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1章-(7) コロスケ探し

「コロスケを探すのは後まわしにして、先に借り物してこよう。良ちゃん、第2公園のそばの黄色いかべのうちへ行って、古い首輪を借りて来てくれる? ぼくは小川さんでタオルを借りたら、コロスケを探してみるよ。西の方へかけてったから、そっちへコロスケのロープ持って行って、つないで  くるよ。良ちゃんも後から追っかけて来てね」

そうなんだ、コロスケがいなきゃ、たんてい団じゃないもんな。コロスケは重要な一員なんだもの。

「そうだ、ぼくが、どっかで別の方へ曲がって行くときは、目印にこの時計を何かに結んどくね」
と、ぼくは良ちゃんの背中に叫んだ。ふりむいた良ちゃんに手首のハンカチのひらひらを見せた。なんだか、本物のたんていが始まるみたいだ!

小川さんに借りたタオルを、ぼくのジャケットの大きなポケットにつっこんだ。さっきまでサンドイッチを入れてたところだ。

それから、河原の土手伝いに走りに走った。土手道には草がほとんどなくて道が見えていて、どんどん走れる。ぼくらの土管3つが下の草原の中に見えてくると、土手から河原へ下りて、土管の所まで草をかきわけて急いだ。 雑草の林をふみこえて行くよりは、だんぜん早く着いた。ぼくのキチの中に置いてあったコロスケのロープを持った。
その時、強い風がまともに吹きつけてきた。すると、変な臭いがおそって来た。ウンチみたいな臭いだ。

となりの良ちゃんの土管をのぞいてみると、なんだ、これは!見たこともないほど汚されてる。ぼくのダンボールがここに広げてあるけど、泥だらけの足跡がいっぱいついてる。まわりにコーラや缶ジュースの空き缶がゴロゴロしていて、タバコの吸いがらに、空っぽのおかしのふくろが,そこら中にころがってた。
だれかが、ここに入って飲み食いしたんだ。

また風が吹いた。川の方から臭いがまたおそってきた。土管の外の川の近くに出て見ると、犬か何かのふんの固まりがいくつもあった。ぼくの知ってる犬の飼い主たちはみんな、かならず犬のふんの後始末をする。ぜったいに  残したりしない。そのための袋をかならず持ってるんだ。

コロスケのよりおっきなフンだった。ひょっとして、あの犬たちのかな?  でも、タロウなんかこんなに家から近いなら、すぐに自分ちへ逃げ帰れるのに、どうして?

ぼくは考えた。悪いやつに掴まってしばられてるとしても、吠えれば、つりをしてる人とか、散歩してる人に見つかるはずだ。あの犬たちじゃないかもしれないな。

そうだ、それよりコロスケを見つけなきゃ。
良ちゃんが早く来るといいのに。頼りないけど、そばにいるだけで、安心  なんだ。
良ちゃん、早く来いよ!

ぼくは念力をこめながら、ポケットに入れたノートを一枚やぶって、おき手紙を書いた。

 「りょうちゃんへ。コロスケをさがしに、もっと上流まで行ってみる。 コリーとシェパード探しはその後にしよう。すぐ追っかけてきてね。目印を気にしててよ! あきら」

それを良ちゃんの土管の入り口において、大きめの石ころをのっけた。

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