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キーボード初心者のライター女子が、『銃・病原菌・鉄』を読んでキーボード配列を変えたら大変なことになった話

昨年末に読んでいた、ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』に、こんなことが書かれていた。「現在一般的に使われているQWERTY配列は、早く打てないように作られている」らしいのだ。QWERTY配列でないキーボードを使うと、文字を打つスピードが2倍になった人もいるとの記述もあった。

ライターというキーボードを打ちまくる仕事をしているものとしては、気になりすぎる話である。文字打つスピードが2倍になったら、執筆以外の工程もあるので2倍とまではいかなくとも、収入か可処分時間が増えることは間違いない。

「変えたい気もする」とか書いているが、システム的なコストが大きすぎなければ変えるつもりだった。練習は年末年始の連休中に何とかなると思っていた。今振り返ると、練習コストをナメていたとわかる。『銃・病原菌・鉄』を読んでキーボード配列変えるって、よく考えなくてもちょっと狂っててネタになりそう、みたいな気持ちもあった。8割の好奇心と2割の邪な気持ち。


Eucalyn配列との出会い

そしてQWERTY配列以外の配列を探すなかで、Eucalyn配列というものを発見する。詳しくは下の記事にあるが、右側に母音がまとまっていて、手をあまり動かすことなく打鍵できる配列だ。

調べて出てきたほかの配列が、ショートカットに使うキーも変わるためショートカットも覚え直す必要があったり、英語入力に特化しているためかな入力には不便なポイントがあったりするなかで、Eucalyn配列の場合はショートカットはそのままだし、かな入力に特化して作られている。そこで「もうこれしか〜!」と軽率に変更を決める。

で、配列変えるってどうやってやんの?

変えたい配列は決まった。どうやって変えようかということで、まずは一応Amazonで探してみた。当然のごとくEucalyn配列対応のものは売ってなかった。個人の方が考えた配列なので今考えたら当たり前なのだけれど、その時は何故かそれすらわからなかった。(ド初心者)

いつものわたしならここで諦めていたかもしれない。でもその時のわたしは年末年始の休みモードに入っていて心にゆとりもあったし、やたら時間はあった。そこでキーボードについて調べまくって、「キーボード 配列 変更」と検索したらcontrolキーとかの変更方法ばっか出てきて「そうじゃねえわ」と萎えたり、なんかで出てきた自作キーボードの記事を読んでやってみようかと思ったり、でもノリで手を出すには高い金額に怯んだり(初心者セットが2万くらいしてた)、ネットの海を漂った末に「Karabiner-Elements」という神アプリを見つける。

これを使うことで、「shift」を「control」にしたり「A」を「F」にしたり好きなようにキーボードをカスタマイズできる。Macのみでの提供だが、キーボード配列を変えたいわけではなくとも「このキーがもっと別の場所ならいいのに!」と思う人にもおすすめのアプリだ。

こんな感じでひとつずつ入れていく

いや、しんどすぎ。〜日々の練習記録〜

こうして設定を終えて、新配列習得に向けた練習が始まった。ここからは12/26からひっそり書いてた練習記録をお届けしたい。

ちなみに、練習はずっとしてたし今もまだたまにしているけれども、特筆すべきことがなさすぎてこの記録は1/4までです。物書きとは思えないほどの日記の続かなさ。あとこの中では仕事いける気がするとか言ってるけど、現時点でやっと普通にできるようになった感じなので、いけてませんでした。

使ったのはこの2つのサイト。

メインがマイタイピングで、毎日の記録用にe-typingを使いました。寿司打も考えたけど、レベル的にやれるわけないと思って使いませんでした。(ちなみにこれ書く前に1万円コースちょっとやったら表に出せないような壊滅的結果だった。大損)

12/26

どこを押せば何が打てるか半分くらいわかってきた感はあるけど、当然、普通に間違える。スピードの前に正確さが全然足りていない。頭ではわかるのに手が動いてくれない。きっとロボットならこんなことは起きないのに人間のバグとしか思えない。それとも本当は脳ですら理解が追いついてないのだろうか。脳科学やりたい。

