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●ボーイフレンドの助け

 H不動産のM氏からの電話があったので、私はうちの敷地の裏手門外にある「1平方メートルの土地問題」に、いよいよ取りかかれるのだと、ニコニコし始めた。この狭い土地が、亡きO氏の所有のままになっているため、私宅で彼から買った65坪ほどの裏庭は「原野」の部類とされ、畑にしていた。ところが、M氏は「この問題から手を引きます」と冒頭から言い始めた。
「書類を調べて見たら、あなたにはその1平方メートルの土地を買う資格はありませんね」
「えっ、そんなはずはありません。一昨年の夫の死後、土地と家の遺産相続を終えていて、私が此処の土地の所有者です。私がO氏の相続人から、あの1平方メートルの土地を買うつもりですが・・」
「そうでしたか、それならそうして下さい。今あの土地はオーコーポレーションの所有になっておりますので、私はこの問題は、関わりません」
「あなたは以前、私の不動産専業の友人が法務局から集めた書類や、私の 土地所有権書類を見て、これがあるなら、大丈夫できます、と言われましたけど・・」
「私には難しすぎます。書類はすべてお返しに参りますから、貴女の友人の方にお願いして下さい」

と言われ、仕方がない。その友人は、昨年の11,12月と2度心筋梗塞で 入院したA-H君なのだが、彼に相談するしかなくなった。

TELで事情を説明して、「貴方の入院した話もしたけど、貴方の知ってる 不動産屋を紹介して貰え、と言われたの」と、ありのままを言った。

彼はさいわい体調を取り戻していて、今は別の友人の問題解決に関わって いる最中だった。ほんの数日前に、運転免許の書き換え調査も、後期高齢の頭の検査もパスしていて、辻堂から八王子まで車で40分で来てくれると言ってくれた。

「今の問題が済んだら、取り組めるよ。それまでに法務局から最新必要書類は集めておくし、家にいてそれはできるから、あんたは何もしないでいい。 してくれない方がいい。素人ができることじゃないから。コーポレーションになってるということは、あんたとO家の相続人とが話し合える状態ではないんだから、TELを知っていても、かけたりせず、何もしないでまかせて。今までに同期生の10数人の家や土地や相続や、いろいろやってきたからね。あんたのボーイフレンドなんだから・・」

「わあ、ありがとう!頼りになるボーイフレンドがいてくれて、ほんとに助かる、ありがとうね」

そう言ったのが4日前だったが、彼は早くも動き出してくれていて、TELでO家の相続人である妻君から、H不動産のM氏に全てをお願いしてあるので、M氏と交渉をと言われ、そのM氏に連絡し、8日午後に会うことになった。それまでに亡きO氏との「土地売買契約書・領収書・物件説明書」など、あれば用意してほしい、と彼からTELが来た。

私に「この件は断る」と明言したM氏が、A-H君と交渉してくれるんだと、驚きつつ、重要引き出しを開けてみたら、すべての書類が見つかり、すぐに
「あったよ!」と、彼にTELを返した。
「あんたは、8日は東海大八王子病院から、2時には帰宅できると言ったろ。その頃、書類を取りにいくから。M氏と2人で片を付けるから・・」

とび上がりたいほど嬉しかった。すっかり解決がつくまでには、時間がかかりそうだけれど、裏門の外の〈1平方メートルの土地〉という、狭くて煩わしい問題が片付いてしまえば、心の重荷が1つ消えることになるのは、確かなのだから!本当に有り難い、高校同期のA-H君なのだった。

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