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~激推しフランス関連作品~14 Juillet 革命記念日に寄せて

233年前の今日、バスティーユ襲撃を契機に勃発したフランス革命。

フランス革命はわれわれを魅了し、当惑させ、奮いたたせることをやめない。(中略)フランス革命のドラマ、成功と悲劇、そしてそれを押し止め、あるいは押し戻そうとする企ての規模によって、二世紀以上にあたり学者たちはこの主題に魅了されてきた。

ピーター・マクフィー著『フランス革命史 自由か死か』p12

フランス革命を研究する歴史家のピーター・マクフィー先生のこの言葉の通り、ドラマティックで、人を惹き付けてやまないフランス革命。
そんなフランス革命に出会ったことがわたしがフランスという国に並々ならぬ興味を持つようになった、最初のきっかけでした。
ということで、今回はここ数年で色々とフランス革命周辺の時代が描かれた本や映画や舞台を見てきたわたしのイチオシたちを紹介しようと思います。

脱輪さん主催の文学サークル"お茶代"への参加のため有料にしていますが、最後まで無料で読めます。お茶代に興味のある方はぜひ脱輪さんのTwitterをご覧ください。

マリー・アントワネット

まずは革命といえば連想する人も多いと思われる、悲劇の王妃・マリーアントワネットに関する作品。
この作品はマリーアントワネットと平民のマルグリットアルノーという同じイニシャルを持つ二人の女性の運命を描いています。

ミュージカル界では有名すぎるほど有名なミヒャエル・クンツェ&シルヴェスター・リーヴァイの作品で、音楽がとにかくヨーロッパ的で重厚。

マリーが死んだところから始まって、それまでを振り返るような形で物語が進むので、プロローグからギロチンで禍々しいです(いい意味で)フェルセンのマリーの死を嘆く曲が一曲目にあって、マリー過激派であるわたしはそれにとてつもなく同調してしまって、「ほんとだよなんで殺されなきゃいけないわけ?悪いところがなかったとは言わないけど、パンがなければなんて言ってないし、ちょっと贅沢したかもしれないけど別に財政的には微々たるものだし、王族らしく贅沢することは何もかも奪われて殺されるほどの罪なんですか??納得できないわ、あんなに善良で気高くてかわいい人なのに」と思って悲しみとやりきれなさで感情がぐっちゃぐちゃになってスタートします。

そんな中「Bon soir!」と出てくるマリーのかわいさ。世界中のかわいいを集めたような愛らしさなので見てほしい。フェルセンが命を賭して守ろうとしたのすごくわかるし絶対に死なせたくないと思ってしまう、、何度見ても死んでしまうのだけれど。

ところでわたしは過激な王党派(というか王妃派)なので「そんな現代によくある性欲ありきの不倫のような汚らわしい関係ではなくて、これは美しすぎる愛なので!」と思ってしまって、フェルセンのことを愛人って呼ぶのに抵抗があるんですけど、恋人だと軽い気がしちゃってうまい言葉が見つけられないんですがなんて言えばいいんですかね。amour??

閑話休題。
わたしはソニンちゃんが好きなこともあり、2018の公演も2021もDVDもマルグリットはソニンちゃんで見たんですが、歌の迫力と表現力がとんでもないです。ソニンちゃんは革命がとっても似合う。マリーとのデュエット曲の「憎しみの瞳」という二人がバッチバチに喧嘩する曲があるんですが、お二人ともかっこよくて一生聴いていたい勢いです。
あと歌でいうと、2018でオルレアン公をしていた吉原光男さんの圧倒的声量が「この男にターゲットにされたら絶対につぶされる……」という迫力で、強大な野心を感じ取れて大変好きでした。2021の時に見た上原理生さんも安定に歌がうまくてよかったし、オルレアンはとってもおすすめポイント。にしてもオルレアン本人ではないけれども、息子が本当に王座についちゃうんだから権力への執念が実っていてすごいですね。そしてフェルセンはどのフェルセンもかっこいい。ベルばらを読んだ時から思っているけれど、フェルセンよりいい男、きっと何十万年ものホモ・サピエンスの歴史を全部遡ってもいない。あの手この手でマリーを救おうとするのに全然うまくいかなくて結局あんなことになるの悲しすぎる。みんな幸せになってほしいだけなのにどんどん不幸になっていく、、、

