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連載19・世界四大タロットってなに?

現在、占いに使われるタロットには
「世界四大タロット」として
4種類のメジャーなものがあります。

1:マルセイユタロット

マルセイユタロットは数百年の歴史があって、占いタロットの中では一番古いものですが、ゲームだった時期が長く、占いでの解釈的意味も19世紀に後付けされたものです。
 
ただし、このデッキがなければ
その後発展していったタロットの基盤となる神秘学ルールも決まらなかったかもしれないので歴史的に重要なものです。
 
世界四大タロットの残りの3つは、19世紀にレヴィとメイザースによって確立されたタロット神秘学の決まり事をもとに、20世紀になって創作されたものです。
 

2:ウェイト・スミスタロット

1909年にイギリスのライダー社により出版されたこのデッキは
世界で最も普及しているカードです。

19世紀のマグレガー・メイザースがまとめた神秘学ルールを
ウェイトが解釈したものを
絵師のスミス女史にイラストを依頼して出来たカードです。

大のシェイクスピアファンのスミス女史は、
シェイクスピアの劇のストーリーも考えつつ、
舞台俳優の友人達をモデルに作画をしたカードもあるので、
登場人物は16世紀頃のヨーロッパのファッションをまとっているため、
つい古くからあるカードだと思われがちですが、
近代のデッキです。

(彼が残したウェイト・スミスタロットの説明書
”Classics of the Tarot:The pictorial Key to the Tarot and The Tarot”には

「オリジナルのカードを作ってしまったよ。
スミス女史のスキルのおかげでとても美しい出来ばえになった。

古い伝統を重んじる人にとっては
けしからんと思うこともあるかもしれないけれど、
私が責任を持とう(意訳)」といった言葉が書いてあります。

今となっては“伝統”で“定番”とも言える
ウェイト・スミスタロットの作者が
そう感じてたなんて、興味深いですよね。

伝統ってなんだろう、って考えてしまいます。)

19世紀に限らず、
タロットや神秘学の構築に関わったような方々は皆、
教養がある論理的思考の哲学者ばかりで、
ウェイトも例外ではありませんでした。

だから
深く人生に向き合う人だったウェイトが手がけた
ウェイト・スミスタロットも
人生の叡智を表すために熟考されたもので、
決して「感覚や霊感で読むアートカード」として
作られたわけでは全くありませんでした。

欧米的な視点からすると、
作り手の意図を尊重することは
大切なことだと思うんですけれどね。。。
 

3:トートタロット

1969年に世に出たアレイスター・クローリー作のトートタロットもイギリス発です。
 
ハリス女史に作画を頼み、古代エジプトチックなモチーフを主にしつつ、さまざまな文化や国の思想も取り入れた大掛かりな原理を練り上げ、クローリーの死後に出版されたカードです。

レヴィ、メイザース、ウェイトの神秘学解釈は時代遅れであるとして(本人がレヴィの生まれ変わりを確信していたこともあり「19世紀の頃のアイディアは古いから、今度はもっとモダンに解釈しよう。どうせ最初から自分のアイディアなんだから変更しちゃってもいいでしょう」と考えたそうで。。。ってツッコミどころが満載です。。。)
 
クローリー自身は生きて体験することはないであろう「風の時代」に合わせてタロット神秘学の決まり事をさらに洗練させました。

そしてさすが、現代占星術の生みの親とも言えるクローリーですから、タロットと占星術のシンクロ具合は素晴らしいです。
  
占いをするにはまずは神秘学を徹底的に理解しないといけませんし、解釈するにも複雑なカードの繋がりの決まり事があるデッキなので、初心者さん向けではないと思いますが、それでもトートタロットが反映する神秘学は実に秀悦ですし、カードが出版される前に書かれた「トートの書」ほど丁寧にタロット神秘学が説明されたこともなかったでしょう。

