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DCM×enechain対談イベント ~ DCMが創業2年、VC未調達企業の16億円ラウンドをリードしたワケ ~

2022年1月26日のプレスリリースの通り、シリーズAラウンドで16億円の資金調達を行いました。

これに関連して、同年2月3日 (木) にオンラインイベント第1弾として、リードインベスターである DCM Ventures よりプリンシパル / 原健一郎さんをお迎えして、以下テーマについて対談を行いました。
(今回の調達に関する DCM 原さんのnote記事「enechainへ投資した理由」はこちら

【テーマ】
DCMが創業2年、VC未調達企業の16億円ラウンドをリードしたワケ

【登壇者】 
ゲストスピーカー:DCM Ventures / プリンシパル 原健一郎 さん
スピーカー:株式会社enechain / 代表取締役 野澤遼
モデレーター:株式会社enechain / ブローカレッジ本部LNGデスク 古村千尋

【パネルディスカッション】

増資の背景

古村:創業者である野澤さんにとっては大きくて難しい意思決定だったと思いますが、まず、今回増資を決意された背景を教えてください。

野澤:増資をするか自体は、ものすごく悩みましたね。
そもそもファイナンシングはエクイティだけじゃなく、まずは売上が一番大事なファイナンシングで、そして借入も重要なファイナンシングだと考えています。

そんな中でエクイティを選んだのは、何よりも成長スピードを猛烈にあげたかったから。採用規模を考えると、手元のキャッシュだけでやるのは怖さはある。

タイミングとしては、2年間のトラクションが出来ていたので、実績を定量的に見せられることには自信を持っており、2021年の夏頃に副社長の加藤と話し「いくか」ということで決断しました。

そこからVC各社にお声がけして、デューデリしてもらうことに。DCMさんをリードインベスターに決めた理由は、いろいろあるのですが、簡潔に言うと、DCMさんと一緒にやることで最後に会社を一番大きくできると確信したからです。

投資決断の決め手

古村:投資家である原さんからの目線で、現在のenechainをどういった点で評価されて、投資の決断をされたのでしょうか?

DCM原:DCM Venturesは、シリコンバレーに拠点を持ち、アメリカ、中国、日本の3か国に投資を行っているベンチャーキャピタルです。投資メンバーは全世界で20名弱、そのうち日本には4名おり、3か国間で情報交換をしながら投資を行っています。

僕らが投資するのは設立して1~2年、ないしは設立してすぐの会社が多いのですが、そのタイミングで完成しているビジネスはほとんどないと思います。そんな中、投資をするうえで一番重視するのが、お客さんに提供しようとしている価値がどれだけ大きいのか、そして、その価値がどれだけ長期的に継続しうるのかということです。競合が登場して全く同じようなことやられてしまう可能性が低く、enechainだけしかできないようなビジネスを創れるのかを気にして投資しました。

また、ものすごく成功するビジネスには、始める正しいタイミングがあります。
例えば、スマホがあるから上手くいったビジネスと言えば、Instagram。Uberなんかも最高のタイミングで始まって成長していきましたね。

enechainの場合、ユーザの方が困っている点をペインポイントと呼ぶのですが、そのペインポイントの大きさが電力業界の卸売り・小売りマーケットはすさまじく大きく、新電力と呼ばれる会社がつぶれてしまうくらいのペインポイントです。タイミングも、電力の小売り自由化という規制緩和が最高のタイミングとして表れています。
enechainのサービスは、お客さんに対する価値も大きく、また最高のタイミングで強い競合優位性がつくれていた、という意味で投資を決断しました。

出資に関するDCM内での議論

古村:enechainのビジネスを評価くださって、ペインポイントもありタイミングもよいというお話でしたが、DCMの中で実際どのような議論があったのか、その中で野澤さんにフィードバックされたかお伺いできますか?