でも基本的に下から2段目がメインで作られてる感じがするから、本当に指を動かすことが少なくてすごい楽。確かに慣れたらめちゃくちゃ早く打てそう。慣れる気はしないけど。あとちょっと触っただけなのにファンクションキーが恐ろしく遠く感じるようになった。ファンクションキーと間違えて数字打つってやつを何回かしている。慣れてきたら外付けのテンキー買って、数字キーをファンクションキーにしてしまうのもアリかも。

Eucalyn配列での自分のタイピングスピードの遅さに発狂しかけて、これは途中からQWERTY配列でガンガン打ってしまってるけど、このくらい速く打てるようになるんだろうか。なる気がしない。目的からするとむしろこれより速くないと困るんだけど。明日また頑張ろう。最低毎日1時間はやりたさある。

12/27

二日目。Euclyn配列を試した人の「一晩寝たら睡眠のおかげか上手くなった」という話を見ていたので、期待しつつパソコンに向かう。たしかに寝ただけで少しマシになった気がする。間違いが少し減ってスピードも上がった、はず。

とはいえ、この配列でnoteを書いたらまあまあの苦行だった。「か」とかQWERTY配列と同じ文字を打つときの快適さがすごい。

そして今日はファンクションが遠いだけでなく「ー」この伸ばし棒すら距離が遠いな?と思えてきたので、左側のシフトキーを「ー」に変えた。カスタマイズできすぎて楽しすぎる。早く水を得た魚のように打ちたい。

ところで、記号の配列は何も触ってないのにこれまで使っていた記号が全然出なくておかしいな〜〜と思っていて調べてみたらこれで解決した。先人たちの記録ありがたいな。

https://zubora-seikatsu.com/karabiner-ascii/

12/28

慣れてきたキーだと少しずつ早く打てるようになってきた。タイピング練習サイトでのスコアも上がってきているけど、全然間違える。特にFBHJあたりがごちゃごちゃしがち。

昨日設定を変えた「ー」、慣れなさすぎる。あとQWERTY配列と同じ運指で打てる文字を打ったあとにQWERTY配列に感覚が戻りがち。いっそ全部変えた方がよかったのかも。むずかしい。

12/29

マシにはなってきているけど成長が停滞してきている気がする。

昨日はほぼ完璧だったはずのMを異常に間違えるようになった。下段のFBHJを集中的に練習してだいぶできるようになってきたら今度はそれまで割とできてたはずの上段がヤバくなるのつらすぎ。なんなの。

でも「ー」は慣れてきたし、馴染み具合は順調に上がってるので頑張る。

12/30

今日は上段が昨日よりマシになり、下段も悪化しなかったので、全体的にわりと打てるようになってきた。いい感じ。あと5日くらいで何とか実務レベルになるかな〜

12/31

年内最後。
慣れない感じでタイピングしすぎたからか腕が痛い。でも打つのがしぬほどストレスみたいな感じではなくなってきた。1週間でこのくらいになれたのはよかった。今年の本格稼働は9日からの予定だし、そんなに詰まってないのでなんとかなりそう。

1/1

あけおめ。 新年と同じくらいめでたいことに、何も考えずに打てるキーが出てきた。うれしい。でも母音が密集してるからかたまに間違える……便利さでもあるけど難しさにもなる感じおもしろい。

1/2

最初は全集中しないと打てなかったのに、ポッドキャスト聴きながら打てるくらいになった!(聴いてる内容がしっかり頭に入ってるかは別)

そして練習を始めてからほぼ断っていたQWERTY配列を12/26ぶりに使ってみたら全然打てなくて笑った。1分でやめた。覚えているところもあるけど母音ほぼほぼわからない。1週間でこんなことになるなんて人間やばい。先人のみなさま方のブログにはバイリンガルになれるって書いてたのになんで??

