この日も降る昨日の雨を昨日の瞳でみつめる

私は根を踏まずに木々を離れることができる
毎日一日分の葉を散らして思い出をこばむ木々は
いつも昨日の瞳でみおくってくれる

分かれたあと一度も振り返らなかった恋人たちの姿には
分かれたあと同時に一度だけ振り返った恋人たちが刻まれている
ようこそ愛によく似た別れ
失いながら求めたものよ
眠るには遅すぎる夜の終りで
倒れる直前の大樹の瞳に見つめられている

断続的に
昨日の雨がこの日も大樹の葉を打ち据えている
疲れながら待つことを楽しみ諦めることを楽しみながら
大樹は無防備に眠りにつく

互いの姿に自分を見出し
傘を開き
木々に降る雨の中に道をつくる
諦めながら求めた者たちの後ろ姿がその道を遠ざかってゆく

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