本屋開業の種⑧ 請負ライターの限界

(本文要約)

■ はじめてのライター業は資料集めと1ページの記事

■ 請負ライターは「原稿料」のみ

■ 本屋と繋がることはできない

(本文)

■ はじめてのライター業は資料集めと1ページの記事

はじめてのライタ―仕事は雑誌の仕事だった。資料を集めて、情報をまとめて書く、という作業で日本の街道についての記事だった。自分の知識になるだけでなく、お金ももらえるなんて、なんて楽しい仕事なんだろう!

と思っていたのを今でも覚えている。

そこからしばらくは雑誌やWebなどに掲載する記事を執筆していた。いずれも無署名で、雑誌の場合は巻末に協力者として名前が載るくらいだった。

「本を売りたいなら、編集を10年やりなさい。」

この言葉がずっと頭のなかに残ってはいたけれど、とりあえずは今、目の前のライター業を成功させることがはじめの一歩なんじゃないか、とライター仕事をこなすことに夢中だった。

「こなす」といっても、当時自分は図書館を辞め、妊娠し、出産し、小さな子供を育てながら仕事をする日々。

大声で「どんどん仕事をください!」とも言えず、細々とライターとして単発で記事を書いていた。だから収入としては本当に微々たるもので、収入がない月も当然あった。

■ 請負ライターは「原稿料」のみ

「ライター」というとしっかり顔を出していて、専門の記事を書く「専門家のライター」と、署名などは出ず、必要な記事を必要な人に届くように書く「請負ライター」がいる。

私は「請負ライター」として記事を書いていたため、ひとつの仕事が終わると、数カ月後に原稿料が支払われる、という形だった。

原稿料が支払われるので、書いた分は報われる。たとえ報酬額が少なかったとしても、事前に提示されるので、本人が納得して入ればそれで良い。実際、私もはじめは低い提示額から始めて、「学びながらお金をもらえる」という気持ちで仕事をしていた。

もちろん、専門家ライターも雑誌やWebでは原稿料が支払われるが、専門家は著書も出せる。著書を出す場合、その多くは印税支払いとなる。

つまり、請負ライターは名前は出ないけれども、原稿さえ納めれば必ずお金は保証される。保証されるため、売る努力を特にしなくても良いのだ。気に入った仕事だからといって売る努力をしたくても、名前が表に出ていないため、堂々と宣伝できないということも多い。

専門家は違う。著書を出すと印税支払いのため売れれば売れるほど収入が確保できる。売れなければ数万円しか支払われないこともあり、宣伝活動は必須となり、そのため本屋でトークイベントを行ったり、原画展示を開催したり、と「×本屋」の仕掛けが多くなる。

■ 本屋と繋がることはできない

はじめは目の前の仕事に一心に取り組んでいた私だが、次第に

「ライターとして活動していても本屋に何か提案できるわけではない」

「ライターとして雑誌や本の手伝いをしても、それが果たして本屋に貢献できている媒体なのか?」

という思いに駆られ、請負のライターばかりしていてはだめだ、と感じるようになっていった。

別に、本屋と繋がりたくてライターを始めたわけではないけれど請負ライターの書いた雑誌や本が本屋に並ぶのに、ライターと本屋は繋がっていない。

作り手が、売り場に関心を持たなくても、作り手の生活(収入)は成立する。そこにとてつもない違和感を覚えてしまったのだ。

といっても、仕事としてライターは楽しんでいるし、育児をする身としては在宅で仕事ができるというのは大変ありがたいことでもあるので、

ライターをやりながら、なにかもっと、本屋が喜ぶことは提案できないか、本屋がもっと元気になる提案が外側からできないか…と探し続けていた。

延々と答えが出ない自らの問いにもがきながら出会ったのが

双子のライオン堂とBOOK SHOP LOVERの和気さんが共催している

「本屋入門」というゼミだった。


今日はここまで。

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