これで何をしてでも、Euclyn配列でQWERTY配列と同じ程度に打てるようにならないと終わることになった。生産性上げたくてやってるのに爆下がりするっていう本末転倒の見本みたいになっちゃう。しんど。

1/4

昨日はただ練習してただけで特筆すべきことがなかった。
今日は世間的には仕事始めなのでいくつかSlackを返したりちょっとドキュメント触ってみたりしたけど、遅すぎて自分の手のひらをぶん殴りたい気持ちに。成長が見えるのだけが唯一の救い。

やってみて感じたこと

自分を再編成するムズさと面白さ

ムズい。ひたすらにムズい。タイピングってこんなにムズかった!?って気持ち。

そして今もバイリンガルにはなれていないし、もはや元の配列に戻ることすら永遠にできない気すらしてきた。ガチで1時間くらい練習すれば戻れるかもだけど、ここまで来たのにEuclyn配列を忘れたらと思うと怖くてやれない。

ミッション車に乗ってた人はATしか乗らなくなってもミッションに乗れるはずなのに、わたしはQWERTY配列が使えなくなってしまった。キーボードはモノリンガルにしかなれない星のもとに生まれてるのかもしれない。

そんな感じでまだ悪戦苦闘してるんですが、このまったく新しいものを身体的に自分にインストールする感じ、フランス語の発音練習と似ているような気がする。ちょっとずつだけど体が覚えていく感じ、自分が再編成されるみたいでたのしい。

再編成といえば、最近読んだ『言語の力』にバイリンガルやマルチリンガルの脳に起こるたくさんの変化が書かれててめちゃくちゃ面白かったので、この配列変えるための営みでわたしの能にも何かいい変化があったらいいな〜〜とはいえわたしはキーボードですらバイリンガルになれてませんけど。かなしい。

あと、かなはわりと打てるのにそれに比べて英語とかフランス語とか打とうとすると、どこに何があるかわからなくなってちょっと苦労するなと思っていて。それはまだキーの配置を覚えきれていないとか、そもそもEuclyn配列がかなに特化しているとかもあると思うけど、それ以上になんだかキーボードの捉え方が変わったからなんじゃないかと思う。

今まで使ってきたQWERTY配列は、わりとキーの並びが無秩序で規則性がないので、「Rはここ」で「Uはここ」という覚え方をおそらくしていたんだと思う。でもEuclyn配列は基本的に左に母音、右に子音がまとまっているので、「マ行はここ」って覚え方をしている気がする。だからそういう概念のない言語を打とうとした時にちょっと脳の処理にタイムラグが生まれてるんじゃないかなと。道具を変えたことで認知に変化が起きてるかもしれない!おもしろ。

キーボードの沼、深そう

そういえばJが右側にありすぎて打ちにくいのに、あんまり使わないFが真ん中にあったので勝手に変えてます。でもそうするとFが打ちづらくて、FはQの位置に持ってきました。だからEuclyn配列だけどEuclyn配列の亜種みたいになってます。こういうのできるのたのしいな。

今の配列。

Macのキーボードは市販のシール貼って今の配列がわかるようにしています。ホームポジションだけシール貼ったらわからなくなるのでそのまま。「J」→「T」で「F」→「I」です。

あとキーボード熱が高まって前から気になってたメカニカルキーボードを買いました。タイピングが正常運転じゃなさすぎてパソコンに向かうのがわりと嫌になったので、それをちょっとでも上向けるという目的もありました。

ピンクまみれでかわいすぎ

キーが沈みすぎて慣れないけど音が気持ちいい。でも打ち方に慣れない+キーボードそのものに慣れないが組み合わさると作業スピードが終わるせいでまだあんまり使えておらずインテリアになりかけていた。数日前からやっと少しずつ移行してるので、はやく使い倒したい。

本当は「配列変えてみたらこのくらい作業時間短縮されました!」とかやりたかったんですけど、そもそもやる前の作業時間のデータ取ってないし、多分今でトントンくらい。でも仕事は問題なくこなせるようになったのでよかった。

あと手はすごい楽になった!全然動かさなくていいからガチャガチャしなくてなんかいい。QWERTY配列は出かける前に慌てて準備してる人間みたいだけど、Euclyn配列は茶道してそう。もっとちゃんと習得できたらスピード上げられそう。習得できたら。

まあ結果としてnoteのネタにはなったし、読んだ本をきっかけに、めちゃくちゃ意味わかんないところに連れてかれる体験ができたのでよしとします〜〜〜もっと早く打てるようになって生産性爆上げするぞ!あといつか自作キーボードやりたいし、バイリンガルにもなりたい。

12月からフランスに行きます!せっかくフランスに行くのでできればPCの前にはあまり座らずフランスを楽しみたいので、0.1円でもサポートいただけるとうれしいです!少しでも文章を面白いと思っていただけたらぜひ🙏🏻