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孤独を一緒に乗り越える友達と出会える本

1巻につき1回は必ず泣ける漫画があると言われて、あなたは信じるでしょうか。

この漫画に対する思いが溢れすぎて、オススメの漫画を聞かれると確実にこの漫画を推すようにしています。そしてその度に「1巻につき1回は必ず泣けるから!!!」と鼻息荒く食い気味で魅力を語っています。

この漫画に出会ったのは、単なる偶然でした。

「ジャンプ+」という週刊少年ジャンプ系列の漫画の一部が無料で読めるアプリの中で、たまたま見つけたものでした。

漫画のタイトルは「この音とまれ!」。箏曲部、琴を演奏する文化部が主役の漫画です。琴が主役と聞くと、なんとなく地味な感じがするかもしれませんね。でも、ただただ琴を演奏するシーンが続くわけではなく、登場人物一人ひとりの内面が綺麗に描き出された、むしろ群青劇の側面が強い漫画です。

その時は、なんとなく「ちはやふる」っぽいなと思って読み始めたのですが、思いの外面白く、無料で読み切れる分をすぐに読み終えてしまい、その時はそこで読むのをやめてしまいました。

無料版を読んでから1年くらい経ったころ、魚の小骨のように続きが喉にひっつかかった状態に耐えられず、面倒臭がってずっと放置していたTSUTAYAのカードを1年ごしくらいに更新して、”大人借り”を敢行しました。

家に帰り、改めて1巻から読み始め、2巻、3巻と手が伸び、気づけば左側に積み重なる既読巻と、右にはTSUTAYAの袋から見え隠れする未読巻。16巻まで一気に読み終えて、再び気になった巻を再度読み返すなどとしていると、1日が終わっていました。

僕は、普段一度見た漫画や映画を再度見返すことはあまり無いのですが、「この音とまれ!」に限っては、名シーンが多すぎて、「もう一度あの心の震えを味わいたい」とおかわりをせずにはいられませんでした。

各巻ごとに名シーンが生み出されるのは、主人公たちだけではなく、他校の生徒や先生方の内面までもが、かなり緻密に描かれているからに他なりません。彼らが大会にかける思いや、琴にかける思いが、痛いくらいに伝わってくるのです。こんなにも魅力的な人物ばかりが登場する漫画を僕は他に知りません。

「この音とまれ!」には、例えばこんな学生たちが登場します。

琴を教えてくれた大好きなおばあちゃんのために、周りに「男子が琴をやるなんて」とバカにされても頑張る負けん気の強いやつ。

一人ぼっちだった頃に戻りたくないから、いまある繋がりを壊さぬように、周りのことを考え行動するようになった、見た目は飄々としているけど、本当は孤独を抱えているやつ。

周りのメンバーが自分の良いところを見つける中、一人だけ自分の良いところが見つけられず悶々としてしまうやつ。

気づいたら彼ら一人一人に、自分が昔抱えていた悩みや弱みを重ねて読んでいるのです。

それは、登場人物たちが経験している感情が特別なことじゃなくて、生きていると、どこかでぶつかるような悩みだからでしょう。そして、彼らの悩みの根底にあるのは、きっと”孤独”なのだと気づきました。

人は、誰しも一人にはなりたくないものです。物理的な距離で話す相手がいるとか、ネットを介して誰かと繋がっているとか、精神的に誰かの支えであるとか、僕らは何かしらの”つながり”がないと生きてません。自分が繋がろうとしている糸が、プツンと途中で途切れてしまうと、どうしようもない寂しさとか、悲しみとかが押し寄せてくるなぁと感じます。

孤独の辛さは誰もが知ってるからこそ、自分と似たような入り口で孤独になった彼らがそれを乗り越えるとき、琴線をグッと揺らされて、涙が思わず溢れるのです。まるで、自分の分身が漫画の中で動いているような気分になるのです。それと同時に、自分も彼らのようにもうちょっとだけ頑張ってみようと、前向きな気持ちになれるのです。

学生時代でも、社会人になってからでも、何か一つのことにとことん向き合って、挫折したり、苦しんだり、孤独になったりしたことがある人にとって、「この音とまれ!」が懐かしさを味あわせてくれるとともに、これからを踏み出す勇気もくれる、素敵なパートナーになればいいなと思うのです。

※作者のアミューさんのtwitterアカウントはこちら! https://twitter.com/amuse8

「この音とまれ!」の素敵なイラストが掲載されてたりしますよ!


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