砂浜の冬をさがしにきた

ついにふるえる身体を抱きとめて凍りつく砂の砂浜
女は娼婦かもしれないが私の恋人で
結びつけなかった愛に充たされながら
少しずつ坂が終っていく道をくだっていく
少しずつ降りていきなさいといわれたような気がして
坂の始まりと坂の終りに立っている

女を愛そうとした日の音が指先からきこえる
少しずつ降りていきなさいといわれている坂の向こうからうちよせる波の端にすがって
異端の愛でふれると快楽になると知っていた指先が女の背をすべり降りる
視線は風になって牛乳を搬送する軽トラックのうしろをずっと追っている
波は最後に降る雨になって土壌に染み込み
私の冬をさがしにあきらめながら足跡をかさねていく
追いながら逃げながら
どこまでも背を向け合って見つめ合っている

暗闇に街灯がふるえていて
突然裸の樹木が語りかけてくる  
うつむいて歩いているうちに何かが終わっていたとしても
許してくれるかな
両腕は死んだ波になって女を遠ざけ女の恋を抱きしめるため打ち寄せる
七夜が同時に暮れていく砂の砂浜
冬をさがしにきた
聴こえない雨音以外に何もない

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