DCM原:お客さんに対する価値がどの程度強いかはヒアリングなどで明らかにしていきますが、一方でGAFAのように最終的に大きくなった企業は、ほぼそのマーケットを独占するくらいの強烈な競合優位性があります。
5年後、10年後も電力発電業者も卸売り業者も、「電力を取引するならenechain以外ありえない」となりえるかを徹底的に議論したのが、1つ目。

2つ目に、チーム。これはどの会社にも当てはまりますが、マーケットはすごく大事、タイミングも大事。ですが何よりチームが一番大事。野澤さん、加藤さん (副社長) はじめ、他のチームメンバーにも会って、このチームがいいチームかどうかは議論しましたね。

古村:まさに独占にもっていくのが重要ということですね。野澤さんとお二人で議論はあったのでしょうか?

野澤:既成産業ではあったので、DCMの本多さん、原さん、シリコンバレーのメンバーからも結構フィードバックがありました。自由化されたとはいえ、圧倒的に大きな会社がサプライヤーで、他の業種とはやや違う構造ではある。例えば通信インフラの例や米国のアナロジーなどで突っ込まれまくりましたね。本当にそこを突破できるのか?

古村:スタートアップだけど、既成産業っていうのはユニークですね。

VCへの期待

古村:野澤さんに質問。今後の成長のために逆にDCMさんに期待していることはありますか?

野澤:原さん、もし認識が違ったら言ってくださいね (笑)
DCMさんはソフトとハードの両方兼ね備えたVCだと思います。ソフトは組織づくり、ハードは事業を大きくするための定量的な評価、アドバイスという意味で、ここが全然違うなと感じました。

まずソフトの部分ですが、デューデリ (DD) の際には、DCMの本多さんと原さんがオフィスに押しかけてきて、ひたすら1日中いろんな人に話を聞いてまわっていました。今になってみると、組織や、強いチームを作れるかを見ていたんだなと思いますね。
これまでfreeeさん、atama plusさん、CADDiさんのリードインベスターとしてリーダーを育ててきた成功体験があるからだと思いますが、DCMさんはものすごい組織づくりにこだわっています。僕の思っていたVCのDDとは違う切り口で来たな、という印象でした。「最後はチームだ」と常々思っているとおっしゃっていて、どういうチームを作っていくかという議論にかなりの時間をつかいました。「他の会社はこういう風にやっている」というのを知り、背景情報も含めていちいち手触り感があるので、自分的にはWow!っていう体験でしたね。

次にハードの定量的なところでいうと、インサイトの出し方が切り口がグローバルで鋭い。DDの際にも、マーケットプレイスの例でいろんな会社の名前が出てくるんです。
原さんとは長い付き合いなので、彼のことはよく分かっているつもりですが、とにかく病的に知的好奇心があるんですよね。フードデリバリーや教育レンディングの会社がどうで、競合優位性はこうでと朝から晩まで考えている。
今回も、よいマーケットプレイスの21の特徴のYoutubeを嬉々として見せてくれる。「21って多すぎやろ!(笑) でもなるほどこういうポイントを押さえるのかぁ」みたいな感じ。しかもコンプス (対象企業) が常にグローバルなんです。これは強烈に視野がひろがりました。

この、組織づくりへの異常な執着と、事業を伸ばすための評価の切り口がグローバルでかつものすごくシャープ。その掛け算で僕たちにないものを両方持っている人たちだなぁと思ったのが決め手でした。というのが、最初に言った「最後にこの会社をでかくする」という具体的な理由ですかね。これから一緒にディスカッションしながら会社をグロースさせるのが楽しみです。

DCM原:増資以降、ほとんど組織と文化の話をしていますよね。
DCMが投資している会社はfreee、atama plus、CADDiなど企業カルチャーが強いところばかり。なぜ僕らが組織づくりや文化が重要だと思っているかというと、今後数百人、もしかしたら数千人になっていった時に、どんな数千人になっているかは今の50人が大いにヒントになるから。それは、今の50人が、次の100人、200人を採用していく、そして100人、200人が次の1,000人を採用する。いいところも悪いところも、どんどん増幅されていくことになります。

だからこそ、今の段階で強い企業文化を作らないといけないし、どんな人がいて、だからこそ今後どんな会社になっていくかを議論しています。

enechainにとっての今後のチャレンジ

古村:組織づくりはenechainが今後価値を発揮していく上でキーワードになるかと思うのですが、それに関連して、今後enechainが成長していく上で、どのようなチャレンジがあると思いますか?組織づくりでももっとチャレンジがでてくるかもしれないですが、それ以外でも課題はありますか?

