

「空のコップ=コップの中に空間がある(=働きがある)」と感じる老子。


みっちり中身が詰まっていないと虚しいんです、
という考え方と、

みっちり空間が詰まっているからこそ役に立つ、
という考え方が、


真逆で面白いなぁ、
と思った春の日の午後でありました。

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