見出し画像

「個人」「組織」「社会」の新しい一貫性

●「個人」レイヤーの自律の尊重。
●「組織」レイヤーの目的の成就。
●「社会」レイヤーの異質の共存。

これらの3つのレイヤーの新しい一貫性をどう実現するのか?というのが、自分自身が今向き合いたい問いなのだ、と改めて理解した。

そもそも「新しい組織」を語るときに、人は、世の中は、そして何より自分自身は、いったい何を大事にしたいと思っているのか?

ふと、組織再考計画という研究プロジェクトでも採用した「個人」「組織」「社会」で整理してみようと思い立った。
それぞれにおける大きな流れがあり、その新しい一貫性が問われている。

●「個人」レイヤーの自律の尊重

まずは「個人」のレイヤー。
ここでいま最も大きな流れは自律の尊重だと言える。

「自律」。よく聞く言葉だが、これもイマイチ定義が難しい。
これは、一人一人の「能動的な選択が保証される」状態のこと、と捉えるとスッキリした。言い換えれば、人が、自らの意志に基づいて選択し、行動することが許されている状態だ。

人は一人一人が異なる個性を持っている。「平均的」な人は誰一人として存在しない。

大量の人間を、限られたリソース、限られたテクノロジーを用いて、不平等や不満足を最小限にして扱う必要がある状況では、「平均」を「規格化」することに意義があり、正義があった。

しかし、モノ不足による不平等や不満足がなくなり、一人一人の「個人」を扱うことが可能な環境が整った。その中では、一人一人をユニークな「個人」として尊重することが重要になる。

●「組織」レイヤーの目的の成就

次いで「組織」のレイヤー。
ここにおける大きな流れは、組織としての目的の成就にある。

組織が何かの目的を成し遂げることは、昔から何一つ変わらない。
むしろ「共通の目的のために複数の人が協力する」ことが組織の存在意義だとすれば、目的の成就は組織の定義そのものに含まれる。

一方で、最近の傾向として、この目的の持つ性質が変容してきた
端的に言えば「達成」「所属」のどちらを優先するかが問われるようになってきた。

その背景には、大きく2つの流れがある。

1つ目は、そもそも「組織」が多様化・多層化したこと。
2つ目は、企業組織においても「人的資本」の重要性が増していること。

1つ目については、働き方の多様化(複業や個人事業など)によって「就社」とも呼べる状況がますます変わってきたこと。
また、オンラインでの繋がりが当たり前になったことで、地理的に離れた人のコミュニティが日常に溶け込んできた。「物理的に近い」ことは、人との関わりにおいて考慮される一つの変数に相対化された。

2つ目については、これまでの企業組織が「事業の成長」や「財務的なリターン」がメインの目的とされてきた状況が変化している。実態としてはもちろん多様な組織のあり方が存在したし、何より人や組織を蔑ろにしては、長期的な成功は覚束なかった。
しかし、少なくとも企業組織としての「大義名分」みたいなものは、「事業」や「財務」にあった。

折しも「人材版伊藤レポート2.0」も発表された。企業においても、人・組織に対する向き合い方が大きく変わるタイミングでもある。

抽象的な言い方をすれば、組織としての「目的の成就」は、何かを達成する目的(機能体的な目的)もあれば、所属や関係性そのものが目的(共同体的な目的)もある。

これまでは前者の達成する目的(機能体的な目的)が主流だった。
しかし、これからは達成(機能体)と所属(共同体)のどちらを優先するのか、それ自体を組織が選択できる、もしくは選択せざるを得ない状況へと変わった。

●「社会」レイヤーの異質の共存

最後は「社会」のレイヤー。
ここは非常に多くの論点を内包するが、敢えて大きな流れとして括るならば、それは異質の共存だと捉えられる。

多様な「個人の自律」、多様な「組織の目的」が同じ時空間の中で共存在し、それぞれ尊重される世界。

当然、それぞれに大切にしている価値観、目指している方向性が異なれば、摩擦や衝突が生じることもある。
それでもなお、「異質なものが共に存在していい」というコンセンサスが前提となり、その多様性を共存させようとする営みそのものが重視されていく。

「個人の自律の尊重」と「組織の目的の成就」の一貫性。

ここが今の組織運営において摩擦が発生している大きなポイントなのだろう。
端的に言えば、一人一人の個人の自律的な選択の集合体が、必ずしも組織の目的の成就に繋がるとは限らないからだ。

これまでの企業組織の運営では、「事業」や「財務」の共通目標(機能的な目的)の達成という大義名分があった。それを達成することを「前提」に、その範囲の中での個人の自律の尊重を考えていた。

しかし、今は「個人の自律の尊重」と「組織の目的の成就」を等しく扱おうとしている。
これまでのように、組織の目的達成の「範囲内であれば」という前提条件付きで「個人の自律」を許容する、というやり方は通用しない。

個人の自律を前提条件なく尊重し、その上で、「組織の目的」を成就するのである。
これを実現するには、事業・財務・組織の全体としての「モデル」の新たなデザインが必要になる。言い方を変えれば、これは決して「組織」だけでは扱いきれない問いの設定なのである。

全体としての「新たな一貫性」に向けて

「個人」と「組織」の一貫性でいえば、たとえば、purposeによるアラインメントがある。組織の成就したい目的に対して、個人が「自律的な選択」として参画するのである。
(先ほどの組織再考計画の文脈で言えば、その自律的な選択は外発的な動機"サバイブモード"ではなく、内発的な動機"自己表現モード"であることが大事になる)

しかし、purposeがAlignしていれば万事がOKというわけでは決して「ない」。
持続可能な「事業モデル」、関わる人に健全な対価が行き渡る「財務モデル」、そしてそれを個人の自律が尊重された上で実現する「組織モデル」がセットになって初めて、全体として健全な一貫性が実現する。

「組織」と「社会」の一貫性においても、ものすごく多様な論点がある。
その一つとして、経済活動を取り巻く社会の仕組みに関しては避けて通れない。内山節は広義の「仕事」と、その中に含まれる狭義の「稼ぎ」(=賃金労働)を区別した。このあたりの「お金」と「働く」の関係も問い直される。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?