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タイトルに惹かれた美術展(2)「私たちは何者?ボーダレス・ドールズ」

タイトルに惹かれて出かけた最近の展覧会、2つ目は渋谷区立松濤美術館で開催中の「私たちは何者?ボーダレス・ドールズ」です。


◆「ボーダレス」な人形??

展覧会チラシ

この展覧会は、タイトルに惹かれたというより、タイトルの意味がよくわからなくて、逆に気になってしまった、というパターンです。

さらに、タイトルだけでなくチラシの力も大きかった。

画像が村上隆さんのフィギュアだけなら、何回か見たことがあるので、たぶん酷暑の渋谷まで出かけなかったと思います。チラシに載っている左側の古い人形、この存在、この方の表情が異常に気になり、引き寄せられました。

◆古い人形の正体は…

チラシ左側に配置されている、独特の雰囲気が漂う存在は、平安時代の呪詛人形でした。強い呪いが込められていたから、チラシから異常なパワーを感じたのかもしれません。

この呪詛人形には、「ふじいふくまろ」という方の名前が胴体に2つも書き込まれています。

解説によると、平安時代の貴族社会では、憎い相手がいた場合、陰陽師に頼んで人形代(ひとかたしろ)にし、軒下か井戸に埋め、呪殺してもらったとのこと。この人形も、平安京の井戸のあとから発見されたそうです。

◆ボーダレスなドールズたち

会場では、この呪詛人形からはじまり、雛人形や博多人形、リカちゃん人形、生(いき)人形、マネキン、蠟人形、ラブドール、フィギュアまで、さまざまな人形が展示されていました。

特に興味深かったのは、明治期に「彫刻」という概念が西洋から入ってきて、「美術」の枠組みから人形が排除されたという話。しかし、その後、「人形芸術運動」がおこり、昭和初期になって人形は「工芸」ジャンルで美術作品と認められるようになったそうです。

さまざまなジャンルのボーダーラインを飛び越えている人形たち、ということで、このタイトルになったことがわかりました。

◆英語解説は…

各セクションの解説には英語訳がありました。

章解説から、呪詛人形について書かれた部分を引用します。

“Hitokata-shiro” is a pair of wooden dolls made in Kyoto early in the Heian period for the purpose of killing people with a hex. The bodies are realistically depicted, and the names of the targeted man and woman are inscribed in ink on the torsos. These dolls were created to embody the people someone wanted to curse.

辞書を引いた単語は、hex「呪い・まじない」、embody「具体化する・体現する」、curse「呪い」。

呪いのパワーで暑さも吹き飛ぶ展覧会でした。

#美術展
#英語がすき


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