11/29『東京も私もお互いが嫌い』そこはかとなく日記

加賀発の夜行バスが渋谷に着いたのは、予定より一時間も早い午前5時50分。友人とは7時過ぎに待ち合わせていたので、待ち時間が少しのびた。友だちは寝坊したため、さらに2時間近くのびた。

9時前に友人と落ちあったとき、私の絶望感はピークだった。ただでさえ大嫌いな臭い東京で、睡眠不足の身体にまずいコーヒーを流し込みながら待ちぼうけなんて、いったいどういう類の地獄なんだろうと思った。

荷物を置きに、友人の実家へ。駅近のバカみたいな高層マンションだった。1番狭くて暗い部屋でもものすごい高そうなマンションなのに、東京らしくちゃんと臭くて安心した。全然羨ましくないけれど、もう彼女の金欠という言葉は信じないと決めた。

荷物を置いて、コメダでモーニング。東京っぽい店には絶対に入りたくなかったし、コメダの実家感に安心したかったから、迷うことなくコメダにした。デカすぎるアイスコーヒーと、厚すぎるトースト。

そこで友人のzoom会議を待ちながら村上春樹を読んだ。とても眠かった。

そこから下北沢に移動して、友人と友人の友人と3人でランチ。大いに盛り上がった。友人の友人は、エリートコースをかなり自覚的にひた走っているらしい。いろんな山の登り方がある。とても楽しくて、嘘みたいに気分が晴れた。

それから友人の友人は単位取得のため、午後の授業に出ていった。

私と友人は、雨の中しばらく古着屋を見漁った。どれも状態の割に高かった。てきとうに似合いそうとか、あの人が着ていそうだとか言って、ウィンドウショッピング。

それからテカテカと駅にまとわりついている商業施設を歩き回り、明るい青のトレーナーを買った。友人は、ターコイズのニットと、幼稚園児みたいな柄付きのニットパーカを買った。とても似合っていたので、店員さんと私とでゴリ押ししたらお買い上げになった。

それからまた駅近のバカみたいな実家マンションに戻った。彼女はいつものように長い時間をかけて準備し、のそのそと降りてきた。

住人用の車庫にはすごい外車の数々。そこに収まる、バカでかい車。彼女は車に乗りこんで、車庫から車を出そうとした。出ない。10分待っても20分待っても出てこない。仕方がないから私は雨やどりしながらしゃがみこんでまた本を読みはじめた。

その後けっこう経ってからやっとでてきた。どうやら、その車に乗るのは久しぶりで、サイドブレーキが無い!(そんなわけはない)って家族に電話しまくっていたらしい。そんなわけはない。普通にあった。

都内のマンションから、昔住んでいたという所沢の家まで1時間。スーパーによっていろいろ買い込んで、意気揚々と帰宅。

バカみたいに広い敷地内に家やら倉庫やら何軒も建っていて、畑まであった。今はもう脱け殻らしい。金持ちのすることはよくわからない。

奥の方に建つ、彼女の旧実家のドアを開けようとした。開かない。全然開かない。

鍵の汚れをとったり、バターを塗ったり、押したり引いたり、思いつくこと、インターネットの思いつくこと、意味のないことをぜんぶ、二通りくらいやった。開かない。

1時間半ねばって、諦めて鍵屋さんを呼んだ。1時間後くらいに来た。こんな夜中に申し訳ない。覗き穴から工具で開けてくれた。

やっと食材やら荷物やら運びこんだ。広い家。ひ弱そうな鍵屋のお兄さんには加賀棒茶をあげた。事務所でお湯でも沸かして温まってほしい。

半年ぶりに来たという家の中は、5分前までいましたという様相。つまりとっ散らかっていた。洗濯物は干しっぱなし、食洗機もかけっぱなし、犬の餌も出しっぱなし、机にはよくわからない書類が散乱していた。極めつけは冷蔵庫、庫内いっぱいに腐った食べ物(かつては食べ物だった)が詰まっていた。あらゆるパッケージには、信じられないくらい昔の日付が印字されている。

いちいちツッコむ気力もなく、とりあえず冷蔵庫にしまうべきものをしまい、部屋着に着替えた。

まだ潤沢に時間のある想定をしていた時に、パンの材料を中心に買いものをしたため、今すぐに食べられるものはなかった。しかし、家の鍵が開かずに何時間も締め出されるなんて、誰が予想できただろうか。

トマトソースと明日のパンを仕込んだ後、冷凍庫に高そうな肉を見つけたのでとりあえず解凍して焼いてみた。冷凍庫の味がして食べられるものではなかった。

これも驚くべきことだが、その一連の作業の間、友人は呑気に寝息を立てていた。非常に罪深い。

夜ごはんも、調味料も、硬すぎる歯ブラシも、犬の毛だらけの靴下も、もう何もかも諦めて歯を磨き、寝る支度をした。それで今これを書いている。午前2時近い。

冷凍肉を含むすべてのことは明日以降の自分に委ねて、半年前から引きっぱなしの布団でとりあえずは寝ようと思う。おやすみなさい。


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