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#9「関係」を大切にする / JINENコトハジメ

・ Podcast「JINENコトハジメ」の文字起こしを中心としたpostです
・【文字起こし】の部分は無料でお読みいただけます
・【解説】【参考文献】の追記後は、その部分は有料公開にする予定です

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【Podcast #9】

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【文字起こし #9】

山田:
皆さんこんにちは、JINENコトハジメのPodcast、第9回を始めたいと思います。このPodcastは「自然経営って何?」っていうのを、自然経営研究会の発起人の1人である山田の立場から語っていこうというシリーズです。

毎回、聞き役をお願いしていて、今日は松井さんをお呼びします。よろしくお願いいたします。

松井:
よろしくお願いします。

松井 健太郎(まついけんたろう)

フリーランスで複数企業の業務に従事。
領域は人事や事業開発など。

東大工学部卒業後、3社にて勤務を経て独立。
個人事業主・法人成りなど、自らの実践も通じつつ様々な働き方を研究。

2017年に社員シェアリングサービス「Tonashiba」の立ち上げ・運営を行い、そこから派生し「越境学研究会」の立ち上げも行い、組織と個人の新しい関係性を追求している。
自然経営研究会には立ち上げから携わった後「いち参加者」の満喫を経て、2020年7月から19人いる代表理事の1人に。

山田:
よろしくお願いします。前半は私から説明中心に、後半は2人対話を中心にと思います。
「自然経営を体現する姿勢」って3つあると言っていて、前回、前々回に続いて今日は3つ目、「関係を大切にする」ことについて話したいと思います。ちなみに姿勢の3つの1つ目が「熱量を大切にする」、2つ目が「実感を大切にする」です。

今回の「関係を大切にする」について、3つの切り口から説明します。

1つ目、「関係を大切にする」ときに、関わる「頻度」を高めるっていうことがすごく大事だと思っています。
まず「組織は現象として捉える」と自然経営の概念のところで言ってるんですけど、そう捉えるときの組織の境界線って、私がここにいますっていう雇用契約とか、メンバーシップとかじゃなくて、「私はこの組織の当事者なんだ」って自分で思ってる人までが、その組織の中にいる人になるので、その人がどう思ってるかで決まるっていうのが、組織の境界線だと思ってます。

じゃあどうやって「この団体の当事者だ」って自分が思うかっていうと、一番影響が強いのって、この人は当事者なんだって思う相手と自分が関わってる瞬間、繋がってる瞬間。この人と一緒にやってる自分も当事者なんだって思う感じがすごく大事です。

その一歩先で、繋がりの深さってどうやって出来るかというと、すごい平たく言えば「たくさん関わっている」っていうこと、つまりは量が質に転化するっていう形の話だと思います。なので、いかに量としてたくさん会ってるかっていうものが結構大事になってくる。会ってると言いましたが、「やりとりしてる」とかも含めてすごく大事だと思っています。

これを裏付けるのでいい話だなと思ったのが、「データの見えざる手」って、日立の矢野さんが昔書いていた本覚えてます?日立の研究所の方が、デバイスをつけて人の行動を見るみたいなこと言ってるのですが、あの中で一つの研究所の中で実際に研究してたんですけど、人と人が再会する確率って、最後にその人に会ってからの時間に反比例する。一番最近あった人と一番会いやすいっていうのが定量的に見ましたと書かれている。

それはすごい実感としてあって、「ふと思いついたこれを誰に言うかな?」と思ったときに、ついさっきまでメッセしていた人だと、パッと浮かんで送りやすいじゃないですか。

そういう繋がる頻度みたいなことの多さが、結果的に量が増えていって、同じテーマを深めることに繋がっていって、「だったらこの活動を一緒にやろうか?」って当事者になっていくっていうことに繋がっている。
なので「関係を深くするんだ」っていうところから始めるんじゃなくて、まずはいかに量が増え、関わる頻度が増えるのかっていうところから始めるのが、とても大事な切り口だなと思っています。
今のが1つ目、関係を大切にするっていうときに、まず頻度が大切。

2つ目、ある種この逆効果みたいなことなんですけど、その関係の文脈、「コンテキストを共有する」っていうことはすごく大事だなと思っていて、どっちかっていうと、新しく人が入るときの話として聞いてもらえればと思ってます。

例えばですけど、僕は松井さんと自然経営研究会を立ち上げる前から一緒にいろいろやっていて、「あの当時ああだったよね」とか、すごくたくさん共有してるものがある。だけど知らない人からすると、そこの未知な領域が前提にあると、新しく来た人が僕ら2人の関係に加わるって難しくなったりする。逆に僕らからすると、当たり前の事実すぎて、あえてその新しい人に語ろうとすら思わないことがものすごく沢山あるじゃないですか。

