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社団法人の解散を終えた、5年間の総括

2018年7月25日に登記された一般社団法人自然経営研究会は、2023年1月31日をもって解散しました。活動自体は2017年12月から始まっていたので、足掛け5年2ヶ月ほどの活動をしたことになります。

解散の登記、および一連の事後的な事務作業もほぼ終わったので、これを機会に、改めて個人的にこの活動の総括をしてみようと思います。

人生初の解散公告

【概要】 自然経営研究会とは

自然(じねん)経営とは?

せっかくの総括の機会(たぶん最後の)なので、改めてその定義から振り返ってみたいと思います。

そもそも「自然(じねん)経営」とはなにか?
最も端的に表現するならば、自然の摂理に沿った経営と表現しています。生態系を育むように、あるがままに委ねながら、物事の流れに沿うような経営を自然(じねん)という言葉で表現していました。

ただ、この「自然経営」というのは、言葉が先に決まりました。これが名付けられたことによって、後から、この言葉の周りに多様なナラティブを積み重ねていきました。

個人的には、「自然経営とはなにか?」について、自分なりの思考を整理し、Podcastシリーズを取ったり、その文字起こしをnoteにまとめたりもしました。ただし、このコンセプトの定義自体も「自然の摂理に沿って」捉えるので、「明確なオーソライズ」みたいなものは存在しません。多くの人によって支持される定義は長い時間に耐えるし、逆に支持されないものは廃れていきます。

自然経営研究会という組織の特性

当初は単発的な研究会(というか単なるイベント)として始まった自然経営研究会でしたが、色々な変遷があり、2018年7月に一般社団法人として登記しました。発起人として、当時ダイヤモンドメディアの代表だった武井さんと山田の2名で代表理事として登記しました。

概念的なレベルから語ると、「自然経営を誰よりも体現する」方向に進んでいました。(より正確な表現をするならば、「私は」そういう意図を持って関わっていました)

より具体的なレベルで言えば、
・ボランタリーな活動が中心
・固定的な報酬はゼロ、売上が上がったものは関係者で分配
・分配は当事者で話し合って決める
・代表理事は発足時点では2人、2期目から8人、3期目から17人に(ただしこれは手続き上で登記されなかった)
などなど。

「どれくらいの人が関わってるの?」当時よく聞かれて、とても答えづらい質問でした(笑)。コアな人は8−12人、ゆるくは20-30人、イベント参加とかは延べ数百人、とかでしょうか。

具体的な活動内容

基本的には「やりたい人が、やりたいことをやる」活動でした。これ自体が、「自然の流れに沿った」運営を体現していたと思います。
具体的な活動は、細かなレベルでは色々とありましたが、大きくは以下の3つでしょうか。これも最初から設計していたわけではなく、自然とこういう形に収斂したものです。

● Monthly Conference(MC)
発足から3年ほどは毎月1回のイベントを開催し続けました。原則、第2火曜日の夜19時から、と固定していました。結果的に、この「定期的な場」を持ち続けることが活動の固定的なリズムとして機能したと言えます。ここの企画・運営に固定的に関わる人が5-8名程度、あとはそのときどきで入れ替わりながら。

参加料は「1000円以上」で、投げ銭的にプラスアルファは参加者に委ねました(だいたい平均値が1500円くらいでした)
延べ51回開催し、計測可能な範囲では延べ参加人数は2,145人です。過去のイベントのアーカイブは(だいたい)このPeatixグループに残っています。

● Monthly Gathering(MG)
これは途中から、運営的なことを中心に定期的に語る場も月に1回設けられるようになりました。毎月第1水曜に定期開催していました(確か…)

● 自然経営塾
経営者や組織の実践者に向けた連続講座として、全4日程の講座を2回開催しました(1回目2回目)。結果的に、きちんと参加料ももらったほぼ唯一の活動になりました。

● Facebookグループ
ちなみに、活動は基本的にFacebookグループを起点に行っていました。(2022年末をもって休止しましたが)
最終的には2,300人ほどが参加して頂いてました。


独自に実態調査もしました

【総括】 この活動の意義

では、ここからは個人的にこの活動の総括をしてみたいと思います。

自然経営研究会が「できたこと」

自然経営研究会という「場」を改めて俯瞰したときに、あのタイミングで、日本の中で、この場が果たした機能や役割は何だったのか?個人的に総括するならば、大きく3つに分かれます。

①共通の価値観や問題意識を持つ人と出会い、対話する
自然経営研究会が立ち上がった2017年12月は、『ティール組織』(英治出版)が日本語で出版される直前でした。その時点では、中央集権的ではない、自律的でフラットな組織運営を語る「言葉」も「場」もありませんでした。
この場が立ち上がったことによって、それまで属人的な関係の中に留まっていた「新しい組織のあり方を模索したい」という人たちのつながりが顕在化し、また多面的なつながりが生まれていく機会になったのだと思います。

