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昼下がりのボストンで観音さまの慈悲を教えられたこと。

今日は如意輪観音さまのご縁日。

昨日でお大師さまのご縁結びご祈願の行事は
終了いたしました。
護符等順次お送りいたしますので、施主さま方には
しばらくお待ちくださいませ。

紫陽花がそろそろ花盛りですね。


観音さまは仏教伝来以降ずーっと大人気です。
仏像や仏画も多く、ご本尊になっているお寺もたくさん。
とても身近に感じている方も多いと思います。

なんと言っても、日本で初めて巡礼されるようになったのは
西国三十三所観音巡礼。
実に1300年の歴史をもつ最古の巡礼路です。

伝承によると、養老2(718)年、長谷寺の開基、徳道上人が
病のため意識を失ったとき、冥土で閻魔大王に会います。

閻魔さまはこの世の苦しむ人々を救うため、観音さまの霊場を
開いて巡礼を勧めなさい、と起請文と三十三の宝印を徳道上人に
授けられました。

上人は閻魔さまの言いつけ通り霊場を開き巡礼を皆に勧めようと
努力されましたが、この時は時を得なかったので、
宝印を中山寺の石櫃に納められました。

その後270年経って、花山法皇が観音霊場を巡拝して再興されました。
以来人気の巡礼路として現代に至っています。

観音さまのお名前はサンスクリット語では
「アヴァロキテーシュヴァラ」。
これを漢訳すると「観自在」「観世音」となります。

女性的な優しげなお姿で美しい造形のお像も多く、
美術的にも人気があります。

もうずいぶん前のことになりますが、
友人を訪ねてボストンに行ったとき、時間があったので
ボストン美術館を見学しに行きました。

ボストン美術館はモースやフェノロサ、岡倉天心などとも
関係が深く、日本美術のコレクションが優れていることでも
有名です。
庭には日本庭園もありますよ。

やはり有名な日本美術コレクションを見ようとまず
そのエリアを見学し、
その後ゆったり時間をかけていろんなものを見てから
もう一度そのエリアに戻ったのですが、
まあまあ時間が経っていたにもかかわらず、ある仏像の
前にずっと立っている女性がいました。

彼女は私が戻ってきたのを見てにっこり笑って
日本人?と尋ね、そうですよ、と答えると
「私は仏教には詳しくないのだけど、この像はどういうものか
 わかりますか?」と言いました。

私も当時そんなに仏像に詳しいわけではなかったのですが、
像の横の説明を見て、そのお像が観音さまだということが
わかったので、こう答えました。
「この仏像は観音という菩薩の像で、とても慈悲深い方です。
 この方は音を見ることができます。
 人が助けを求めて観音の名を呼ぶと、その声を見つけて
 できるだけ早くやってきてその人を救ってくれると言われています」

もちろん、英語で!
というか英語で説明できることはこの程度でしたね(笑)

そういうと彼女はなぜか少し赤い目をして
「できるだけ早く…(as soon as possible)」
と呟きました。

しばらくして、またニコッと微笑んで
「私はこの像がとても好きで、時々やってきて見るのです。
 教えてくれてありがとう」
と言いました。

それ以外のことは何も聞きませんでしたが、
昼下がりの美術館の光の白さと、
「できるだけ早く…(as soon as possible)」という
彼女の声が今も耳に残っています。

観音さまを思う時、いつもこの時のことを思い出します。

ボストン美術館のサイトではコレクションサーチができます。
いかんせん数十年前のことなので記憶は曖昧ですが
多分この方かな。

彼女とはそこで別れて、私はその後お目当ての
「吉備大臣入唐絵巻」をもう一度見に行きましたよ。


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