この作品はマリーの人生を通して、実態を知らないのにゴシップや本当かわからない記事に踊らされることの危険とそれによって何も悪くない人が悲惨な道に追いやられてしまうこととか、正義の反対は悪ではなくてまた別の正義であることなどを伝えている作品で、わたしがマリーへの意味が分からないくらいに激重な感情を持っていることを差し引いてもいろんなことを考えさせられる作品です。

と言いつつわたしはと言えば、例えばマリーといえば「パンがなければ~」みたいな風潮がものすごく不愉快で、これ最初に言い出した人絶対に許さない!って思うくらいなんですけど(だってあんなひどい目にあった上に殺されたのに、後世でも遠い国の人にまで言ってもいないことで貶められるなんてひどすぎませんか?言ったことなら仕方ないけど。おいたわしい以外の言葉がない)、こういうのが争いを生んで報復と憎しみが連鎖していくんだなあとわかっていながらも不愉快になる気持ちはまったく抑えられないので、こういう些末なところからも人間の争いを無くすって難しいなあと思ったりします。もっと感情を制御できる人間力の高い人間になりたい。

なにはともあれ、泣けるし音楽はいいし、とにかくわたしの推しがかわいくて気高くて最高にいい女なので全世界の人に見てほしいです。

ちなみに原作は遠藤周作さんのこちらです。こちらもミュージカルとはだいぶ違いますがさすがの遠藤さんでおもしろかったです。

1789

ここまでマリー殺した革命許さんと思ってそうな話をしておいてなんですが、フランス革命の革命家たちもすごく好きです。ロベスピエールもサンジュストもロラン夫人もだいすき。自由のために戦うだとか理想を追うとか、権利を求めて立ち上がるということには最高に共感するし、わたしもできるならフランスにタイムスリップして革命に参加したいくらい。彼らと一緒にフランスの未来を語り合いたかった。

今回紹介する1789はフランス革命のもう初期の初期。というか始まったところで終わる、革命のはじまりの物語。財政危機が深刻化し、貴族や僧侶への課税のために全国三部会が開かれたものの三部会は決裂。その後バスティーユ襲撃が起きるあたりの部分が描かれます。ロベスピエール(マクシム)やジョルジュ・ジャック・ダントンやカミーユ・デムーランなど革命家も出てきます。あと少しだけミラボーも。

この作品の革命は、革命が進展するに従って色濃くなる血腥い部分や悲しい部分がほぼなくて、革命家たちの自由と平等と友愛のために活動するエネルギー、明るい未来が待っていると信じる希望が詰まっていて牧歌的でキラキラしていてとっても好きです。マクシムとジョルジュとカミーユが3人でこれから自分たちがフランスがよくしていくんだ!と仲良くしてるの尊くていい時代すぎる。見るたびにシトワイエンヌになって革命に参加したくなります。

曲もロック調のものも多く、革命のエネルギーや王や貴族への怒りを感じてとってもかっこいいです。
特にロベスピエールが怒りを表現する「誰の為に踊らされているのか?」とバスティーユ襲撃前に歌う「サ・イラ・モナムール」が個人的に好きな曲。あとマリーの「全てを賭けて」もおしゃれでとってもかわいい曲なので聴いてほしいです。ちなみにSpotifyにフランス語版なら音源はあります。1789で検索🔍

いつもたくさんの人が舞台にいて、誰かのソロ曲でも他のキャストが参加していたりして華やかなのも好きポイント。

本当に革命を起こしてフランスを変えよう!楽しくて明るい未来が待っている!と思えそうな作品なので、革命に触れる初手としてはおすすめです!革命ずっとこうならよかったのにな、、、