ちょうど『ティール組織』が発売されたというタイミングの良さも相まって、色々な繋がりが生まれていきました。

個人的にも、この場がなかったら出会えていなかった人、いただけなかった機会が数え切れないほどたくさんあります。このタイミングで、この団体の活動に携われたことは、自分自身が「新しい組織のあり方」を探求していく上で、大きな時期になりました。

2018年1月の「第1回」の開催

②新しい組織の実践を「実験する」
個人的な総括として語るならば、多様な「実験」ができたこと自体が、この場の持っていた役割だったと思います。
当時、『ティール組織』が日本に紹介されたタイミングでもあり、色々な新しい組織運営に対する興味・関心がとても高まっていました。一方で、それを自分の組織でいきなりゼロから実験することは難しい。

そんな中で、「失敗しても誰も(そこまでは)困らない」というこの法人は、色々な実験をするのにちょうどよい場を提供したように思います。

③新しい概念を「練り込む」こと
先ほども少し書きましたが、「自然経営」という言葉が先に名付けられ、その後から「中身」を練り込んでいきました。中心的な役割は、発起人である武井さんと私の2人だったとは思いますが、毎月毎月イベントを開催し、参加者のみなさんと対話を重ねること、ゲストスピーカーに色々と話してもらいながら深めることなど、決して「2人だけ」でやったとも思いません。

個人的には、「自然(じねん)」という日本語をつけたことは、「日本的な生命的な組織」に関して探索を続ける機会をもらいました。特に、個人的に敬愛する河合隼雄さんの著作の中で「自然モデル」という言葉を見つけたことは、「中空均衡構造」を切り口に新しい組織を考える機会になりました。

改めて振り返ってみると、この5年間で「日本的」な組織にこだわったことは、今の自分の令三社における探求と実践の礎になっているんだなと改めて思います。

最終的には「経営」と「思想」を分けて捉えた

自然経営研究会が「できなかったこと」

できたこともあれば、当然、できなかったこともあります。
個人的に総括するならば、「継続性のある創造活動ができなかった」ということに尽きます。

原則としてボランタリーな貢献に基づいて運営されたこの団体は、ポジティブに言えば、色々な人が、その人なりの興味・関心に基づいて関われる「のりしろ」の裾野がとても広かった。

ただし、この柔軟さをネガティブに語るならば、その活動は個人の「熱量」に完全に依存しているのであり、まったく予測も管理も調整も不可能なこの「熱量」に依存している以上は、活動全体のボラタリティも非常に大きいことが続きました。

毎月1回のイベントなど、様々な活動を重ねていましたが、実態としては少人数の一部の人の「属人的な頑張り」によって支えられていた面も少なからずありました。

「実験の場」としての機能は大いに果たせた一方で、持続的に活動することによって、新しい創造活動につなげることは、必ずしもできませんでした。

探求し続ける「問い」

改めてこの5年間の総括をしてみながら、この活動を通じて「解けていない宿題」をもらったのだと思います。

この活動を始めるよりもさらに前、2017年3月にスタートアップのCOOを退任したときに託された「宿題」は、「個人の才能を最大限に発揮することに全力で賭けながら、同時に、組織全体の成果の最大化をするような組織運営の方法はないのか?」といったものでした。

『ティール組織』の文脈で言えば、際立って「オレンジ(達成型)」の色合いが濃いスタートアップの世界において、組織の力学をある意味で個人に「強いる」のではなく、その人の可能性を最大限に発揮させることで、結果的に「全体の成果」も最大化される。そんな組織運営の可能性を探したくて、日本・世界の様々な知見を探しに行きました。

その延長で、武井さんと色々な活動をともにするようになり、『ティール組織』やその周辺の色々な人と出会い、新しい組織のあり方の可能性を感じることもできました

一方で、個人の熱量に「だけ」最大限に賭けた組織運営という反対の極をやってみたことで、そこに秘められたポテンシャルと、同時に限界も実感しました。自分自身が次に探求していることは、この「次」にあるのだなと思います。

十数年、基本的には「ビジネス」の世界に生きている立場として、この5年間で味わった両極を踏まえた上で、どのように「持続可能な形」で、心地よいと思える組織運営の姿を見いだせるのか

次のフェーズで見えたことを、また5年後くらい?に総括できるように、楽しんで進んでみたいと思います。

さいごに

改めて総括しながら、このタイミングで、日本という場において、この活動に関われたことを文字通り「有り難い」と思います。
個別に言い始めるとキリがないのですが、自然経営研究会を一緒に作ってこれた仲間たち、また何らかの関わりを持っていただいた多くのみなさん、改めて、ありがとうございました!

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