DCM原:成長しているスタートアップの一つの特徴は、組織が1年で倍になると、常に会社にいる人の半分が新人という、かなり「きわどい状態」になることです。
ちゃんといい人を採用し、1年間で新入社員たちをある意味ベテランの既存の社員にできるかが大きな課題。
強い価値があって、いい成長をしている会社は、ニーズにこたえるためにテック、ビジネス、コーポレートを増やしていかないといけないので、これは終わることのないチャレンジとしてありますね。

あとはテクノロジーですよね。創業から2年間でお客さんに価値を提供しつづけて、強い実績が出来てきました。これからはオーダーが100倍になっても、1000倍になっても、同じ価値を提供できるようにテクノロジーを使っていかないといけない。他のブローカーや、プラットフォームがある中で「enechainだよ」となっていくのはその点が大事かなと思います。エンジニアの方にとってはチャレンジングでこれからが面白いんだろうなという感じですね。

古村:常に新入社員みたいな状態で組織を作っていくむずかしさと、テクノロジーというお話があると思うが野澤さんはどう考えますか?

野澤:シンクロしましたね (笑) 僕も組織づくりとテックがチャレンジになると思っていました。

enechainには毎月新しい方が入社してきていて、例えばエンジニアリングマネジャーの須藤さん (2021年10月入社) はもう古巣だと思っていたのですが、「あれ、まだ入社から半年も経っていない!?」とかが、当たり前のように起こっています。それだけ人が増えているからこそ、組織づくりにもっと強烈にコミットしないといけないという、切迫感は持っていますね。
今回DCMさんに入っていただいてから、atama plusさん、freeeさんとカルチャーの幹部と、組織づくりについてディスカッションをさせて頂きました。2社とうちとはカルチャーが全然違っていて、いい意味で僕たちには違うカルチャーがあると思いました。

一方で強く感じたのは、カルチャーを創るのに費やした時間、ディスカッション量がatama plusさんもfreeeさんも比べられないくらい僕らの先をいっているということ。これはこれからの課題として、enechainももっと時間を投入していく必要があるなと思っています。

早速コーポレートデスクのメンバーが、社員全員を巻き込んでカルチャーを言語化するような一大プロジェクトを考えてくれているみたいですし、もちろん自分もコミットするつもりです。そういうのがすごく大事なところだと思っています。

もう一点のテックのところは、enechainは市場を運営しているので、ミスが許されないところがテックチャレンジだなと。組織づくりのためにバックオフィス、コーポレートの採用強化をしないといけないですが、なによりもエンジニアを増やして、システムを盤石なものにし、たくさんのトランザクションをスピーディーに捌けるアプリケーションを作ることが最重要だと思っています。

【Q&Aセッション】

古村:参加者の皆様から幾つか質問を頂いていますので、ご回答頂ければと思います。

Q1. プロダクトマーケットフィット (PMF) まではどのように事業を推進してきたか?

野澤:これは投資を受ける前から原さんにもアドバイスをもらっていたのですが、アーリースモールサクセスを作ることですね。

今でこそ130社が入って頂きかつ毎日のように新規の問い合わせメールが来る状況なのですが、最初は特にニーズの高そうな会社10社くらいに絞って、少しずつ成功体験を積み重ねていきました。この「絞って、早く成功体験を積み上げる」というやり方は自分の中では大きな成功体験になっています。例え10万円の売上だったとしてもニーズがあることが分かりますし、癒されるというか、成果が出るのが精神的にもとてもいい。

最初はとにかく早くて小さな成功体験をものすごく意識してやっていったので、結果的に少しずつ大きくなって人が増えていって、気がついたら130社になっていたという感じ。

古村:投資を受ける前からウォートンスクールの同期でもあった原さんから有益なアドバイスがあったということですね。原さん、ありがとうございます (笑)

Q2. なぜこれだけのスピードで事業を伸ばすことができたのか?