なにしろ、20世紀半ばまではタロットの神秘学なんてものは、秘義だったので、知る人は知っているものだし、知らない人は敬遠したものでしたから、メイザースやウェイトが残したタロットの説明書は直接教えを受けてない人にとってはかなりざっくりとしか書いてありません。

ただし「トートの書」を理解するにも、はっきり言ってかなりのレベルの神秘学の事前知識が必要なので、英語圏のネイティブスピーカーですら、言語が同じだから理解できるというものではないのですが、メイザースやウェイトが書いたものとは比べ物にならないレベルの知識が書き残されています。
 
私自身もタロット作家ですが、世界的に出しても恥ずかしくないレベルのオリジナルのデッキを作れるほどの知識を得られた理由は、クローリーが発展させた国際組織になった魔術結社に参入し、トートタロットに出会ったからでした。

当時、トートタロットと魔術に関しての第一人者の一人でもある、著名なアメリカ人作家・講師のLon Milo DuQuette氏から直接師事し、占い方法だけではない、宇宙の真理と叡知の結集としてのタロットの原理を学ぶ機会を得ることができて、私のタロット人生の転機になりました

4:黄金の夜明け団タロット

タロット神秘学をイギリスで確立したメイザースが、その思想を実践するために設立した秘密結社「黄金の夜
明け団」で使うために19世紀に制作されたタロットがその名の通り「黄金の夜明け団タロット」でした。
 
ウェイトスミスタロットを制作したウェイトもスミスも、トートタロットを制作したクローリーも、黄金の夜明け団メンバーだったのでオリジナルの「黄金の夜明け団タロット」を目にしているはずなので、知る人ぞ知る、実はウェイト・スミス版とトート版の原点になるデッキです。
 
そのデッキが公の目に触れることはなかったのですが、1977年にアメリカで出版された「黄金の夜明け団タロット」はメイザースの弟子であったイスラエル・リガルディが1920年代にアメリカへ移住した後、70年代に完全復刻版として出版したものがこのデッキです。
 
1990年代、私がまだ高校生だった頃、アメリカから日本に一時帰国していた時に、雑誌(ムーってご存知ですか?)に「色からモチーフから全て魔術的シンボル」という宣伝文句でこのタロットが紹介されていて、絶対欲しい!と熱望したものです。
 
ようやく見つけたのは、20代後半。
 
ヨーロッパに移住後、まだ魔術結社に入っていなかった頃、アメリカのルイジアナへの出張先で(30代半ばまでは石油業界で働くバリバリのキャリアウーマンでした)見つけたブードゥーショップで(って、どこから突っ込んでいいか分からない話になってきましたね。。。)ようやくこの黄金の夜明け団タロットを手にしました!
 
。。。ところが、
 
カードを箱から出してみたら「やっぱり何がどうして描かれているのか分からない」となってしまい、本当にタロットを理解するのはその数ヶ月後、トートタロットを通して神秘学に触れてからになりました。
 
でもこの黄金の夜明け団タロットも、オリジナルタロットを作る時のインスピレーションになりましたよ!

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1980年以降は特に神秘学を考慮していない、アート重視のタロットカードがたくさん出てきて市場が賑わっています。

いろいろとあるタロットカードの中で絶対的に「正統」なタロットカードというものはありません。

なぜかというと歴史のどこを見るかで判断基準が変わるからです。

数世紀前のゲーム用タロットも、
神秘学の解釈をしたタロットも、

神秘学を考慮していないアート的なタロットも、
それぞれのジャンルで正統と言えます。
 

 
その反面、占いに焦点を当てて考慮すると、神秘学があってこそ占いに使われるようになったので、現代の占いタロットの原点はカード「絵柄」そのものではなくて、根底にある神秘学の「思想」のほうです。
 
タロットカードに「まず絵柄があって意味の言葉がある」あるいは「意味の言葉があって絵柄に表されている」と考えてしまうと、タロットカードの在り方から外れてしまい、オラクルカードになってしまいます。
 
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タロットを本質から知る連載、続きます😃♪

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