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微妙な気分になるリレーサスペンス音楽小説「ショパンの手稿譜」

少し前に、TVで草なぎ剛が主演してる「スペシャリスト」ってのが、予告で、残された楽譜の謎、とかいってるので、きっとたいしたことではないんだろうなぁと思いつつ、一応は音楽ネタでどんな陳腐なことになるんだろう、といういじわるい興味もありつつ見たわけですよ。そしたら、なんと楽譜の音名を拾うと、、、って類でがっくりというか、いまだにそんなところからしか謎はもってこれないわけって思っちゃいました。まぁ、TVドラマで妙にマニアックで凝った謎をやっても視聴者がついてはこれないので、一番ありきたりなところに、最後ほんの少しひねる程度しかできないんでしょうけど、、、それでもねぇ。もう使い古されすぎて、使うのも恥ずかしいところから抜け出せないとは、、、という気分にはなりました。

TVドラマでいろんな社会を描くことってありますけど、たとえば刑事ドラマをみていて、殺人現場に駆けつける主役の刑事、みたいな風景はお約束なわけですが、現実の殺人事件があった場合は、そういう風に刑事が集まるようなものではないらしい。そのように、世の中はドラマでそうなのかと勝手にイメージは作られていても、実際はそんなんじゃないよってことだらけなんでしょね。
で、実際に世の中にはいっぱい小説やドラマがいろんな職業や現場を舞台に描かれていて、真に迫るとか評されたりもするわけだけど、本当にその現場を描けてるかというとけっこう微妙なんでしょう。それよりはサスペンスや劇的な部分を盛り上げるために、現実にはないようなことも描くこともあるでしょうし、きっとその職業や現場を知っている人には、そりゃないで!ってことがけっこうあるはず。それを知らない素人は、そうなんかぁ、というかそこにのめりこめる作品の方が、楽しむ側としてはいいわけで、別に現実と同じであるかどうかなんて気にしてないんでしょう。そこにフィクションの良さ、楽しみであるのもたしか。それでも、その場を知っている人は、知っている分、そんなんないわぁ、と思わされたときの興ざめ感ってのもあるのが、ちょっと悲しい。。。
で、ドラマや小説には、刑事物をベースとして、医療ものやら、ショービジネスものやら、音楽ものやら、それこそいろいろあるわけですけど、きっと、わたしたちは気づかないけれど、そういうのを職業にしている人たちはみながら、そんなことを思ってるはずなんですよね。そんなことねぇよ、とか、こんなの見たことないとか、、、

そういう実際の現場と違うという興ざめ感以外に、もう一つあるのが、知識が生半可で間違ってるような間違ってないような、なんか変な気分にさせられる場合。これもけっこう読んでいて悲しい。これもその分野に詳しい人に限って気づいてしまうことだろうし、知らない人にはそうなんだぁ!と思って読み過ごされることが多い。ただ、さっきの現場感でよりリアリティやサスペンスを盛り上げるために意識的に現実とは違うように描くというのとは違って、こちらは単に書き手の知識不足や調査不足の可能性が高いように思います。。。

さて、ジェフリー・ディーヴァーといえば、体が不随にして天才的な分析捜査官であり、手足となる部下たちを動かして猟奇的な殺人事件を解決していく「ボーンコレクター」に始まる「リンカーン・ライム」シリーズという大ヒット作を生み出した作家なわけですが、今回紹介する「ショパンの手稿譜」はそのディーヴァーが旗振り役となって、15名の作家が執筆したリレー小説です。
題名からわかるように、楽譜がこの小説の重要アイテムなわけですが、さらにそれをめぐってのサスペンスやどんでん返しが満載という、リレーで音楽でサスペンスな小説です。なんて盛りだくさんな。

さて、なぜこの小説を紹介するかというと、冒頭の話からもわかるように、微妙な音楽がらみの違和感があるからなんですね。ショパンの手稿譜というなんだかクラシック音楽の王道を行きそうな作曲家を題材にもってきたのにってところが。。。
冒頭1ページ目、ポーランドでもトップクラスのピアノ調律師が、調律を終わって弾き始めるのが、、、、アイネ・クライネ・ナハトムジーク、、、ピアノ曲でない。。。。そもそもピアノで弾きたい曲だろうか。。。というところから、すでに香ばしさが感じられてくるスタートです。翻訳する側も音楽用語に少しなれてないのか「楽譜原本」という聞いたことない用語が冒頭から出てきたりします(オリジナルの英語がどうなってのかも気になりますが)。

で、15名がリレーしていく(冒頭と結末はディーヴァーが書いていますが)のですが、けっこうハードボイルドというか、銃を撃ったり、拷問したり、血を流すシーンが多く、肝心のショパンなネタが出てくるところはとっても少ない。きっと書き手もそういう方向は手慣れていても、音楽系のことはなれてなくて、そっちにはなかなか筆が進みにくいのかったのかも。それだけたまに音楽に関する表現がでてくると微妙に違和感があってこっちとしては気持ち悪いんですよね。中盤あたりには、突然、ラジオからシェーンベルクの「月に憑かれたピエロ」が流れてくるシーンがあるんですが、そこでのこの曲や十二音技法に関する表現もなんかすっごく浮いてる。。。
と、思ったら、バッハから200年経ったらベートーヴェンに行き着くとか、とんでもない表現が出てきたり、、、それこそ、バッハから200年経ったらシェーンベルクまで行き着くって!

特に最終章の前の第15章を担当しているリー・チャイルドの担当部分に謎解きがやってくるわけですが、そこでオリジナル楽譜に偽造された楽譜に隠された謎が解かれるわけで音楽に関わる表現がいっぱい出てくるんだけれど、これがさっぱりわからない。英文がおかしいのか、翻訳文がうまく訳せてないのかさえわからない。とにかくそれっぽく書いてあるけれど、音楽上には全く意味がないというか、本当にわからない。。。。ぜひ、この十ページほどに書かれていることについてだれか説明してほしい。。。。

そして最終章のディーヴァーの再び担当分で、最後のどんでん返しと大団円がやってくるのですが、そこで題名にもなっているショパンの未発表曲が出てくるのですが、「ピアノと室内管弦楽のための無題ソナタ」、、、、って、どんな題名やねん。ショパン絶対そんな題名つけへんて!!これまた英文になんて書いてあるのかも気になる。そして、それまで出てきていた物語のヒロインの一人である若いヴァイオリニストが、その曲の世界初演でピアノを演奏することに!!をいをいをい、、、、
なんか、もう適当でよくなってませんか?って気分になってきます。まぁ、サスペンス小説ですしね、音楽は添え物だしね、、、

そして、このような自分のわかる範囲での違和感をたっぷり味わってしまうと、小説全体を覆っているサスペンスな部分での舞台設定、国際情勢やいろいろな部分でも、実はその方面に詳しい人が読めば、なにいい加減なことばっかり書いてるんだよ、そんな風に武器とか使わないよとかが満載なんじゃないか、という疑いも湧いてくるわけで、、、もやもやがいくらでも膨れ上がっていきますw
でも、この奇妙さは少しくせになるかもしれません。
ぜひ、読みましょう、とはおすすめしませんw
もし興味を持ったら読んでみてください、、、というにとどめておきます。。。w

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