古村:ペインポイントがあったというコメントもありましたが、成長スピードという観点で、なぜここまでのスピードで成長できたのでしょうか?

DCM原:結局ユーザが求めているものには自然とユーザが集まってきます。それは去年1月のClubhouseやFacebookなんかがそうで、面白いので口コミでどんどんひろがっていくというパターン。

どんなサービスにも価値がありますが、大まかに言うと”Nice to have”で「あったらいいよね、なくても困らないけど」というものと、Must-haveで「絶対にないと困る」ものがあり、その二つには明確な違いがあります。
皆さんも、スマホのアプリを見ると、絶対に消せないものと消してもいいものがあると思いますが、この「絶対消せない」ものになることが重要

絶対消せないものになれると実績は自然とついてきます。どれだけ強いペインポイントがあって、どれだけお客さんのニーズに応えられるものを提供できるか。

その点でenechainはすごく研ぎ澄まされていると思います。enechainのお客さんのニーズは本当に細かくて、ただ売るにしても「このエリアがいい」、「このタイミングでこうしたい」というのがある中で、細かいニーズをきちんと理解したうえで、かゆいところに手が届くビジネスとしていたからこそ伸びている。

enechain設立前の2018年から野澤さんから話を聞いている中で、こんなに早い成長をするとは正直想像していなかった。見誤りましたね (笑)

Q3. スタートアップであるがゆえにできることは何か?

古村:enechainのマーケットプレイスについて、テクノロジーを有するスタートアップだからこそできること、逆に電力会社では難しいところをもう少し深堀して説明お願いします。

野澤:テクノロジーなしでは勝負できないです。まず取引が成り立たないです。他の業界、株式取引がそうなっているように、オンラインの市場がないと始まらない。電力も同じで、そこがテックの重要性だと思います。

電力取引は一回やって終わりという類のものではなく、毎日毎日、天気や燃料の価格とかいろんな要因に左右されながら、継続して取引を続けるもの。だからこそ、毎回電話やメールでのやり取りだと、時間的コストがかかってしまうので、テックがないとマーケットプレイスを創れないことは明らかですね。

古村:テクノロジーを持っているスタートアップだからこそできることについて原さんからもコメントありますか?

DCM原:スタートアップって意味としては「新しい会社」っていう意味だけですが、僕たちが思う良いスタートアップの特徴はテクノロジーを使って急激に拡大している会社

急激に拡大できる理由はやはりテックで、普通のレストランとか一般的なビジネスだと、お客さんが100倍増えたら、従業員も100倍にしないと回らないですが、アプリやソフトウェアはテクノロジーを使えば、お客さんが100倍になっても社員を100倍に増やさなくても対応できる。

これがテクノロジースタートアップの特徴。日本だけに限らずアメリカも中国もそうですが、既存の事業会社がテクノロジーを使って爆発的に拡大することは少ないですね。なぜなら、今の一番新しいテクノロジーは若い人が一番詳しくて、そういうエンジニアは結局トレンドとしてはスタートアップにいることが多いからです。

enechainもこれからたくさんのテックチャレンジがあり、エンジニアの皆さんにとってはやりがいのある職場だと思います。

・・・

対談イベントは以上です。いかがでしたでしょうか?

Sansanをはじめ今をときめくスタートアップを支援してきたDCMさんならではの視点で、enechainのこれからの成長性について対談いただきました。

まだアーリーフェーズのenechainのグロースには新しい仲間の存在が不可欠です!

 enechainでは一緒に働く仲間を募集しています

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対談イベント第2回、第3回の記事も順次公開予定ですので、お楽しみに!

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