なので、当事者が増えていくときに、過去あったコンテキストをなるべくシェアするっていう振る舞いがとても大事だと思っています。
とはいえ「これどうやるの?」って結構難しいなって思っています。当たり前すぎて語る領域だと思ってないことをいかに語るかっていうのは、あんまりクリアな良い答えがあるわけでまだないんです。少なくとも、人が加わってきたときに、そこにきちんと関係のコンテキストまで共有するっていう意識を持ってることがすごく大事だと思っています。

最後3つ目は、ちょっと今度は切り口が違って、「出来事に関係を見出す」っていうことも大事だと思っています。
自然経営の全体を貫く特徴が三つあるって話をしていて、「あるがままに委ねる」と、「今を起点に考える」っていうことと、「全てが変わり続ける」っていうこと。
この「今を起点に考える」「全てが変わり続ける」っていう前提で世界と関わると、基本的に想定してないことばっかり起こるじゃないですか。
セレンディピティっていう言い方をしたりもすると思うんですけど、全く想定してなかったんだけど、後から初めて意味がわかることいっぱいある、っていうのはすごく大事な世界の捉え方だと思っています。そういう後付けかもしれないけど、出来事の関係に意味を見出すっていう振る舞いはとても大事だと思っています。

これって具体例で言えば、自然経営研究会っていう団体が立ち上がったこと自体がすごくそうじゃないですか。「社団法人作るぞ!」とかじゃなくて、「こういう組織の話できる仲間が増えたらいいね」っていうところから、月1回の研究会を何回かやって、結果として社団法人になっていきました。
その後2年半ぐらいやってる活動も、「これやるぞ!」とかじゃなくて、結果そこで関わった人と巡り合ったタイミングで何かやったことが今の形が出来ている。後からその関係を見出していくっていうことは、すごく積み重ねとして大事だなと思ってます。

今の3つ、関わる頻度をどう高めるかっていう話と、関係の文脈、コンテキストを共有しましょうって話と、出来事同士の関係も見出していこうっていうことがとても大事になっていると思ってます。

松井:
ありがとうございます。こうやってここからいろいろ質問していったりっていう感じでいいですか?

まさに「頻度」ってすごくその通りだなって思ったときに、頻度って「濃さ」と「長さ」みたいなのがあるような気がします。
「関係を大切にする」って言ったときって、植物で言うと、蒔いてすぐ植物を引っ張ったら伸びるわけじゃなくて、ちゃんと水あげて時間かけてみたいな、その時間軸ってどうしてもこう出てくると思うんですけど、その辺の時間軸に関して、山田さんの感触というか、どういう捉え方をしているのかなっていうのをぜひ聞いてみたいなと思いました。

山田:
おっしゃる通りで、時間軸が重なるのは大事なって思ってます。前回の「実感を大切にする」っていう話をしていたときにも、やっぱり体験を共有してるってすごく大事だなと思っています。

例えば僕ら2人はもともとTonashibaというサービスを一緒にやるところから関わり始め、自然経営研究会の活動を一緒にやって、他の活動もいろいろ一緒にやったりしていると、共有してる資産がいっぱいあるじゃないですか、体験として。っていうことがすごく大事だと思っていて、その深さとか濃さみたいなことも時間とともに培われるんだなと思ってます。

という話は大事だなと思いつつ、今聞かれて改めて自分が言いたいことを確認したのは、そもそもの姿勢として、関わる頻度そのものが大事なんだと思うっていうことを大前提として置いておくのはすごく大事だと思っています。
なぜかというと、いわゆるヒエラルキーがあって役割が決まっている組織だとしたら、私の役割はこれです、あなたの役割はこれです、っていう前提で、役割同士で関わるっていう振る舞いができる。
けど自律的に自然経営とかやっていると、それがないので、どうやって人と人が繋がるかっていうことの力学が働くことがすごく大事になる。その振る舞い自体を大事にするっていうことにより重きを置いてこの言葉を使ってるなって聞かれて逆に思いました。

松井:
ありがとうございます、面白いですね。
そうなったときに、関わる頻度を高めるっていうんだけど、特に自律的な組織とかで言うと、コミットメントの量って多い人もいれば、少ない人もいて、多い人だけでうまく回すっていうことじゃないような気がしていて、そこの頻度が少ない人とかそこのグラデーションってどう扱うのが良さそうなんだろうなっていう、そこの見解ってどうですか。

