思弁逃避行 05.明日のための空腹

【05.明日のための空腹】

 眠るに眠れず午前二時をまわった頃の話である。腹が減ってたまらなくなる。

 ラーメンが食べたい。カツ丼が食べたい。ハンバーガーが食べたい。とにかくがっつりとした何かがたべたくなる衝動は誰もが体感したことがある。そしてその気持ちをどうにもできずになにかを食べてしまうのだ。なぜなら私たちが生きる現代には、コンビニエンスストアなるものがあるからだ。二十四時間営業故、ポテチとかカップ麺とかがいつでも買えちゃうのだ。だから買っちゃう。食べちゃうよね。そんなの。

 しかし私の家から最寄りのコンビニはあまり品揃えがよくはない。いいなと思った商品がすぐに店頭から消える。期待の新商品もすぐに店頭から消える。可愛くて接客が丁寧な店員さんもおよそひと月ほどで毎回消える。こんなに悲しいことはあるか。それでもロングセラーのポテトチップスやグミの類は並び続けるので通ってしまうのだ。たかが空腹になんて情けない。

 そこで私はそんな人たちと自分自身に一つ物申したい。その空腹は明日の自分のためのものであって、今日の自分のための空腹ではないのではないかと。人のものを盗ってはいけないという道理は、その対象が明日の自分自身だったとしても同じことである。つまり明日の自分をおざなりにして今日の自分が何かを食べるということは、食欲の窃盗、食って奪って明日へと逃げる食い逃げに等しいことになりうる。断じて食べてはならない。

 うまい朝食を食べてくれ。明日の自分。おやすみなさい。

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