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わたしが聞いたある人のお話

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これまでのインタビューをまとめたものです。
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引きこもりでも、本を通じて大海へ。“ルーマニア語の小説家”を形づくったもの

『千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話』(左右社)という本がある。2023年2月の発売以降着々と売上を伸ばし、現在第6刷(2023年5月15日現在)。俵万智さんや読書猿さんなどの著名人からも評判の一冊だ。 そのタイトルの通り、済東さんがルーマニア語を学び作家となる過程が書かれている本書は、語学学習者にとって非常にためになる内容であり、その行動力に元気をもらえる一冊だ。 だがそのこと以上に私の心に引っかかったの

「新しいことに巡り会うのが生きがい」彼女を突き動かすシンプルな好奇心

「完璧になったら面白くないし、難しいからこそ語学が楽しい」そう語る私の友人のSさん(28歳)は、現在ニュージーランドにいる。ワーキングホリデーを利用して、2022年11月より滞在中だ。大学を卒業したばかりの2017年9月に行ったカナダに続き、二度目の海外滞在である。 兵庫で育った外国への興味生まれた時から、彼女にとって異国は身近だった。 母方の叔母の夫がフランス人だったのだ。母と叔母は仲が良かったため、叔母の家族であるいとこや叔父と会う機会も多く、異文化に触れながら育った。

東京にいながら岩手に恩返しを。とある人事担当の副業ストーリー

寂れていく商店街。閉校になる学校。長い歴史にピリオドを打つ老舗。 人口減少、とりわけ若者の減少を受け、地方ではこれらの現象が珍しくない状態だ。 今回お話をお聞きした磯崎怜さんの故郷・岩手県でも人口減少が続いており、2021年には戦後はじめて120万人を割った。 磯崎さんはそんな地方の現状に課題を感じてきた。そしてその課題に自分なりにアプローチするべく、2022年の5月から本業のかたわら『いわて圏』に所属し、まだまだ毎月のように稼働できているわけではないものの、岩手県を盛り

運動神経の悪さが落語につながった。言葉と身体を操る落語の面白さ

江戸時代に誕生して以来、4世紀近くもの間、大衆に愛され続ける落語。 『饅頭怖い』『寿限無』などは、落語好きではなくとも、多くの人がなんとなくは知っているのではないだろうか。昨年には、人気シンガーソングライターの米津玄師さんが『死神』という古典落語を題材に楽曲を書いたことでも注目を集めた。 だが、日本に根付いた文化であるにもかかわらず、普通に生活をしていると落語について知ることは少ない。 今回は、落語家として活躍する桂健枝郎さんに、落語の魅力や落語家としての生活について話

「ファッションの伝統と価値を守りたい」デザイナー・宮白羊の想い

ファッションの中心地・パリ。これまでにも数多のデザイナーがこの街で、自分なりのファッションを作り上げてきた。そんなパリで、ファッションデザイナーとして活躍するひとりの日本人がいる。 宮白羊(みや はくよう)さんだ。 2016年に自分のブランドを立ち上げた。ショーの開催やイベントでの販売が難しくなったコロナ禍を機に、ECサイトでの販売やSNSなどにも挑戦しながら活動されている。 今回は彼に、ファッションを志してから現在に至るまで、そして彼が感じているファッション業界の課題

「書くだけでお金がもらえる!?」批評家が作った新しい形の文学サークル

noteやブログで文章を書いても、全然読んでもらえない ――。文章を書き始めて、多くの人が感じる悲しさではないだろうか。自分の文章を誰かに読んでもらえる。文章を書く仲間ができる。さらになんと、お金がもらえる。書くのが好きな人からすると、こんなに嬉しいことだらけでいいんだろうか、と思ってしまいそうな文学サークルがある。その名も「お茶代」だ。毎月出されるお題に沿って、文章を書く。すると“お茶代”程度の原稿料(100円)がもらえるという仕組みだ。さらにサークル内で紹介もされるため、