わたしはわたしの傷であり、あなたはあなたの傷である
ジョー・ブスケという詩人がいた。彼はフランスのナルボンヌで生まれた。ブスケは21才のときに第一次世界大戦に参加して、負傷。半身不随になり、以降の人生をすべて、鎧戸を締め切った寝室のベッドの上で過ごした。この記事の表題は、ブスケのつぎの言葉に由来している。
個体性とは傷である。その人の傷が、その人を個体として成り立たせる。こうした息を呑むような主張がブスケの魅力だ。このテーゼはどういう意味だろうか。個体性とは、あなたとわたしを分かつものだ。あなたの傷をわたしは分からないし、あ