ひかりふる路

1789が革命のはじまりの物語なら、これはわたしにとっては革命のおわりの物語。バスティーユで燃え始めた革命の炎が、たくさんの人を飲み込みながら革命家たちですら想像しえないくらい燃え盛って、マクシムたちを最後に飲み込んで炎が消えていくような。キャストはもちろん違うけれど、登場人物も1789と重なっている人が多いので地続きの物語のような気持ちで見てしまいます。こちらはもう牧歌的の真逆をいく革命で悲劇的でつらくてだいすきです。

『ひかりふる路』は、フランス革命で活躍した指導者で、クーデターにより処刑されたのちに恐怖政治の元凶とされたマクシミリアン・ロベスピエールを主人公とした物語です。

革命で家族を殺されたヒロインの名前はマリー=アンヌ。フランスでは、マリー=アンヌとはフランス共和国を擬人化したイメージとされています。その名前をヒロインに付ける演出の生田先生最高……生田先生の演出いつもわたしの癖にぶっ刺さってきてすごく好きです。フランス共和国の象徴と愛し合い「生きるんだマリー=アンヌ!」と新しい道へ送り出しながら自分は死にゆくロベスピエールやばくないですか?天才すぎるだいすき。

出てくる人の大半はもちろん史実通りギロチンで死んでいくんですけど、それを象徴するかのように衣装にも斜めの線が入ってるんですよね、不吉でさいっっっっっこうです。
革命への夢と希望に溢れて理想に燃えるキラキラ革命家だったロベスピエールがある出来事をきっかけに闇堕ちするんですが、その闇堕ち直後のシーンでも赤くて斜めの光が背後にあってこれからの血に塗れた未来を暗示しているようでとっても不気味でもう…良いです(語彙の喪失)生田先生に一生ついていきたい。あとロラン夫人がとにかく美しくて圧倒的美にひれ伏したいです。サンジュストも狂っているのに、というか狂っているからこそ美しくてなんかもう…すきです。狂信的な憧れたまらない。

1789では、共にフランスのために立ち上がった革命の兄弟だったはずの人たちが、むしろひかりふる路でも序盤はそうだったのに物語が進むにつれバラバラになっていくのがつらくて、ほんと一緒にワイン飲んで和解しません??白は王党派の色でも葡萄に罪はないし白ワインはおいしいじゃん!?白好きなんでしょう?と思うし、狂っていく革命を見るたびに毎回毎回「なんで誰も悪くないのにこうなるんだろう、、みんな死なないで、、」と思ってしんどくなるんですが、だからこそ深く心に残るし革命もこの作品も大好きなんだろうなと思います。一緒にしんどくなりましょう。

もうマクシムとジョルジュ&カミーユが決裂するあたりから、なんなら最初の希望に溢れた場面からこの先のことを思って心が痛すぎるのに、何度も何度も見たくなってしまう作品です。革命万歳、、、

そしてこの公演は前雪組トップの望海風斗さんと真彩希帆さんお披露目公演なんですけど、お披露目でこんな演目見せられたらファンだったらこれからが楽しみすぎて破産を覚悟するほどお二人が素晴らしいです。仕事も何もかも無視して通い倒したくなる。歌も演技も素敵すぎる。結局二人のいる雪組見れずに終わったの一生の心残りです……

ワイルドホーン先生の壮大で派手な楽曲も革命の雰囲気とすごくマッチしてて楽曲キャスト演出題材とにかく全部が好み!天才!いろんな人に見てほしいし聴いてほしい……これ書いている時点ではCDとDVDは売り切れてましたが、Blu-rayは買えるようで、あとたまにBSとかでやってたりするのでぜひ……!なんならダビングします。

3作品しか紹介してないのに、フランス革命への感情が重すぎて嘘みたいな文字数になってしまいました。フランス革命(特に1794年の夏まで)は、希望と混沌と悲劇と理想と血が混じり合ったすごい時代です。

他にも革命が出てくる作品は『ベルサイユのばら』や佐藤賢一先生の『小説 フランス革命』や最近出た『断頭のアルカンジュ』など素敵な作品がたくさんあります。7月は革命記念日のほかにテルミドールのクーデターの日もあるし、8月26日はフランス人権宣言が採択された日だったりと夏は革命の季節なので、ぜひ革命に触れてみてください。革命はいいぞ。

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