山田:
コンテキストを共有するって2つ目に言ったやつとかも、心がけとしては大事なんですけど、油断するとやっぱり、よく知っていてたくさん一緒にやってきた人たちの方が気持ちいいし、早いし、うまくできるから、その人たちとやりたくなるじゃないですか。
それは別に悪いことじゃなくって、より前に進む力だと思うんですけど、一方でそれがある種の排他性みたいになっちゃう可能性も秘めているのは、すごくよく分かる。それが適切なタイミングで代謝するとかは、全体の活動を作る上ではすごく大事なんだろうなとは思います。

ただ、人の自然な気持ちとして、たくさん関わってきて気心が知れていて話が通じる相手とやった方が楽、気持ちいいと思いやすいのはよくわかるので、そこの塩梅はとても難しい。自然経営研究会の活動をやっててもすごく思います。昔から関わってる人ほどたくさん一緒にこれが増えていきやすくなるので、混ざりかたは難しいですねっていうのは、こういう活動のチャレンジだと思います。

松井:
たしかにたしかに。
あともう1個聞きたいことが出てきたのが、2個目の文脈を共有するっていう話で、ここで話されたことで思い出したのがSECIモデル、知識創造のあの暗黙知の部分が多分イコール文脈って言いやすいかなと思います。

暗黙知があったときに形式知っていうのはその対極であったときに、自然経営ってどんな形式知があるとか、あえて形式知を作ろうとするのはすごくポイントになりそうだなって思って。たとえば宗教の経典とか、ルールブックとか。だからこそMission/Vision/ValueとかCredoとかで明文化したがるみたいな話があると思う。そこに対する、今の文脈で言ったときにどう捉えてますか?

山田:
別の観点で思っていることとして、コンテキストの共有って結構フロー的な情報、流れてったものをいかに共有するかみたいなのあると思う。形式知って切り取り方をしたときに、ストックされてる情報の大事さって別にあるなと思っていて、それこそMission/Vision/Valueとか、この活動で大事にすることが言葉として書かれていて、一旦はわかることが一方で大事だなと思っています。

ただ、フロー的な感覚とか、そこに付随した感情みたいなこととはやっぱり違うので、ストックの情報って最低ラインの担保ぐらいにしかならない気がするんですね。
誰が見ても最初の一歩になるところまでは形式知にして準備しておいてあげると、活動の底上げがすごくできるなって気はします。それがあればあるほど、最初の一歩目、自分で入ってきやすくなると思います。

でもそれがどれだけあったところで、人の繋がりとか、共有する感覚とかは形式知にならないんじゃないですか、たぶん。
そこはうまくデザインできるといいなと思っているし、自然経営研究会の活動でいえば、今はストック的な最初の一歩が凄く少ない状態なので、最低ラインとして作ってあげるっていうことも、次のステージに行くのはすごく大事なんじゃないかと感じてます。

松井:
確かに。伺ってて思ったのが「全ては変わり続ける」って、その後におっしゃってたところで、ストックにするって要は動的な文脈を静的に1回切り取るっていうことだと、切り取った瞬間にやっぱすぐ劣化するじゃないですか。次の瞬間には。

ここをどう扱うかっていうことと、あと切り取ったものっていうのはその時点のものなんだよっていう、それも多分一つのコンテキストだと思うんですけど。変わり続ける上で、切り取ったものっていうのは風化するんだけど、それは悪じゃないよねっていうリテラシーというか、捉え方というか、っていうのがすごく大事なんだなって今思いました。

山田:
完全におっしゃる通りだなって思ってます。一方で、やっぱり静的にする、切り出すっていう営みをするからこそ得られる効果がたくさんあるじゃないですか。
そこを逆に過度に悪だとは思わない、逆にそれが絶対不可侵な聖典ではないよっていう距離感でそれを見るっていう関わる側の姿勢も大事。どちらもあって初めて成り立つんだなってとても思いました。

松井:
いや、そうなんすよね。実際の組織見てても、ミッションビジョンを作る工程で、そこに関わってる人たちに共有される文脈というか、あれをぎゅっと作る工程ってすごくチーム作って文脈作る上では重要。
逆にできたものに対して外から入ってくる感じになると、そこの内と外が生まれる。そこをどう扱うかっていうところは丁寧に認識して扱えるっていうのは、すごくポイントになってくるなって今話してて思いました。

山田:
ありがとうございます。ということで今日は「関係を大切にする」ということについて起点にしつつ、他のとこに繋がる話が今いっぱいできたなと思います。
こんな感じで一つの切り口で見ながら他の観点からも自然経営を一緒に見ていくことが今後もこのシリーズできればなと思っています。
ということで今日はこれぐらいで終わりたいと思います。ありがとうございます。

松井:
ありがとうございました。

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