ドゥーワタッカの衝撃

2023年3月4日『ネタパレ』でランジャタイが披露した、「ドゥーワタッカ」というネタの衝撃が強すぎたので、自分の感想を言語化する意味で書き記したいと思う。
芸人からすれば、ネタを言語化されるほど無粋なことはないと思うけど、ちょっと感動がデカかったので書いておく。

衝撃は受けたのには、ただ面白かったということに留まらない何かがあった。それはこのネタが、彼らがTVの人気者になってからの総決算みたいな、金字塔的なネタに感じたからだと思う。

そう感じた理由の1つが、お笑いサンプラー国崎渾身のリズムとストーリーの繋ぎ、グルーヴ感が気持ちよくて最高だったこと。
もう1つは、2022年地上波TVの露出が増えていく中で、幾度となく披露されてきた吉本大物芸人を取り込んだネタは、オマージュでありリスペクトであることを改めて示すかのような内容だったという、2つの点だ。


⓵ お笑いサンプラー国崎の真骨頂

私は日頃から勝手に、国崎さんは自分の琴線に触れたり、たまらなく面白いと感じたあれこれを、切り取り組み合わせてネタに登場させ、「サンプリングしている」と感じていて、同感する人も多いと思う。

ウッチャンナンチャンやダウンタウンの似顔絵パネル、共演したキンタロー。さんの画像など大物やメジャーな芸人さんを取り入れたネタから、劇場で長く一緒に活動していた若手・中堅芸人たちの名前やネタを取り入れたものまで。世に云う大人の事情というものを軽やかにすり抜け(ているように見せながら)、ニコニコと自分の世界観の中でつなぎ合わせていく。

さらにランジャタイのネタで特徴的な、テンポや擬音。今回はそれらのテンポと擬音、サンプリングのネタのリズムとストーリーの繋ぎが絶妙で、ネタ終わりの余韻が非常に気持ち良かった。

「ダッタッタッタッ」「ドゥッドゥッドゥッドゥッ」などの擬音、伊藤さんが吐いた「立つからじゃん」というセリフに反応し、「タツカラ♪」とリズムに入れ込んできたのも、めちゃくちゃ変でちょっとダサいのがカッコよく気持ちがよかった。国崎さんのその時そのタイミングで"気持ちいい""面白い"と思ったことを入れ込むアドリブ(?)が絶妙にハマった。

漫才を見ていて「気持ちいい」という感覚を得ることはたまにあるけど、うまい掛け合いとか、気持ちよくハマるワードセンスとかそういうことじゃない、お笑いで感じる初めての気持ち良さがあった。

また現時点で私は映画を見ていないが、RRRの音楽を彷彿とさせるという意見もTwitterで散見された。もしそうだとすれば、自分が見て良いと感じたものを鮮度抜群の状態ですぐに取り入れ、サンプリングしているのがやはりすごい。

② 吉本大物芸人へのリスペクトとオマージュ

2021年M-1ファイナリスト出場以降、一気に地上波TV番組への出演が増えたランジャタイ。私も多くの人たちと同じくM-1で彼らを知り、気になりつつも目を背けていたけど、去年の今頃にはもう無視できない存在になっていた。

▼ その頃の記事

TV出演が増えていく中、吉本興業の大物芸人を登場させるネタを何度も披露し、TVや芸能関係の大人たちや視聴者にスリリングな印象を与え、本来の魅力と相乗効果で彼らは認知度をどんどん上げていった。私もそこにワクワクさせられた1人だ。
今回の『ドゥーワタッカ』というネタでも、お馴染みとなった国崎さんお手製オール阪神巨人師匠の画像が張られた全身パネルと、浜ちゃんのかつての大ヒット曲『WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント』が登場した。

吉本興業の養成校であるNSCでトガリすぎてクビにされ、そこから事務所を転々とし、フリーのイベンターにボラれたりカレー屋ライブしたり密室ガソスタバイトしたりと、紆余曲折を経てTV出演のチャンスに辿り着いたランジャタイ。そういう芸人の苦労話はよくあるものの、NSC入学費30万円(2人で60万円)の支払いという伏線を、吉本芸人をこれだけ自由にサンプリングできる状況になって、文字通りここまでしっかり”回収”した芸人も、他にいないのではないか。

そして今回一番驚いたのは、『WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント』の楽曲使用だ。今までは漫才の中で国崎さん自身が口ずさむだけで(それもグレーなんだろうけど)、実際に楽曲を使用したのは初めてではないだろうか?吉本からこのネタのために楽曲の使用が正式に認められたのだとしたら、なんだか本当に感慨深い気持ちになってしまう。

漫才の内容は、口で説明してもよくわからないと思うので割愛するが、その内容には、突然出てきた自分たちにこの1年自由にさせてくれた吉本芸人をはじめとする人たちへの感謝と、何より今まで中々会えなかったTVの中の芸人を間近に接した中で感じた、お笑いに対する圧倒的な体験や感覚、まだ自分たちに見えていない道を進んできた大先輩たちへの、彼らなりのリスペクトが込められた内容に私は感じた。

蛇足も蛇足だが、こうしたパネルや楽曲など著作権が発生するものを扱うには、許可取りに多くの労力を要することは素人の我々にも容易に想像がつくし、現に彼らのYouTubeチャンネルなどでも、許可取りをめぐるあれこれがおもしろエピソードとして散々語られていた。そこには彼らが所属するグレープカンパニーのスタッフの理解と尽力も、大いにあるだろう。そしてそれは事務所スタッフが、彼らの芸風やその人間性を受入れているからこそだろう。

蛇足も蛇足、お笑いオタクがどこにしゃべるところもないからここでしゃべる話なんだけど、グレープカンパニーは高橋英樹・真麻親子が移籍したあたりから気になりだした事務所だった。改めて調べると、2019年2月に髙橋親子が移籍、9月にランジャタイが所属していた。
ランジャタイ所属前、2017年の少し古い記事になるが、ここでグレープカンパニーの中村社長は、第2のサンドイッチマン、第2の永野を生み出したいと語っている。

ドゥーワタッカに話を戻そう。

今までもそうだったけど、今年に入ってからの2人を見ていると、インフルエンサーと化した自分たちを、周りにもっともっと存分に使ってもらって、自分たちも楽しんでいる姿がますます楽しい。
この漫才がなんとなく彼らのTV人気者元年の集大成という感じがしていて、彼らの周辺のオモシロイやクダラナイやドウシヨウモナイが、もっともっと広くとんでもないところまで広がっていくことを、感じさせるし、そうなっていく。もっと見てたいし、見届けたい。楽しみ!!

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