風はじぶんに追いつくことができない

色を脱いだ虹のように消えかけた女たちを抱きしめて夜がはじまる
砂を踏みながら
じぶんの裸足で女たちが通り過ぎてゆく
愛は深まるだろうか
じぶんに追いつくことができない風のようにその一歩は軽い

みずからの寒さに凍り始める冬の向こう
始まりのない夜が監視を逃れている
すでにあった時間がひきつづき経過していると誰もが気づく
探しながらときどき見つけた言葉がぱちぱちとたき火に爆ぜて
道をえらぶと何もない広場に導かれる
じぶんに傷つくことなく愛は深まるだろうか

給水塔に割かれて風がふく
どんな世界にも逃げ道があると言っている
ひとつのものがふたつの方向を与えられて 地上では
だれもがだれかとの出会いを奪われる
ふたつの方向はいつも同時的だ

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